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漢字とひらがなの使い分け。文章を「ひらく」メリットなど

編集やライターの仕事では「ひらく」「とじる」という言葉がよく使われる。

「ひらく」とは、漢字の言葉をひらがなにすること。
「とじる」とは、ひらがなの言葉を漢字にすること。

漢字とひらがなの使い分けは、文章のイメージをつくる重要な要素。「音」だけの話し言葉にはない要素であり、文章のおもしろいところでもある。

今日は、そんな漢字とひらがなの使い分けについて触れてみたいと思う。

漢字とひらがなの使い分け例

はじめに、ビジネスメールの簡単な例文をどうぞ。

▼漢字多めバージョン

○○様

いつも大変お世話になっております。
△△社の××で御座います。
先程のお電話やメール等でもお伝えした通り、
□□日迄に本件の御回答を頂けますでしょうか。
以上、何卒宜しくお願い致します。

△△社 ××

▼適度にひらがなバージョン

○○さま

いつも大変お世話になっております。
△△社の××でございます。
先ほどのお電話やメールなどでもお伝えしたとおり、
□□日までに本件のご回答をいただけますでしょうか。
以上、何卒よろしくお願いいたします。

△△社 ××

この雰囲気の違い、伝わるだろうか。また、いつもどちらに近い文章を書いているだろうか。どちらが正解・間違いということはない。好みもある。

もう少し「ひらく」なら、以下の箇所もひらがな表記ができるだろう。

大変→たいへん
先ほど→さきほど
何卒→なにとぞ

ざっくり言えば、漢字はかたい、ひらがなはやわらかい印象を与える。そのほどよいバランスを見極めると、読みやすく引き締まったイメージの文章となる。

私は編集・ライティングに携わって10年以上になるが、経験上、校正・添削時には「ひらく」指示をすることが圧倒的に多い

PCで原稿を書いていると簡単に漢字変換ができてしまうからなのか、原稿に信頼感を持たせたいからなのか、はたまたこれまでの担当者のクセなのか…

編集者としては、内容を読者に分かりやすく届けることがミッション。そのためいつも媒体のカラーを考えつつ、ほどよいバランスになるよう心がけている。(表記のルールがあれば、もちろんそれに従う)


ひらがなにするメリット・デメリット

迷ったら、ひらがな表記。基本的にそのぐらいの感覚でいいように思う。ただし、注意点もある。

ひらがなで書くことのメリット・デメリットを、以下にあらためてまとめてみた。

▼メリット

・やさしい、やわらかい、エレガント、女性的、親しみやすい…といった印象を与えられる
・読めないことがない
・漢字を間違うことがない
・ふくみやひろがり、味わいをもたせることができる(詩的)

▼デメリット

・多用すると幼い印象、おバカな感じにもなる
・文章が長くなりがち
・漢字の方が意味が伝わりやすい場合もある

こういった点に気をつけて、うまく使い分けをしていきたい。

迷ったらひらがなと言ったけれど、もちろん漢字を使った方がいい場面もある。知的な印象や字面のインパクトを持たせたい、限られた文字数の中で表現したいなど、優先するポイントに合わせて選ぶとよいだろう。


参考に『記者ハンドブック』はおすすめ

メリット・デメリットなどを気にしつつ、それでもどちらがいいか迷うこともあるかもしれない。そんな場合、何かを目安にしたいもの。

私がこれまでかかわった媒体には、社内ルールや参考にするガイドラインのようなものがあった。

こちらの『記者ハンドブック』もそのひとつ。共同通信社が出版している、通称“キシャハン”と呼ばれる本である。多くの新聞記者やライター、編集者たちが参考にしている。

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この本では、漢字とひらがなの使い分けや送り仮名の付け方、カタカナ語の正しい使い方などが1冊にまとめられている。いわば文章を扱う人にとっての辞書であり、持っておきたい1冊。

初版は1956年と古く歴史があり、最新のものは第13版。私が持っているものは第12版だったので、買い替えねば……

それから、もっと手軽に知るには「検索ボリュームを調べる」という方法もあり。

サクッと調べるなら、漢字とひらがなでGoogleの検索ヒット数を比較。

もう少しちゃんと調べるなら、Ubersuggestなどで月間ボリュームを比較するのもよいかと。(私は普段ここまでやらない)



以上、漢字とひらがなの使い分けについて、普段考えていることやこれまでの経験をまとめてみた。本当はこのテーマについてはもっと書きたいことがあるけれど……今日はこの辺で。

文章を書く上で、何か少しでも参考になることがあれば嬉しい。

それでは、また明日。



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