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松野苑子『遠き船』30句撰
薄氷に縄文土器の模様かな
脚痙攣しつつ羊は毛を刈られ
草雲雀りりりと誰の恋敵
猫の恋巨大スクリュー影を生み
雪解けて甲骨文字のやうに草
鶯の鳴く方向よ正面は
吹雪く夜の密告の舌ならば切れ
出目金のいつもどきどきしてをりぬ
凍滝の全長光る木霊かな
アロマ一滴硝子全面緑さす
灯の電車人を零してクリスマス
耳鳴りの呪文の中を去年今年
削げば刃に鱗飛びたる寒の晴
炎心の透明バレンタインデー
露の玉一瞬眩み
街同人・西澤みず季 句集『ミステリーツアー』三十句撰
雪の中少女のままで二百年
一族の顔吊られをり糸瓜棚
静脈に針全身が春の海
滴りの一打虚空にショパン満つ
新月の鋤鍬鎌や子を孕む
冬灯円錐形の中に馬
番号で呼ばれし漢風花す
オリーブの切断面に父の顔
人恋うて肺の悴む音すなり
落款に真紅の卍花の冷
足元一村杏の花の海
太陽を追ひ詰め泰山木咲けり
鮠の腹裂くや夕虹溢れ出す
夏館森は夜中に迫りくる
夏つばめ緋の稜線となりにけり
砂場から乳歯一本敗戦忌
深
岩田奎『膚』四十句撰
千手観音どの手が置きし火事ならむ
耳打のさうして洗ひ髪と知る
をりからの夜空の色の日記買ふ
かんばせは簗の光のなかに泣く
うつし世を雲のながるる茅の輪かな
しりとりは生者のあそび霧氷林
榾の宿闇のどこかにオロナイン
ぺるしあに波の一字や春の星
搔敷に油の移る花疲
バーベキュー森の何者からも見え
秋日燦川面をたばしりて去らず
にはとりの骨煮たたする黄砂かな
煮るうちに腸詰裂けて春の暮
なかぞらに楚の
角川『俳句』二〇二三年一月号 柳元佑太氏『対話ー結社意識の変遷とハラスメント対策についてー』における形式面の失敗について
本記事執筆の意図 角川『俳句』二〇二三年一月号に、掲載された柳元佑太氏の『対話ー結社意識の変遷とハラスメント対策についてー』(以下、当時評と記す)は、プロタゴラスとパイドロスという、プラトン対話篇の登場人物をクロスオーバーさせたパロディ形式を採用した時評だ。内容としては、明治以来の結社システムに由来する“俳句コミュニティ”の閉鎖性に言及し、その最たる現れとしてのハラスメント問題へと話題を展開してい
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