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借金200万円の20代女子が、毎日150円の寄付をしながら貧困を抜け出した方法

タイトルにあるように、私は22歳で大学を卒業し働き始めた日から今日まで10年間、ときに消費者金融に借金をしながら、発展途上国への寄付を毎日150円ずつ積み重ねている。

「借金背負って、寄付?返済が先じゃないの?」
「利息つくのに、ばかなの?」

この記事は格差社会を変えていく、一つの生き方論だ。

お金に詳しい方の多くから呆れ声が聞こえてきそうだが、この記事では、この行動に至った理由を紐解きながら、資本主義が生み出した格差社会を変えていく、一つの生き方を提示したい
最近話題の『人新世の「資本論」(2020, 集英社新書)』にも触れながら、CHICACUの直井流・貧困からの抜け出し方をまとめたので、ぜひ最後まで読んで欲しい。

あなたは貧困層?中間層?富裕層?

知っているだろうか。
厚生労働省の調べによると日本の貧困率は15%を超えているらしい。
2018年の貧困線(等可処分所得の中央値の半分)は127万円。つまり年間の手取りがこの数字を下回ると相対的貧困層となる。絶対的貧困は生活を維持していくことが難しい状態であるのに対し、相対的貧困はその国の生活水準や文化水準を下回る状態に陥っていることを指すのだが、日本は相対的貧困率が経済大国の中でも特に高い。2016年に発表された世界の貧困率の調べによると、先進国の中で中国・アメリカについで3位。なんとも不名誉な記録だ。さらに、国際的に見ても、お隣の中国の大企業からは日本人は外国の安い労働力としてみられていることは周知の事実だ。
高齢者の貧困率の高さもさることながら、近年は単身で暮らす20~64歳の女性の3人に1人が「貧困状態」にあると言われている。
何を隠そう、私も20代前半はその1人だった。

月収額の平均値は約17万円。手取りは13.5万。

20代独身女性の月収額の平均値は173,325円、中央値は180,000円。
(お金の情報サイト「まねーぶ」全国の20代独身女性350人を対象に実施した生活収支に関する意識調査 より)

20代独身女性の月収額の平均手取りは税金や国民健康保険を引いて、ざっと13-14万くらいだ。
そして、3人に1人は掛け持ちで働いている。

はいはい、まさに。
絵に描いたように平均値をゆく人、ここにありです。
五時に起きて出社前に早朝バイトかましてました。

当時の私の実情はこんな感じ。

有難いことにデザイナーというやりたい仕事に就くことはできたけど、帰りは毎日深夜で、平日寝る時間を買うため職場の近くで一人暮らしスタート。土日は将来のための勉強、自炊はおろか掃除洗濯などの家事の時間すら満足にとれず、弁当を買う財力がないので昼は冷凍食品のオンパレード、部屋は荒れ放題。高校や大学の友人とも疎遠になり、奨学金返済と親への学費返済、家賃の支払いと勉強の資料代や講義代を補填するため、早朝バイトを始めたものの、本業に支障が出て(睡眠時間が足りなかった)三ヶ月で辞め、いつしか家計は赤字傾向に。
クレジット返済ができずに、消費者金融に借金をして、さらに借金返済のために借金して、、、

はい、地獄絵図完成。やがて借りられるお金も底を尽きる。
消費者金融への借金はいつのまにか200万円に膨れ上がっていた。

途中2-3ヶ月、精神的にあと一歩であぶないところまで行っていた自覚がある。(診断は受けてないが)

本当に怖いのは借金じゃない。

貧困が怖いのは、経済要因による負の連鎖だ。

・自己肯定感が低くなる
・諦めやすくなる
・否定的な考え方をもつ
・周辺とのコミュニケーションの喪失による精神的未発達・未成熟
・精神的不調による意欲の低下や睡眠障害
・必要な栄養を取れないことによる体調不良

当時の私は下の2つに当てはまるという自認があったが、負の連鎖は深刻化しなかった。
幸いなことに大学に通えたこと、健康で、具体的にやりたいことがあって生きること働くことに目的意識があり、働く場所があったこと、周りに干渉されず、自己肯定感が人並み以上に高く、諦めが悪いマイペースな性格だったことも手伝った。
なにより、借金まみれであろうと、お金以上の価値を早くから人生に見出していたことが支えになった
とはいえ、綺麗事だけじゃなくて、借金が積み重なっていくのは誠に精神をすり減らすのも事実で、お金の工面のことだけしか考えられない日もあったし、貧困の程度によっては、勉強や将来の夢なども諦めがちな生活を送り、生きる希望を持てなくなる可能性もあったと思う。

これは個人の苦労話ではない。
格差社会を生き抜くために必要な
クリエイティブ力とは。

30代にさしかかった今、借金も完済し、心豊かな暮らしにつつまれ、20代初めに日記に書きとめた目標を達成しつつある。
そして、話題の『人新世の「資本論」』を読んだことを契機に、思い出したように、この身も蓋もない苦労話を、初めて、世間に口外するのだ。いや、どちらかというと、やっと口外できる程度の余裕のある暮らしができるようになったと言えるのかもしれない。
意識高い系のそれとは違う、実体験から出た格差社会の乗り越え方を、皆さんにとってのケーススタディとしてもらうために。

借金200万円の20代女子が、
毎日150円の寄付をする理由。

繰り返しになるが、貧しさの最中、私は22歳で大学を卒業し働き始めた日から今日まで10年間、発展途上国への寄付を毎日150円ずつ積み重ねている。どんなに借金があっても、結果として辞めなかった。借金同様、これまで誰にもこのことを口外していなかったから、辞めてもよかった。辞めようか何度も悩んだけど、結局辞めなかった。
理由は、今から20年ほど前、中学生の頃に出会った環境問題をテーマに扱った『あなたが世界を変える日(2003, 学陽書房)』という本からの学びに帰結する。あえて触れるが、私は無宗教なので、勧誘まがいのそういうのではない。なので、はっきり言っておくが、寄付をすれば貧困がなくなるわけでも、神々しい類の誰かが救いの手を差し伸べるわけでもない。
だからといって、苦労話や美徳を自慢したいわけでもない。

貧しさとはなにか、を問うた本との出会い。

前述の『あなたが世界を変える日(2003, 学陽書房)』は、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された環境と開発をテーマにした国連会議(通称:地球サミット)のなかで、世界の首相を前にセヴァン・カリス=スズキという12歳の少女が発した6分間の伝説のスピーチを綴った本。なお、このスピーチは世界3大スピーチと言われている。そのなかに、こんなフレーズがある。

オゾン層にあいた穴をどうやってふさぐのか、あなたは知らないでしょう。
死んだ川にどうやってサケを呼びもどすのか、あなたは知らないでしょう。
絶滅した動物をどうやって生きかえらせるのか、あなたは知らないでしょう。
そして、今や砂漠となってしまった場所にどうやって森をよみがえらせるのか、あなたは知らないでしょう。

どうやって直すのかわからないものを、こわしつづけるのはもうやめてください。

最近はグレタさんが注目を浴びているが、30年も前に、世界の舞台で、まったく同じことを言ってる日系人の少女がいたことを、あなたは知っていただろうか。

これを読んだ当時、私は12歳。そう、世界の首相を前に訴えるセヴァンちゃんと同じ歳だった。
さらに、スピーチは続き、サミットへの道中に偶然出会ったストリートチルドレンの言葉が紹介される。

「ぼくが金持ちだったらなぁ。
もしそうなら、家のない子すべてに、食べものと、着るものと、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに」

家もなにもないひとりの子どもが、わかちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。

この時、家もあり、食べ物も、着るものも、熱がでたときに飲む薬も、親も、信頼できる人もそばにある私のポジションは、世界のなかで「すべてを持っている方」だとインプットされた。そして、

「働き始めたら、世界の貧しい人と富をわかちあおう。」

と、中学生ながらに小さな覚悟をしたのだ。

「貧しい」大人にならないために。

そして、私は、働くと同時に寄付をはじめた。そして、借金をしても、学び続けた。いつか学びは結実し、デザインの仕事で生計がたてられるはず。その日までは最低限の暮らし。これが22歳の私が見つけた資本の再分配の方法であり、資本主義への小さな抵抗だった。

負の連鎖を断ち切るには「教育機会」を逃さぬこと。

正直「辞めたら楽になる」の連続だった。だけど、お金という資本を捨てても、時間と教育という資本さえ手放さなければ、日本という恵まれた国で私はいつでもやり直せるという希望があった。多くの場合、さまざまな教育機会によって、個人にもたらされるのは未来に対する希望だと思う。教育があれば、誰でもクリエイティブで前向きになれる。私も、遠い国の子どもも。これだけは手放してはいけない。

お金があっても豊かさの本質は埋められない。
お金という資本を捨てて、学びという資本を得よ。

結果として、私は10年間で81万円の寄付をしている。発展途上国では、そのお金で学校が立ち、洪水で何度も流されてしまう丸太の橋が金属の頑丈な橋になった。
借金しながらの寄付、一般的には馬鹿なことをしてたのかもしれないが、私にとっては中学の学びをただ真っ直ぐに行動に移したものだ。正真正銘、馬鹿でも世界は変えられる。

つらい時ほど、自分の力を信じる。そして学ぶ。

今思えば、この行動が、自分で自分を認められる理由になり、貧困による負の連鎖を深刻化させなかったのかもしれない。
もしこれを読んでいる方の中に、今、まさに、お金に困っている人がいたら、経済的に貧しいからといって、あらゆることを諦めないでほしい。貧しいことは、自分を卑下する理由にはならないし、学ばない理由にもならない。
自分の可能性を信じて。だって、私みたいな馬鹿でも、寄付や学びなどの自己投資を10年続けたら、ちゃんと借金も返し終わって、実力もついて、クリエイターとして、自分の事務所を構えて、独立することができたんだから。

私たちは、変わることができる。
あなたは、世界を変えることができる。
たった今から。

昨年から話題の新書『人新の「資本論」(2020, 集英社新書)』は、「脱成長コモンズ」というキーワードを中心に、資本主義の限界と、SDGsの嘘、すでに後戻りできなくなってしまった環境問題への体制批判と今後の人類の目指す生き方を解く。CHICACU Bookstoreでも取り扱っている本だ。
私はこの本に解かれた生き方が、自身の10年間の実践の延長線上にある生き方だと感じている。中学の頃から当たり前と思っていたことが、ここまで世間を揺るがすのは、「そうじゃない人」がたくさんいたということなのだろうか。それとも、共感がもたらした数の結果なのだろうか。

今日は、あなたが世界を変える日。

考えてみてほしい。1日150円で私は世界を変えてみた。
あなたにとって「寄付」に代わる行動は何だろう?
いま、経済的に貧しいなら、お金をかけなくたって、できることがあると思う。いま、あらゆることに恵まれているなら、なんだって、できることがあると思う。
崖っぷちの地球で、それぞれの、お金ではない次の豊かさの指標をつくろう。
私が実践した格差社会を変えていく一つの生き方は、「教育がもたらす未来への希望とクリエイティブな力こそ豊かさの本質だ」という信念に支えられている。
できることがわからなかったら、このnoteで一緒に学ぼう!
そして、記事でおすすめした本を読んでみよう!

ここまで読んでくださった皆さんの「貧しさ」や「豊かさ」に対するチカクが変わり、自身の置かれた環境を見直すきっかけとなれば嬉しい。
なお、30代の私は発展途上国への寄付ではなく、社会のクリエイティブ力を底上げする活動に、自らのもつ資本を投じるつもりだ。そして、さらに10年後の2030年、地球上の誰もが貧富の差にかかわらず、豊かな人生を選び、責任をとれる、多様な想像力と創造力に満たされた世界に、お互いが立つことができたら、なお嬉しい。

『あなたが世界を変える日(2003, 学陽書房)』『人新生の「資本論」(2020, 集英社新書)』はCHICACU Bookstoreで取り扱っております。もしこの記事に賛同いただけた方は、フォロー、いいねとともに、書籍も合わせてご検討ください。書籍をお買い求めの方はnaoi@chicacu.jpへお問い合わせください。


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