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[読書]虹の岬の喫茶店 森沢 明夫

「美味しくなれ」と今日も珈琲に呪文をかける悦子さんは、実は魔女かもしれない。そうでなければ、こんな不便なところにある店が何年も続く筈がない。

 そう思わせるのだから、これは大人のファンタジーといったお話だと思う。でもそこにやってくる何か困りごとを抱えた人々は皆、とても温かい気持ちになって日常に戻っていく。そして訪れた人の残した痕跡がまた、次の何かを抱えた人々を助ける元になっていく。

 まるで店が生きており、人々を助けることが店の意思であるかのように。そしてこの場所では、静かに優しく時が過ぎていくのかもしれない。

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