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【日記】「マン・レイと女性たち」感想 ほか

カバー写真は今日 葉山の沿岸で撮った夕焼け。

外出

『マン・レイと女性たち』『内藤礼 コレクション展』

神奈川県立近代美術館 葉山館にて上記ふたつの展覧会を観に行った。
葉山へ行くのは初めてだったので道中も楽しさで満ちていてとても良かった。
今年は積極的に外出して、体験に時間とお金を使うことに決めた。美術展に行くのは今月既に3回目。本からは得られない実りがたくさんあって、もっと早くからこうした未知の土地を踏む喜びを知っていればよかったな、と思ってる。

『マン・レイと女性たち』は昨年に東京でもBunkamuraミュージアムでやっていたんだけど、葉山館では独自の展示として「マン・レイと日本」というコーナーが設けられており、マン・レイの日本との交流や、マン・レイに影響を受けた日本人アーティストの特集が組まれていたので、こちらで観て正解だったと思う。

内藤礼という作家を知れて、実際にインスタレーションを目撃できたことも良かったように思う。
葉山という風土や、葉山館の内装と調和した氏の作品群はとても美しかった。

マン・レイが関わっていた、ダダイズムやシュルレアリスムといった戦前・戦中の芸術運動に関して私はてんで疎く、かろうじて岡本太郎とピカソの活動を知っている程度だったので、マン・レイの回顧録を通してそれらの運動の概要や関与していた人物を把握できたのはよかった。

運動の中心人物たちの肖像を記録していたのはかなりの偉業なんじゃなかろうか。
内部の人間で互いに気心が知れていたからこそ、個々人の人柄がよく映った良い肖像が撮れていた。当時それらの肖像写真は運動の広報として用いられていたが、結構効果的で運動の支持者も少なくなかったという。
作品そのものだけでなく、作品を作った本人の人となりも知るのって作品に親しみを持つ(あるいは持ってもらう)上で大切なことだと思う。
彼自身は写真業のことをメインの表現手段だとは思っていなかったようだけど、世間の大多数が彼を写真家だと認識していたのも無理はないと思う。晩年になる手前まで、彼は肖像写真の依頼を受け続けていた。

マン・レイは、人間関係のもつれや自身の志向する芸術性に合う都市が見つからないといった理由からパリ・ニューヨーク・ハリウッドと各地を転々としていた。
晩年の60代の頃には、20代前半で初めて個展を発表したパリに戻り、己の人生を回顧するような作品作りに努めていた。

最後の伴侶であるジュリエット・ブラウナーとは、マン・レイが共に暮らした女性の中で最も長く交際が続いた人のようで、歴代の女性関係を思い返すと感慨深いものがあった。結婚式の写真の華やかさといったらなかったな。回顧展は毎回、作家の晩年の様子でじーんと来てしまう。

楽しい展覧会だった。

各作品に対する詳しい感想はまた改めて別の記事に書きたい!書きたいことたくさんあるんだけどどうしても他の勉強よりも優先度が低くなってしまうのが困る…

葉山を歩いてみて

同じ神奈川でも、私のいる川崎市とは明らかに肌を触れる空気の質が違った。降り立ってすぐ感じ取れるくらいに。
駅付近の街並みは都会のようにビルが連なっていて特筆できるところが少なかった(私の目が鈍いだけの可能性も大いにある)けれど、土地の風土は街並み程度に壊されるものではないのだな、と感じるところがあった。

狭い島国であって、少し移動しただけで元いた場所とは全く異なる質の空気が立ち込めている日本という国が、大袈裟かもしれないけれどよりいっそう好きになった。日本の各地の風土を体感できるように、将来は放浪しながら生活をしたい。そういう人生設計を真剣に考えようと思った。

美術館を出て逗子駅まで3kmほど歩いている最中、気になる場所がたくさん目に映ってきて、生きているうちに訪問できる場所はとてつもなく限られていることを実感した。若いうちに経験できることの数の少なさも。
日本の風土を歩き回りたい、という欲求は原研哉氏の活動に憧れたために持ったものだった。彼はそれをライフワークにしている。私も生きている限りその楽しみを持ち続けられるのかと思うと嬉しい気持ちになった。
人間は元来遊牧的な生き物だった。その本能は私の中に未だ強く残っている。

読書

本で収集した知識をネット上にデータベース化することに決めたので、その骨組みを作るために過去読んだことのある本を含めて色々と読み漁った。

『古典と日本人』

戦時中・戦後の古典研究や教育現場での古典を学んだ。
室町後期や近世の古典の動きについて書かれた章はすっ飛ばしてしまったんだけど、頭の中にまだ通史知識が固まっていないため見送って次の本に進むことにした。
現代で古典が軽視されている話になると急に文体が偏屈でへそ曲がりになるのが頑固爺さんって感じで読んでて面倒臭かったんだけど、それ以外は総じていい本だった。

『日本庭園』

鎌倉時代の、禅宗が広まることによって起こった庭園の様式について学ぶ。
夢窓疎石の天龍寺庭園などの枯山水をはじめ、東山文化で誕生した慈照寺庭園など。
こうやって庭園史学んでると、実際に足を運んでみたくなってしまう。

明日は茶の湯の文化と共に生まれたという数寄屋のことを学ぼうと思う。
鎌倉時代が大好きで、今その時代の文化に手広く当たってる最中なんだけど、鎌倉以外の文化史に着手できるようになるのはいつ頃になるかなあ?

『日本の美』『美学入門』『死ぬまでに知っておきたい日本美術』

日本文化が大陸文化や西洋文化から受けた影響・両者の文化の違いについて体系的にまとめるために資料として当たった。

雑記

読むだけに集中するのではなく、芸術表現をする際に資料として使えるように、様々な書籍から得た知識を体系化する取り組みも行わなきゃいけない。
読書は習慣になってるから隙間時間ができたら自然と本を開けるんだけど、体系化の作業はまだ着手すらできてないから意識してそれに割く時間を作るようにしなきゃならないなあ。どうしたものか。ちょっと真剣に考えてみる。

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