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【第3話】村山美澄、もう一人の私との共同生活を始める~もう一人の私との出会い~


 なんだか満たされない毎日を送る村山美澄(27)。
日々の些細なストレスを抱え生活するうちに
自分の姿をした幻覚が見えるようになってしまう。

「私の幻覚」は美澄の心の声そのものだと言い、
美澄が自分らしい人生を生きれるよう共同生活を始めることに。

どんな時も側にいて理解してくれる存在と暮らす中で、
美澄の毎日が少しずつ変化していく。


これまでのお話


6:54 起きたての冷静さ


6:54
起きてしまった。
夢の中でも昨日の出来事を考えてた。
クローゼットの方に視線を移すと、、、いる。。
ただ1日たったからか気持ちは落ち着いる。私は白い木目のカラーボックスから昔しまったと思われるピンク色のお薬手帳を取り出した。
カラーボックスが他家具と擦れて黒い線や傷が走っていることすら目を向ける冷静さもある。

「大学生から使ってるからね。棚もいっぱいになっちゃったね!」
右横から声が聞こえる。私はその声に答えることもなく視線を床に落とした。そしてベッドに転がるケータイで近くの精神科を探した。
9:00オープンだからあと2時間はあるのか。

「その間に先輩に休暇連絡しないとだね。少し不安だけど今は落ち着いているし、たまにの休暇だからゆっくり休もうかね!」

私はケータイから視線を外し、顔を洗いにいった。そして、髪をポニーテールに結んで3年ぶりかと思うぐらい久しぶりのランニングに行った。

外では幻覚はついてこないみたいだ。
3キロも走れず、息を切らして汗ばんだ手でドアを開いた。
そのままシャワー室へ向かい、お湯に打たれながら目を閉じた。


「Moonlive~wider than a mile. I'm~」

私の好きな鼻歌が聞こえる。
間違いない。あの幻覚は私自身だ。
私の思うことも好きな曲もわかっている。
私はめいいっぱい空気を吸って吐き出して、目を開いた。

シャワー室から出て、病院へ行く身仕度まで済ました。そして家を出たところでお薬手帳を忘れたことを思い出した。
玄関を上がろうとサンダルに手をやったところ視界にピンクの手帳が入る。

「はい、それじゃあ行こっか!」

「…うん」
私は手帳を手に取ると思春期の子供が母親に答えるような低い戸惑いのある声で反応した。

今日は32.5℃。
朝から耳を突き刺すセミの声も、今の私の考え込む回路を止めることはできなかった。



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