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【おすすめ散策コース】穴守稲荷駅から羽田空港へ(後編:羽田空港を目指す)

土木街歩きの聖地と言っても良い、羽田空港付近を歩く街歩きコース。穴守稲荷駅から羽田空港第3ターミナルを目指すコースですが、結構見どころ満載で、歩くのが楽しくなってしまいます。前半は、穴守稲荷駅から空港に入ったところにある、大鳥居までをご紹介しました。(前回の記事はこちら)

今回は、空港敷地内をご案内したいと思います。

■今回のコース(前編と同じものを再掲)

穴守稲荷から、羽田空港第3ターミナルまでの約4kmの道のりです。

【見どころ】
 ①穴守稲荷駅と、「コンちゃん」の石像
 ②移転させられたパワースポット、穴守稲荷
 ③天空橋という名前の橋
 ④「羽田空港入口」にある、弁天橋
 ⑤羽田空港をかすめて通る、意外な鉄道路線
 ⑥残された昔の大鳥居

(後半は、ここからです!)

 ⑦沖合展開前の貴重な残骸
 ⑧飛行機ファンの聖地、B滑走路真下のフォトスポット
 ⑨空港脇にひっそり建つ、昭和の悲劇の慰霊碑
 ⑩新名所・多摩川スカイブリッジ
 ⑪多摩川河口と、羽田空港再拡張事業

 ⑫東京モノレールの高架橋
 ⑬羽田空港第3ターミナルで、空港舗装を語る!

⑦沖合展開前の貴重な残骸

羽田空港が激変したタイミングの一つに、「沖合展開事業」があります。沖合展開事業とは、航空需要の拡大や、騒音問題で悩む空港を海側に大きく拡張し、滑走路を住宅地から離れた場所に移設すること、ターミナルビル等を拡張することなどが盛り込まれた計画です。こちらの報文に記載されている通り、1984年に着工し、
 第Ⅰ期:新A滑走路を整備し、発着容量を上げる
 第Ⅱ期:西側ターミナル(今の第1ターミナル)を建設し、
     ターミナルビルを沖合に移転
 第Ⅲ期:新B・C滑走路と、東側(今の第2)ターミナルの建設
この3段階に分けて整備されました。

沖合展開事業の手順。結構壮大な計画が遂行されていました。

https://archiveservier-airportreview-s3.s3.ap-northeast-1.amazonaws.com/target/target4/1993年86号/1993年_086号_「羽田空港沖合展開事業第2期計画の概要」.pdf

今昔マップで見た、沖合展開事業前後の羽田空港(※再拡張事業実施前)になります。空港エリアが広がったのと、ターミナルビルが移転したことがよくわかります。

沖合展開事業前後の比較。事業前は結構コンパクトな空港だったのですね。

そして、旧ターミナルが活躍していた頃の航空写真。

旧ターミナルの写真。結構混雑していそうに見えますね。

この写真に写っている、ご紹介したい沖合展開前の残骸は・・、

このアンダーパスの残骸です。

このアンダーパスは、何のためにあったか?は、沖合展開後の空港では想像できないですが、沖合展開前の写真を見ると、「旧B滑走路」が間近に迫ってきているので、アンダーパスで蓋をしていた、というのが、答えのようです。現在解体工事が進んでいますので、間もなく見えなくなってしまうのでしょうね。

このカルバートの撤去工事が始まっています。
恐らく、間もなく構造物は跡形もなくなるでしょう。

実はもう一つ、沖合展開前の名残があります。

旅客船の船着き場が整備されていますが・・。

この旅客船の船着き場、実は沖合展開前は、違う用途の桟橋として使用されていました。それは、「燃料輸送用の桟橋」でした。羽田空港では、沖合展開前から「ハイドラント」方式の燃料供給が始まっていて、沖合展開前の写真を見ると、桟橋にオイルタンカーが接岸し、燃料を供給する基地がこの地にありました。給油タンクに一旦貯蔵された燃料は、地下のパイプラインを経由し、飛行機の給油に用いられました。旅客船の船着き場は、この桟橋を改造して作られています。

旧ターミナル付近にあった、燃料供給用の桟橋が、
今の旅客船船着き場になっています。

⑧飛行機ファンの聖地、B滑走路真下のフォトスポット

そして、多摩川沿いの遊歩道に、たくさんの航空ファンを釘付けにするスポットがあります。

多摩川沿いの歩道上に、カメラを構えている航空ファンが多いです。
お目当ては、直上を離陸するB滑走路の飛行機。

B滑走路からの離陸が見られるのは、実は最近になっての話です。2020東京オリンピックに向けて調整され、羽田空港の運用方法が見直され、市街地側からの離発着が一部始まり、好天時の夕方を中心に、このルートでの離陸の運用がされるようです。

⑨空港脇にひっそり建つ、昭和の悲劇の慰霊碑

そして、そのB滑走路のすぐ近くにあるのが・・、

柵の中にひっそりとある慰霊碑。

この慰霊碑は、実は1982年に起きた、「羽田沖墜落事故」の慰霊碑なのです。この事故が起きた「羽田沖」とは、旧・C滑走路の着陸直前の多摩川河口付近と言っても良い場所です。事故当時のニュース映像があります。(※閲覧注意)機長が事故機を逆噴射させて墜落させた事故であったとされています。

⑩新名所・多摩川スカイブリッジ

さて、こちらは最近できた、羽田空港と多摩川の対岸・川崎市を結ぶ、多摩川スカイブリッジ。この橋ができたことで、対岸・川崎市のキングスカイフロントでも、羽田空港近くという立地条件を生かしたまちづくりが始まっています。自然環境を守りながら橋を作る、という技術が、紹介されています。

下から眺めるのも立派な橋です。
橋の上から見たら、こんな感じ。

⑪多摩川河口と、羽田空港再拡張事業

そして、もう少し多摩川沿いを歩くと見えてくるのが・・、

さりげなく出現する、「多摩川0km地点」の標識。

多摩川の河口です。ここから先は、埋立地扱い、なのでしょうね。そして、そこにある標識は、こんなものです。

意外とひっそりとした感じの、「多摩川0kmポスト」。

実はこの場所、約10年前にも訪れています。その時は、私の住んでいる多摩ニュータウン・南大沢で降った雨がどこに流れ着くか?を、わが子の自由研究の際に歩いて河口まで訪ねるという、「しずくのぼうけん」のゴールとなった地、だったのです。その時の模様、こんな記事にまとめています。

その当時から比べると、多摩川の護岸工事が進み、高潮に耐えられるような堤防ができて、歩道も整備されたので、随分変わった感じがあります。

そして、多摩川河口と言えば、こちらの写真を見ていただくとわかりますが・・、

多摩川河口の奥(左)に何やら大きな人工島が張り出しています。

こちらの人工島は、何かというと・・、

そう、D滑走路です。(離陸直後の機内からの撮影)
こっちの角度から(これは、着陸直前の飛行機から。)

このD滑走路、実は埋め立ててしまうと、多摩川の流れを阻害してしまうので、多摩川の流れに影響が大きい部分は、桟橋構造(つまり、杭を打ち柱を立て、その上に人工地盤が乗る構造)を採用しています。

つまり、空港再拡張事業と多摩川の流れも、密接なつながりがあるのですね。

⑫東京モノレールの高架橋


さて、ここから羽田空港第3ターミナルに行きますが、
その途中に現われるのが、モノレールの橋脚。
途中で大きく右に回って、第3ターミナルを目指していきます。

ここはお察しの通り、国際線ターミナル(今の第3ターミナル)を作る際に、元々まっすぐ走っていた線路をまげて迂回させた工事が行われました。

【東京モノレールHPより】
https://www.tokyo-monorail.co.jp/haneda/kokusaisen_bldg/

⑬羽田空港第3ターミナルで、空港舗装を語る!

そして、到着するのが、最終地点である、羽田空港第3ターミナル。

最近はインバウンド需要も旺盛で、コロナ前の活気を取り戻した感じです。
意外と鉄ちゃん心をくすぐる、こんなモノレールの大カーブがあります(笑)。
これこそ、先ほどの迂回線であることからの大カーブ。
なかなか開放的なターミナルビルです。
コロナ禍の時は、本当にひっそりしていました。
顔ハメの聖地(笑)。
そして、航空ファンが喜ぶ、展望デッキへ。

第3ターミナルの展望デッキは、開放的で、市街地からも近いからか、多くの人たちで賑わっていました。あと、各国の様々な航空会社のカラフルな飛行機が見られるのも特徴かも、です。

ちなみにここで、空港の舗装について少し説明します。(実は私、空港の舗装設計をやっていたこともあります)飛行機が停まる部分の舗装は、白っぽい色をしていることが多いですが、ここは「コンクリート舗装」が採用されることが多いです。飛行機が停まるエリア(エプロンと呼ぶ)は、舗装の勾配を厳しい基準で管理する必要があったり、耐油性(油漏れに強い)構造が求められたりと、アスファルト舗装では少し耐久性に劣る部分があるため、コンクリート舗装が多用されます。一方で、滑走路などでは、飛行機が離発着する際の衝撃などに対して補修のしやすい、アスファルト舗装が採用されることが多いです。(※軍用機と共用の空港では、軍用機のバーナーでアスファルトが破損するため、コンクリート舗装を採用する空港も少なくないようです)また、エプロンには、ハイドラント(給油配管)や、電源供給、航空灯火などの配管が埋まっていたり、適切な排水勾配を保ち、配水管が埋まっていたりと、きめ細やかな設計が求められます。白線類なども、航空機の通行する場所、GSE(地上のサービス用の車両類)が通行する場所などの区分がされていたりします。空港の舗装設計も、とても奥が深い世界があります。

コンクリート舗装の目地が正方形に見えています。
バスが通っている場所が、「GSE通行帯」です。
カラフルな飛行機が発着する第3ターミナルです。

■終わりに

羽田空港の魅力、というか、近代土木技術の結集の結果ともいえる、この空港施設。眺めながらその変遷を知り、歩くことはとても楽しいと思います。

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