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生涯でたったひとつの愛だった

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内省にまみれた散文集。
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#恋人

無防備な恐怖、不安とひとつ

無防備な恐怖、不安とひとつ

 私はひとつになりたがる。
 どこででもぴったりくっついて、身も心もひとつの存在でありたい、あろうとする。

 でも彼はそうではなくて、ふたつであろうとする。
 ふたつで、ふたつだから愛せるようにいようとする。

 それは日常生活のなかでも顕著で、外にいる時いつも手を繋いだり彼のどこかしらに触れていたい私と、あまりそうしたがらない彼と。
 べたべたに甘えたい気持ちでそうしているというより、私は彼と

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愛しさと愛と嫌い

愛しさと愛と嫌い

 夜の散歩に無理やり引きずり出した時点で、結末は決まっていたような気がする。

 散歩行こう、と言った私に、えー嫌や、歩きたくない、と駄々をこねた(ように私には思えた)彼を強引に夜の中に連れ出した。

 始めは二人で散歩に行けることに浮き足立って、うきうきで飛び跳ねるように歩いていた。
 けど、目的地のコンビニまで三分のニほど歩いた交番の前で、彼の言葉に私がかっとなってしまった。苛立った私の「だか

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孤独とさみしさとデリバリー

孤独とさみしさとデリバリー

 ここ数日、彼は所用でよく家を開けていて、泊まりがけで出ている日も多くて。

 それはどうしようもない理由でまして浮気だとか、そういった類ではない事を私もきちんと知っているのだけれど、もちろん私はさみしくて孤独に溺れかけている。

 所用の方が私より優先すべき事柄なのは理解しているけれど、理解しているからと言ってすべて納得ずくで待っていられる訳ではないのだ。

 こういう時いつも思うけれど、言葉を

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ひとりでいること、ふたりだけどひとりを選ぶこと

ひとりでいること、ふたりだけどひとりを選ぶこと

 孤独でいることと、一人でいること

 ふたりでいるけど、ひとりでいること

 ふたりだけど、ひとりを選ぶこと

 全部違うな、と思う。
 自分の為にお洒落をして出掛ける瞬間の幸福と、帰ってくるあの人の為においしいごはんを作って待っていることの幸福は、似ているようでまったく違う。

 私は一人でいた頃の私も好きだった。
 自分の為にアルバイトをして、自分の為に着飾って、自分の為に誰かを繋ぎ止めてい

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飛び方はあなたが教えてくれた

飛び方はあなたが教えてくれた

 「あなたじゃなきゃいけないの」

 ほんとうの意味で、この人ではいけないなんて事はあるのだろうか。

 どれだけ激しく愛していたとしても、もうこれ以上人を愛するなんてできないと思っていたとしても、さよならを告げて泣き暮れたとしても、でも代わりは現れるものだ、大体の場合。

 身をもってそれを知っていたとしても、なんとなく知っているつもりになっていたとしても、それは静かな事実としてひっそり横たわっ

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