見出し画像

黒部を旅する ①宇奈月温泉を歩く

黒部川の電源開発は、土木の世界に身を置く人たちにとっては、とても大きな工事が行われた場であり、またとても印象的な場所だと思います。今は観光ルートになってきていますが、その歴史を知ることは、とても大事なことで、それを後世に残すことも、とても重要なのだと思います。

今回は、土木学会の会長プロジェクトの一環で、夏のシーズンに、黒部の地を訪れました。実は宇奈月温泉周辺には、今年の冬にも訪れていますが、この時は下見を兼ねたような旅だったのでした。

■黒部への道

最近の黒部への道は、ここから始まります。

東京駅から、「はくたか」号に乗車。
「かがやき」号は黒部宇奈月温泉駅に停まってくれないのです・・。
黒部宇奈月温泉駅に近づくと、田園地帯の後ろに、雄大な立山連峰が。
そして、荒涼な雰囲気がある、黒部川を渡り切ると・・、
黒部宇奈月温泉駅に到着です。
そして、黒部川流域の電源開発の歴史を思い出させます。
駅前に展示された、黒部峡谷鉄道の昔のトロッコ列車。

■黒部川開発のために敷設された、旧黒部鉄道

黒部宇奈月温泉駅のすぐ横に、富山地方鉄道が走っていて、隣接する場所に「新黒部駅」があります。この富山地方鉄道のこの区間は、かつてはJR黒部駅(昔の三日市駅)から宇奈月温泉駅(昔の桃原駅)を結ぶ、「黒部鉄道」という鉄道で、関西電力の前身である、東洋アルミナムという会社が敷設したものです。つまり、ここから既に黒部川電源開発を巡る旅は始まっているということです。

富山地方鉄道。かつての黒部鉄道です。
新幹線の駅ができ、接続駅としても機能する新黒部駅です。
元・東急電鉄の車両で、宇奈月温泉へ。
トロッコに乗りに来たと思われる、家族連れ観光客などもちらほら。
のどかな車内、やはりローカル鉄道はいいですね。
下立駅。最初に黒部鉄道が開通した時の終着駅でした。
愛本駅前には、巨大な変電所が。黒部川電源開発の拠点となる場所です。
内山駅にすれ違いのため、長時間停車中。趣のある木造駅舎です。
「定期券拝見」の文字がいいですね。
反対ホームは、石積みのホーム。
原始的な感じがとても素晴らしい駅。
さらに昔のホームでしょうか。
その上に石を積んで嵩上げしたような跡があります。
宇奈月温泉に到着しました。
前回、冬に来た時は閉ざされていましたが、今回はオンシーズンなので、
活気のある宇奈月温泉駅構内です。

■宇奈月温泉駅付近を歩く

黒部渓谷鉄道の宇奈月駅。
欅平行きの改札待ちの列を見送ります。
黒部川電気記念館の入口にあるのは、
黒部峡谷鉄道の前身、黒部専用軌道を走った昔の機関車。
大正15年に製造された、EB5型です。
米国・オハイオ州・コロンバスのJefferey MFG Co.で製造した機関車。
鉄道マニアなので、ついついこんな展示に見入ってしまいます(笑)。
電力館の中では、ダムのスケールを教えてくれる展示も。
黒部渓谷鉄道のトロッコに乗った気分になれる場所もあります。
こういう場所、やっぱり好きなんですね(笑)。
入口前には、黒部開発の恩師とされる、山田胖(やまだゆたか)さんの像が。
黒部川開発の計画を立てた人です。
黒部渓谷鉄道の駅の2階に、展示施設が。そこから見える対岸の風景。
見えている場所は、弥太蔵谷発電所の建設現場です。

【弥太蔵谷発電所の概要】

https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/pdf/0926_1j_01.pdf

ももクロとコラボした、ヘッドマークの展示。
カーネギー社、1911年の刻印の入ったレールや、マクラギ。
当時の人車の便乗証。鉄道として営業していなかったので、
「便乗の安全については一切保証いたしません」の文字が。

■やまびこ遊歩道を歩く

遊歩道の入口には、小さな橋のオブジェが。
そしてその脇に、発電所の職員が冬場歩く、「冬季歩道」の入口があります。
新山彦橋に向かう、トロッコの軌道。かつては下側に見えている、
山彦橋を目指して左にカーブしていました。
このあたりは、2000年頃に宇奈月ダム工事で
付け替えられた比較的新しい線路です。
付け替え工事前の旧線の一部は、遊歩道になっています。
黒部川の水。比較的濁っています。
上流からの土砂の供給は、引き続き多いようです。
山彦橋。黒部専用鉄道開通当時からの橋です。1926年開通。
歴史的な橋梁なのですね。

山彦橋からは、今の鉄道が走る、新山彦橋が一望できます。ちょうどトロッコ列車が通過。とてもラッキーだと思いながら、写真を撮影しました(笑)。
この橋は、宇奈月ダムが少し上流に建設されたため、付け替えられました。宇奈月ダムに向けて、急ピッチに高度を上げていく新線です。

新山彦橋を渡る、黒部峡谷鉄道。とても絵になりますね。
この旧線の遊歩道も、鉄道が走っていた感じがあり、とても楽しい散歩道です。
山彦橋の先には、旧線のトンネルが遊歩道となっている場所が。
素掘りのトンネルだったり、内巻き補強がされていたりと、
長年使われていた感じがするトンネルです。
起点から700mの距離標でしょうか。こういう遺構、大好きです。
こちらは、冬季歩道が、いちぶだけ散策できる場所です。
外から見るとこんな感じ。
冬場は寒い中、このトンネルを歩いて発電所に行くのですね。
歩道は、宇奈月ダムの展望スポットまで来ました。
軌道跡を歩けるのはここまで。
ダムカードのフォトフレームが、何だかいい味出しています。2001年完成だそうです。
宇奈月駅の近くにも、古い機関車が保存されています。
古いとはいっても、電力館の前にあるものよりは新しい車両です。

■終わりに

黒部の地を訪れ、宇奈月温泉周辺を歩きました。この温泉は、黒部川の電源開発のために開発されていて、鉄道やトロッコも電源開発のために敷設されているので、この地域そのものが、電源開発によってつくられたといっても過言ではありません。そういう場所を楽しくめぐることができました。

ここ以降は、黒部峡谷鉄道に乗り、さらにエレベーター、上部軌道などを乗り継いで黒部ダムに至る、「黒部宇奈月キャニオンルート」として来年度観光客に開放されるルートですが、今回は関係者に案内されて見学した形になるので、写真はご紹介できません。とても素晴らしい施設や、物語があるエリアです。また学会活動の中などで、ご紹介したいと思います。

次回は、そのルートのゴール地点でもある、立山黒部アルペンルートの黒部ダムから大町駅方面に向かう様子をお伝えしますので、お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?