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科学的に正しい「選手のほめ方」

指導者や保護者、チームリーダーのみなさん!

選手をほめていますか??
どのようにほめていますか?

ほめることって簡単そうで実は奥が深い!!ほめ方によって選手のモチベーションやパフォーマンスが大きく変わってしまうんです。

そこで、今回も社会心理学者ハイディ・グランド・ハルバーソン教授の著書を参考に、数多くの研究結果から導き出された「効果的なほめ方」をスポーツ選手にあてはめて、考えていきたいと思います。

フィードバックが選手を育てる

 ほめることが大事だというお話は、耳にすることはよくあると思いますが、 
「ほめるだけじゃ、だめでしょ。」
「良いわけではないのに、ほめるのは良くないでしょ。」
「ほめるところがないから、ほめません。」

と思う方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。
はい!まさにその通り!!「ほめる」という行為は選手に対するフィードバックの一種にすぎません。選手が成長するために大事なことは「適切なフィードバック」を与えること!ハルバーソン教授は

フィードバックがなければ、方向がわからず、暗闇を手探りするように進まなくてはならない。

と言っています。ほんとにその通り。。。 選手が練習や試合でうまくパフォーマンスが出せないとき、フォームがおかしいのか、タイミングがおかしいのか、戦略が良くないのか、まず選手自分で考えて修正するステップはありますが、周囲からのフィードバックによって、自分が気が付かなかったことに気付き、正しい方向へ修正することが可能になりますよね。フィードバックがなかったら、、、遠回りすることがたくさんあるのではないでしょうか。

(自分が選手だったころを思い出すと、意外とそのフィードバックをもらえることの大切さをわかってなかった。。。後悔の嵐ヽ(´Д`;)ノ)

だからこそ教授は、「指導者、保護者、リーダー」に理解していてほしいこととして

・「フィードバックを与えること」が仕事の一部であること
・方向が正しければ、それを継続させ、間違っていれば指摘し、相手がモチベーションを維持しながら進み続けられるように支援しなければならないこと

を挙げています。

良いフィードバック、悪いフィードバック


 フィードバックが大事なのはわかりましたが、、、

フィードバックが常に効果的であるとは限らない。役に立たないもの、逆効果になってしまうこともある。

というのが、悩ましいところ!!「とりあえずフィードバックしておけばいい」というものではないんですね、、、ハルバーソン教授は、研究結果から効果的なフィードバックの原則、ルールをいくつか紹介してくれています!!ありがたい!!

①どのようにすれば改善できるかを「考えさせる」フィードバックが効果的

②目標が達成できない人を慰めるのはNG。必要な情報を伝えることが大事

③相手にとって耳当たりのよい言葉である必要はない

④うまくいかず悩んでいる人には、達成のチャンスがあることに目を向けさせるようにする

⑤ネガティブなフィードバックをするときには、問題をできるだけ「具体的」に示す

ちょっと意外なこともありませんか?結果が出ない人を慰めるのは、モチベーションの向上につながらないということとか。これは研究で、報われない努力をほめられた人は、自分の愚かさをさらに強く意識することが明らかにされているからなんですね。

でも、落ち込んでいたら慰めたくなってしまう、、、と思うかもしれませんが、心配ご無用。選手がうまくいかないときに、ネガティブな感情を抱くことは、問題を解決しようと行動するための燃料になるのでいいことだと言われています!

こういったコツを競技活動の現場で応用できるといいですよね。でも実は私にどーーーんと響いたのは教授のこの指摘。

フィードバックをあたえる立場にある人の責任は、問題点の指摘ではなく、改善策を共に見つけ出すこと

わーーーΣ( ̄ロ ̄lll)。その考え方は忘れがち。。。選手の立場になって考えてみても、とても大事なことだと沁みました。

科学で証明された「正しいほめ方5つの鉄則」

回り道しましたが、やっときました!「ほめ方」について!まず私が衝撃的だったのは

ほめることは、伝える内容とその言い方次第で、モチベーションを高めることもあれば落ち込ませることもあります。

ということ。「ほめられたらみんなうれしいんじゃないの?テンション上がるんじゃないの??」と思っていましたが、必ずしもそうではないことが明らかになっているそうなんです。ほめられることの良い面、悪い面をまとめるとこんな感じです。

:自信や決断力を高める・うれしくなる・積極的に目標達成に取組むようになる
×:過度のプレッシャーを感じる・リスクを取ることに消極的になる・自発的な感覚が低下する

ほめるって難しいですね、、、で、心理学者のジェニファー・ヘンダーロング博士は長年の称賛研究をまとめ、「良い効果をもたせるためのほめ方の5つの鉄則」を明らかにしてくれたんです!スポーツの事例を添えてご紹介します。

鉄則①本心からのものであること
誠実でないと感じると受け止められなくなるし、馬鹿にされたと感じる。いい気分はしない。
<例>
試合でこてんぱんに負けて、良いパフォーマンスが出せなかった選手に、「惜しかったね。」はNG


鉄則②相手がコントロールできる行動を重視する
努力や忍耐力、効果的なアプロ―チ、心構えなどをほめることで、それらが重要であるという考えが強まり、困難に直面しても簡単に諦めなくなる。才能はコントロールできないが、これらの行動はコントロールできる。
<例>
×「お前のサーブは強肩の賜物だな」 
「毎日居残り練習で100球サーブ練習してきたから、サーブが武器になったな」


鉄則③人と比較しない
他者と比較すると才能と関連付けて、諦めやすくなる。選手が過去から現在にどのような成長したを比べること大事。自分の成長をほめられるとモチベーションが上がる。
<例>
×「全国優勝してる〇〇ちゃんは、この短期間でサーブが格段に速くなった。だからあなたもできる。」
「3か月前の試合では、確率が30%しかなかったファーストサーブが今大会では70%になった。だから3か月あれば、もっとサーブの改善ができる。」


鉄則④自律性を損ねない
報酬を与えたり、プレッシャーを与えるのはNG。管理されている感覚が、やらされてる感覚に繋がり、楽しみ・没頭の感覚が失われる。
<例>
×「よく頑張って優勝したね。優勝したから、今日はトレーニングは無しにしておいしいものを食べに行こう。」
「辛いことを乗り越えて優勝できたね。毎日サーブを居残り練習してやってきた成果を試合で出せたのは凄いことだ。」


鉄則⑤達成可能な基準と期待を伝える
ほめて選手の自信を深めてもらいたいのはわかるが、実力以上のものを期待するとプレッシャーになる。「難しいが可能」な目標を設定をできるようなほめ方をする。
<例>
×「12歳でこの大会で優勝するのは凄い。きっと世界で活躍する選手になれる!」
「よく頑張って12歳で優勝できたね。次は、15歳以下の部でベスト8を狙おう」


まとめ


いかがでしたでしょうか??私は、よかれと思って、ほめる時に使っていた言葉が、選手の成長に対してあまり効果的ではなかった、、、と気付かされることがたくさんありました。。。反省。

なんとなく使っている言葉も、研究結果から科学的な根拠を持ってその良し悪しの基準を示してくれることって、とても参考になります。

スポーツだけでなく、日常の様々な場でも「ほめる」こと、「フィードバック」することってたくさんあると思います。せっかくなら、相手のパフォーマンスを上げる助けになるような、方法をマスターできたらいいですよね!!さっそく今日から実践します!!


<参考>
・ハイディ・グラント(2013)やってのける.大和書房
・Henderlong, J., & Lepper, M. R. (2002). The effects of praise on children's intrinsic motivation: A review and synthesis. Psychological bulletin, 128(5), 774-795.

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