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カワイイはもう古い

サンフランシスコに20年暮らしている友人が、先日、ラインで私にこんな話をしてくれた。

CNNなどのニュース番組で海外の諸都市を紹介するコーナーで、数年前から「ロンドン、パリ、ソウル!」と読み上げられるようになった。以前だったら「ロンドン、パリ、東京!」の順番だったはずなのに。いつのまにか東京はソウルに抜かされていたんだ。

今の韓国には経済や文化を含めとても勢いがあるから、ソウルが世界から注目されるのも頷ける。しかし私や私の友人のような世代の人間からすると、東京の存在感がアジアの中から薄れたことに悲壮感を覚えずにはいられない。東京はロンドンやパリに並ぶものというプライドを持っていたことを、CNNから消されて初めて気づかされた感じだ。

世界の人々にとって、今の東京、あるいは今の日本の魅力とは何だろう?
アニメや漫画、コスプレやオタクなどは、すでに広く世界に認知されて、もはや目新しさを失ったように見える。昨年の秋にブラッド・ピット主演の新作映画「ブレット・トレイン」を見たのだが、そこで描かれていたニッポンに私は落胆した。「ブレット・トレイン」は新幹線という意味で、映画はブラッド・ピットが東京からそれに乗り、京都で降りるまでの間、新幹線の中で敵と戦い続けるという、明らかに「鬼滅の刃」から着想を得てハリウッド化したようなアクションムービーであった。日本の女子高生の制服を着たロシア系アメリカ人が登場したり、アニメの着ぐるみ、車内販売などの「おもてなし」、新幹線の中になぜか「ガチャ」の自販機が並んでいたり、「ポッキー」や「じゃがりこ」などのお菓子、終着駅の京都の旅館など、ニッポンの「Quawaii(カワイイ)」と「クールジャパン」をこれでもか!と結集させたような演出がなされていた。しかし、それらの演出は日本の面白さを紹介するものではなく、明らかにそれらを揶揄するものだった。
ようは、ハリウッドは、すでにニッポンのカワイイに対して食傷気味なのだ。クールジャパンは普及しすぎて、すでに当たり前になり、今やそれをいじって嗤う段階に入ったのだろう。

フィギュアやコスプレが欧米で、あるいは世界で目新しいものに映っていたのは、初速の頃だけだった。これだけ情報が早く回る世界で「カワイイ」を見飽きた人々は、もう日本の何を見てもクールだとは思わないのだろう。

クールジャパンの次の段階に入った今、私たちは世界にニッポンの何を提示できるのだろうか?
それを見つけられないまま、手垢のついたカワイイに固執しているから、CNNのニュースから東京が消えるのだ。
私たちはもっと積極的に、そして常に戦略的に新しいニッポンを探し出して世界に発信していかなければならない。
ソウルに嫉妬している場合ではない。

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