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【南大沢土木構造物めぐり】No.99 ハザードマップを持って南大沢周辺を歩く

「南大沢土木構造物めぐり」も、開始から1年半が経過し、No.99まで続けて来られました。街歩きをしながら記録していくことで、この地域の土木構造物のこと以外に、地域の歴史や防災のことなど、様々な見識を深めることができました。
(記念すべき第1回目は、「小山内裏トンネル」でした。第1回目はこちら)

今回は、100回となる直前を記念して、八王子市の発行する防災ハザードマップを見ながら、この街のことを少し考えてみたいと思います。

■八王子市のハザードマップを見てみる

八王子市のハザードマップは、多摩川や浅川などの大きな川の氾濫や、内水氾濫とよばれる、下水道などでその地域に降った雨が処理できない場合に溢れて浸水するケース、土砂崩れや土石流、地すべりなどの起こりやすさと、起こった場合に影響が出る範囲などをシミュレーションした結果が地図に示されたものです。浸水想定などは、少しずつバージョンアップが進んでいて、最新版は、2021年(令和3年)10月1日に更新されたものです。

この地図の一例、南大沢周辺はこんな感じです。浸水の危険性が高い領域はあまり目立ちませんが、浸水や土砂災害が想定される箇所が多くプロットされています。

南大沢周辺のハザードマップ。

参考までに、今回の探索範囲外ですが、八王子駅周辺のハザードマップを見てみましょう。こちらは、大きな川である浅川が氾濫した時に、かなり広い範囲が浸水することが、彩色された色の部分で表現されていて、ピンクや紫の部分は浸水深さが深いことを意味しています。

八王子駅周辺のハザードマップ。真ん中を東西に流れるのが浅川です。
色付けされているのが、浸水が想定される箇所です。

このように、それぞれの地区の特徴を住民が知り、何が危険なのかを理解することが、この地図を使うとできるようになるのです。

では、実際にハザードマップを持って歩いてみましょう。

■南大沢駅前の浸水想定域

まず浸水想定域で目立つ場所として、「京王相模原線 南大沢駅」が挙げられます。京王線は、この地区では一番低い谷底を走っています。

南大沢駅の線路沿いが周囲より低いところにあるので、浸水想定がされています。
ここがハザードマップの浸水想定域です。周りより低い場所にあります。
確かにここだけ道路が平らになっていて、水が溜まりやすいかも、です。
但し、基本的に溜まった水が道路上を川のように流れていくのが現実的かも?
これが道路を浸水から守る、側溝の桝です。
泥や落ち葉、ゴミなどがたまると機能不全になってしまいます。
斜面を降りた先の多摩ニュータウン通りの横断歩道前に、今も残る水溜まり。
左の集水桝から排水されるはず、なのですが、泥が溜まって
うまく排水できず、水溜まりが発生しているようです。

降った雨は、道路上に設置された側溝を流れ、道路の地下にある下水道の雨水管に流れる設計になっているはずですが、大雨で側溝が溢れたり、集水桝でうまく集水できない場合は、水が滞留することになります。結果的に道路の上を川のように水が流れるなどして、水が溜まりやすい場所に流れ着く形が、ハザードマップから想定される雨水の流れ、でしょうか。

■駅前広場にも隠れた浸水箇所が・・

駅前広場も、平らな形状で、雨水は排水されにくいためか、浸水想定域にロータリーの一部が入っています。駅前広場にはまたそこなりに水が溜まりやすい場所があるようです。

駅前ロータリー(2丁目という文字のすぐ左)の部分にも浸水域が・・。
このへんが浸水域です。排水桝が多く設置できない平らな場所だからですかね?
ここは隠れた浸水箇所。
タクシー乗り場は、バリアフリーのために、歩道を下げていますが、
そのために水が集まってしまい、水溜まりができます。
排水側溝も泥が溜まりがちのようです。

■南大沢3丁目の浸水箇所を歩いて

実際に昨年(2021年8月)の大雨の際に浸水した場所をクローズアップしてみましょう。南大沢駅から5分くらい南東に歩いた場所にある、柏木小学校前の交差点です。交差点の南側だけ、想定される浸水深さが深くなっています。

柏木小学校前の交差点。交差点の東南側は柏木小学校です。
交差点の南側、小学校沿いの浸水想定が橙色(濃い色)です。

この時の様子のレポートです。口絵の写真が、まさしくこの地図の場所で、ここは局所的に道路が低い場所を通っているので、水が溜まりやすくなっていることがわかります。

道路を管理する八王子市も、ここは水が溜まりやすいことをわかっているのでしょう。道路の路面の水を排水する桝が、普通の場所よりも多く設置されています。ただ、この桝が処理できなくなるくらいの雨が降ると、逃げ場を失った水が溜まり、浸水するというメカニズムです。

その場所を撮影。交差点の先、局所的に低い場所ですね。
その場所がこちら。「凍結注意」の文字もあります。
排水桝の周りに排水口を増設しているようですが、追いつかない場合も多いようです。
柏木小学校の門の前に、水が流れた泥の跡がうっすらと。
周囲の敷地の雨水も、道路に流入することが課題のようです。
水の流れた泥の跡は、いくつも見られます。

■同じような最近の浸水箇所(南大沢4丁目)

これは、先月(2022年9月24日)の台風15号の際に南大沢4丁目で浸水した状況です。ゲリラ豪雨のような雨が降ると、こういう場所は途端に冠水してしまいます。

真ん中のT字路が、浸水箇所。道路沿いに浸水想定箇所が目立ちます。
浸水箇所を南側から見たところ。谷底に向けて下り坂が続きます。
大雨の時は、道路を川のように水が流れていきそうですね。
途中の団地の歩道からも、水が低いところに流れていきそうです。
いくつか排水桝がありますが、落ち葉や泥で機能しない場所も少なくなさそうです。
民地側の側溝は、泥や落ち葉で完全に埋まっていそうな場所も。
冠水箇所を歩道橋真上から。
やはりここも排水桝の周りに排水を助ける溝がありますが、
大雨が降ったら容量オーバーになるのでしょうね。

ハザードマップを見ていても、「道路が川になる」という表現が正しいと思う場所が少なくないです。

道路が川になるという一例。道路を中心に黄色の浸水域が広がります。
道路は低いところを走り、水が集まるため、
側溝が溢れたら途端に川のような存在になるということなのでしょうね。

■土石流が懸念される場所は・・

小山内裏公園の中に、土石流が懸念される箇所が3か所あります。土石流が発生すると、扇形のエリアに影響が及ぶ、いわゆる「扇状地」のできたメカニズムを表していると考えれば理解しやすいですが・・、

小山内裏公園に並ぶ、3か所の土石流警戒区域
土石流警戒区域は、小山内裏公園内の3つの谷戸を指します。
特に、「津島谷戸サンクチュアリ」が「特別警戒区域」に属しています。
一番東側にある土石流警戒区域の先には、最近できた工場が。
土石流が来たら、建物の敷地を突っ切るのではなく、遊歩道沿いに
流れていきそうなイメージになるのでしょうね。
真ん中の土石流警戒区域は、「内裏池」と呼ばれる池の上流です。
公園として整備されているところです。
西側の土石流特別警戒区域は、サンクチュアリに指定されています。
昔ながらの谷戸が保全されているからこそ、
土石流への警戒もしなくてはならないのでしょう。
仮に土石流が津島谷戸に発生したら・・・、
恐らく公園内の遊歩道を土石流が流れていくのでは。


そうすると流れやすい遊歩道沿いを流れていくと・・・、
多摩ニュータウン通りの、小山内裏トンネルまで流れ着くかもしれません。
あくまで想定ですが・・。

■土砂災害警戒区域って、どんな場所?

最後に、土砂災害警戒地域がある場所を見てみましょう。

東京都立大のキャンパスの下にある、大田川沿いの住宅地付近に、
土砂災害警戒区域があります。
住宅地の裏側に広がる斜面。
東京都立大学の管理する、「松木日向緑地」です。
擁壁の上部で、木の枝が曲がっているところが。
小規模な土砂崩れはこれまでにも起きているかもしれません。
こちらも、自然の植生と埋蔵文化財を保全している旨の看板が。
だからこそ、斜面災害に警戒すべき、という一面もありそうです。
斜面の植生は、大学によりきちんと手入れされているようです。
ただ、自然斜面を崩壊しないように管理することは難しいと思います。
ハザードマップで見た危険な場所は、やはり危ない気がしました。

■終わりに(実際に歩いてみて)

多摩ニュータウンは、国家事業で整然と計画・造成された場所で、危険が指摘される斜面も、大学や公園などの公共機関が管理している斜面であるため、ある程度管理がされた場所が大半ですが、そういう場所にも斜面崩壊などのリスクがあることを改めて知ることができました。また、浸水箇所も、ただの低い土地だという場所だけでなく、局所的なくぼ地や、水が集まりやすい場所、排水のしにくい場所には冠水しそうな場所が多いことがわかりました。特に道路は、川のように水が流れたり、時には土石流の通り道になることなどは、津波や土石流災害のニュース映像でも目にしたことであり、改めて大規模災害時に車で移動するなどはとても危険な行為であることを再認識しました。

ハザードマップも、そこにある建物の影響などは考慮していないので、そこに書かれた被害想定も、本当にそうなのかをよく吟味して使うことが大事だと思います。そんなイメージを具体化させるためにも、ハザードマップを持って自分の住む場所の周りを歩くことなどを実践するのが良いと改めて思いました。

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