田舎物件を手にいれてわかった、都会の庭付きマンションの程よい自然の豊かさ
今回は、今住んてる都会のマンションが「都合が良い程度に自然が豊か」な環境なんだなぁと改めて気付かされた、というお話。
今住んでるところ
いま住んでいるところは都心から近いけど家賃が安い下町エリア。江戸時代に開墾された水路が張り巡らされ、そこに緑地が作られたりして、実はわりと動植物が豊かだ。
過去水害が多かったことから治水も進み今では他のエリアで被害が発生していてもびくともしない、水害にかなり強い地域になっている。
昭和の初期に工場が多かったので比較的まとまった空き地が出やすく、再開発で集合住宅になったり、ホームセンターや大規模ショッピングモールなどができた。小洒落たカフェや名のあるレストランが皆無なのは残念だけど、おかげでそれほど人気もないので物件価格が安い。ちょこっと息抜きに使える地元の居酒屋さんや飲食店が徒歩数分にあり、贅沢をいわなければそこそこ住みやすい街だ。
そんなエリアにあるマンションの一階に小さな庭がある物件に住んでいる。
ベランダに猫、鳩、雀などのいわゆる都会の野生動物が訪れ、庭にはたまにヒタキやカラ類の野鳥も飛来する。昆虫もスズメバチとかムカデなんかじゃなく、アゲハやカマキリとか、図鑑で種類を調べるのが楽しくなるような虫が飛んできて、詳しくないのを残念に思うくらい蝶類はかなり様々な種類のものが飛来している。カナヘビは季節を超えて子供世代が何匹も庭をチョロチョロしているし、昨年冬にはニホンミツバチまで巣作りしてくれた。結局ミツバチは冬を越せなかったけど、いずれにしろ都会のマンションでの養蜂は無理があったし、いつかニホンミツバチが育てられるような環境に住んでみたいという想いを、大きくふくらませるきっかけとなった。
郊外物件の購入
それで、コロナで趣味の旅行もできなくなったこともあって、今年にはいってから暇つぶしに郊外の物件を冷やかしに行くようになった。そして東京から1時間ほど車で走らせたところにある郊外の空き家を手に入れることとなった。今は足繁く通ってせっせとリフォーム作業にいそしんでいる。
手に入れた物件は、丘陵地の裾の、水田が広がるエリアにある。我が家の南側の一段下がったところに、田んぼがあって、裏手になる北側には道路を挟んで農家の民家が数件立ち並んでいる。左右両隣の敷地は隣接してるが家屋は程よく離れており、窓を全開にしていても人目が気にならない距離がある。まわりにある農地や家庭菜園もきちんと手入れされていて藪が生い茂って荒れ地になっているところはほとんどない。
徒歩圏内にコンビニがあって、民家の軒先で野菜の無人販売もやっている。10分車を走らせればショッピングセンターやロードサイドでよく見かける飲食チェーン店が立ち並ぶエリアがある。
公共交通機関へのアクセスは悪く、都心につながる電車駅まで車で15分くらい。車がないと暮らしが成り立たない、ほぼ田舎の郊外エリア、といったところだ。リゾート地でもないし、移住者に人気のエリアでもない。行政も移住者誘致に取り組んでいる様子はなく、高齢者が人口の半分以上を占めていて、特に税収に結びつきそうな大企業や目立った産業もない。これで住民サービスをどうやって維持していくのか将来に不安を感じずにはいられない自治体ではある。ただ高速へのアクセスがよく、高速も首都圏の中では渋滞が比較的少ない路線なので、都内へ通うには都合が良い。
最初はもう少し都心から離れた、移住者に人気のエリアで物件を探してみたが、コロナ禍で田舎物件の需要が上がり、少し前では考えられないような価格で高止まりしているとのこと。予算に合うような物件は猪やサルが出るエリアだったり、食料品が手に入るお店が近隣になかったり、都心から車で1時間半以上かかるところ、リフォームにかなり手がかかりそうな物件など、予算内ではなかなかこれという物件に出会えなかった。一軒とても気に入った物件があり申込んだのだが、タッチの差で先約が入ってしまって手に入れることができなかった。とてもがっかりしたりした。
そうやって探していくうちに、やはり、テレワーク勤務が中心とはいえ週に一度は出社することがあるので、都心から1時間以上車を走らせるのはしんどいかなと思い始め、条件を変更して都心から一時間以内のエリアで物件をさがし直した。
逃した物件以上に条件がよいものはないかもと半ばあきらめつつ、少し条件をゆるめて広さ的には多少劣るものの、予算的にはかなり魅力的な今の物件を見に行くことにした。実はかなり以前から気になるリストに入れていたけれど、都心から1時間以内で値段もそこそこ手頃なのに、長く売れ残っていた物件だったために、何かあるに違いないと、内見を後回しにしていた物件だったのだ。
格安物件だった理由
見てみると、改修必須の場所はあるものの、それ以外の見える部分には瑕疵はなく、それまで見てきた同価格帯の田舎物件よりよっぽど状態がよい。なにより大きく開けたリビングの窓はハイサッシで、前には田んぼがひろがり、田んぼを挟んでむこうの丘までは何も遮るものがない。この開けた立地がひとめで気に入った。売れ残り物件というところがかなり引っかかったのだけど、多少の値引きをのんでもらったこともあって、手に入れることにした。
手に入れた物件は、2階にかなり大きなルーフバルコニーがある。
中古物件を探すうちに知ったのだが、ルーフバルコニーは雨漏りの原因となりやすく、10年おきくらいに多額の防水補修工事が必要になる。だから今の新築物件では、将来のメンテナンスにかかる費用を考慮して、上階にベランダがない総二階構造のデザインを採用していることが多いのだそうだ。
この物件は2階に10畳規模のルーフバルコニーがあって、その下にある1階の和室は、雨漏りでかなり傷んでいる。ルーフバルコニー部分の外壁にはクラックが入り、あらゆるところから雨がしみ込んで、柱も目に見える部分で腐食が進んでいた。脆く今にも崩れそうで、柱の交換は必要という状態だった。
でもそれまでさんざんもっとひどい物件ばかりをみてきたので、一部建屋の改修費用がかかるとして、それを考慮してもその他の物件に比べたら格安だと思える価格だった。
都会から車で1時間以内、緑が多くそこそこ利便性もあるエリアだが、とくに目立った観光資源もない。たとえ物件価格が安くても、豊かな自然に囲まれた田舎暮らしを志向する層には物足りない物件だったということで、買い手がつかなかったのか、リフォームを敬遠して売れ残ったのか。いずれにしても、他の人が気に入るような物件で格安なものはほとんどないので、自分の好みと感覚を信じて手に入れた。
リフォームは自分でやりたい
私の場合は、たとえ見た目がきれいでも、自分の好みに合わない中途半端なリフォームが施された中古物件にはなかなか食指が動かなかった。リフォームされている分だけ物件価格は高くなる。妥協して手に入れた物件も、結局その妥協した部分に不満がのこって住み替えたくなる、というのがこれまでマンションを買い替えた経緯だ。
余計なリフォームが入っていない物件のほうが、安価に手に入れられるし、なにより自分の好みにリフォームできる余地があるのがよい。予算を考えると、必然的にそういう物件を探すことになった。
そしてようやく見つけたのが今住んでいるマンションで、40年間一度もリフォームされていなかったので比較的安価だった。築古物件をスケルトンリフォームすることで、予算に合わせて自分の好みの間取りや内装にできた。もちろん予算面でかなり妥協した部分は多少あるものの、目の前に庭があって、全部屋無垢のフローリングにしたり、玄関に土間スペースを設けたり、大きいサイズユニットバスやペニンシュラキッチンを設置したり、同等価格の中古リフォーム済み物件よりかなり満足度の高いリフォームができたと満足している。
だから、今回の田舎物件探しでも、予算と立地、建物の構造が気に入るかどうかを最優先にして、見た目の古さは気にしないことにした。
ただ探してみると、田舎の物件はリフォームしていないものでも、そんなに安いものはなくて、格安物件はそれこそ最初から建て替えたほうが安上がりなのではと思うようなものが多かった。テレワークが進み、都会からの移住者の需要が増えていて、驚くような価格で高止まりしている、というのが不動産会社の担当者の話だった。
博打みたいな中古物件購入、とりあえずは成功?
今回手に入れた田舎物件は、今住んでいるマンション同様築40年以上のもので、事前のホームインスペクションは不可、現況渡しという契約条件だった。都内から1時間以内の距離で、高速インターからも5分以内。
旧耐震物件だし、木造住宅は白アリの被害など構造体の被害の有無が確認できないとなるとかなりの博打だったけど、家の立地的に湿気の悪影響がすくなそうだったことと、窓にハイサッシが採用されていて、間取りもゆったりとしていて、造りがそれなりにしっかりしているように見えた。
耐震補強が必要かもしれないし、基礎も地面がむきだしの布地基礎かもとあまり期待していなかったが、内装を一部解体してみたら、最低限の耐震補強もされており、基礎もベタ基礎と、現行基準の物件と大きな遜色がないことがわかった。結果ラッキーだったが、このあたりは見てみないとわかなないので本当にたまたま助かった、という感じだ。
一番最後まで購入をためらった理由は、目の前が田んぼなのでカエルの声がうるさいのではないか、ということ。
旅先で訪れた水田地帯で、夜はカエルの大合唱が鳴り響くのをきいたことがある。かなりの騒々しさが記憶にのこっていて、こんなところに住むのは大変だな、と思ったことがある。ところが、今度の郊外の家の芽の前は田んぼだ。内見で訪れたときは、まだ水を貼っていなかったので静かなものだったが、これが水田になるころ、カエルの大合唱に悩まされるのではと心配だった。
それで、ネットでカエルの騒音について検索してみた。
ネットの書き込みでは、セミの声と同じく、カエルの鳴き声は慣れるとまったく気にならなくなる、という意見が大勢だった。確かに都会暮らしでうるさいといえばセミの鳴き声だが、鳴き始めは気になるものの、それも慣れてくると気にならなくなっている。そこで普通に生活している人は大勢いるわけだし、気に病むほどの問題ではないのかもしれないと思い直し、心配するのをやめた。
それに、なかなか気に入った物件にめぐりあう機会も稀だったので、この機会を逃すとまたいついい物件に巡り合えるかわからない。カエルの鳴き声問題は、とりあえず心配するのをやめた。
購入後すぐ、水田に水が張られカエルの繁殖期を迎えた。カエルが鳴くのは繁殖期でそれをすぎれば鳴かなくなるとあったが、実際鳴き声はほんの少し聞こえてくるだけだったし、声もそれほど大きくなく、心配するほどのものではないことがわかった。
お散歩中に出会った、やはりこの地に10年くらい前に移住してきた近所の方によると、この近辺ではウシガエルのような大きなカエルはいなくて小型のカエルが中心だから、カエルの声はそんなに気にならないよ、とのことだった。鳴き声が聞こえる期間も思っていたより短く、田植え前後の期間だけ。
結果、今になってみれば、以前気に入ってタッチの差でのがした物件より、アクセス面や暮らしの利便性、物件の間取りではこちらのほうが条件がよかったので、結果オーライだった。設備の古さや瑕疵は直せるけど、周辺環境は変えられない。予算も今のところ希望の範囲に収まっている。あとはリフォーム費用をどこまで抑えられるかだ。
田舎物件で知る、都会の自然の心地よさ
さて、都会のマンション1階がほぼ田舎の郊外エリアにある家とくらべてどれくらい快適で、適度に自然が豊かか、という話だ。
今のマンションに遊びに来る猫たちは、まだ顔見知りになる前から餌をくれとベランダに居座るような馴れ馴れしさがある。窓をあけておいたら勝手に家の中に入り込んで徘徊していた子さえいる。
郊外の家の周辺には、野良猫がとても多い。
周りにそこそこの民家があり、ご飯をくれるお家が多いのか、ネズミなどの野生動物が多いのか、どうしてそんなに多くの野良猫ちゃんたちが生きていけるのか理由はまだわからないが、うちの庭が通り道になっていて、とにかくいろんな柄と大きさの猫が右に左に次々に通り過ぎていく。これは猫好きにはたまらない。だか警戒心が強く、少しでも距離を縮めようとすると気配を察してさっと逃げていってしまう。郊外の家では、今のマンションの周りにいる猫ちゃんたちのように人懐こい子たちに出会えていないのがちょっと寂しい。
都会のマンションでは、庭のサイズも小さいので、カラ類は目の前の木々梢を訪れてくれるので、じっくり近くで観察することができる。都会も野鳥たちにとって住みやすい環境になってきているのか、年々みられる野鳥の種類や頻度が多くなっている気がする。
一方、郊外の家では、鶯が春から初夏にかけてずっと鳴いているが、鶯は姿をなかなか見られない鳥なのだ。ホーホケキョが自然のBGMというのは悪くないし、カラ類も時折鳴き声が聞こえてくる。だが、奴らはすばしこく木の枝の間を飛び回っていて、じっくり観察できる距離では見られていない。遠くの田んぼにチュウサギやアオサギ、カモなどの水鳥がたまに飛来しているのが見えるが、少し遠すぎてよく見えない。
そうなのだ、ここでは遠目に鳥ちゃんを眺められるだけだ。もっと間近で眺めたいのに、物足りない。田んぼに稲が植わっているし、わざわざ餌をねだりに雀が家を訪れることもなさそうだ。
今住んでいるマンションのベランダには時々餌をねだり鳩や雀が来てくれる。窓越しとはいえ至近距離で餌をくれとねだってきて、餌をついばむ様子を眺められるのはなかなか愉しい。こんな何気なく習慣にしていることが、どれだけ恵まれた時間なのかあらためて気づかされた。
郊外の家では虫が巨大だ。
巨大な蜘蛛やズメバチの死骸が家の中に転がっているとギョッとする。北向きの玄関の扉には風通しが悪くないのに必ずマイマイがくっついている。そしてとにかく蜂が多い。ニホンミツバチもいるが、アシナガバチなどいろんな種類の蜂が飛び回っていて、巣を作っていたあともあちこちにある。虫が大嫌いというわけではない。だから自然豊かな田舎暮らしでも大丈夫だと思っていた。そして周囲の視線を気にせず、窓やカーテンを全開にできる生活に憧れていた。ところが、窓をあけておくと、大きな蜂が家のなかを飛び回り、気づかずうちに入り込んだ巨大な蜘蛛を家のなかで踏んづける、という事故が起こることがわかった。とりあえず網戸をしていないと安心して過ごせない。
今のマンションの庭にはミツバチやクマバチ、マルハナバチなど、来てくれると嬉しい蜂は来てくれて、スズメバチやアシナガバチなど攻撃性の高い蜂はあまり来ない。バッタやカマキリ、蝶などみていて楽しい昆虫がけっこう遊びにきてくれる。ようは郊外の家にくらべて、昆虫も都合よくかわいいと愛でられる種類に限られている。
まだ郊外の家に住み始めたわけではなく、週末リフォームで通う程度。だから郊外ぐらしの楽しさや苦労の本当のところはわからない。でも郊外の家で過ごすようになってみてはじめて、今住んでいる都会のマンションは都合が良い程度に自然が感じられる、悪くない環境なんだなとあらためて認識することができた。
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