陶芸家・三宅直子さんの、水屋にも点前座にもなるキッチン・前編 【連載:「お茶を一服、いただけますか」第一回】
いつの間にか吹き抜ける風もあたたかく変わり、窓から見える氷川神社の緑は日に日に鮮やかに青々としていきます。
さいたま市大宮区から、茶と家企画室・わたぬきです。
去るゴールデンウィークのよく晴れたある日、陶芸家で私のお茶仲間でもある、三宅直子さんのお宅へお邪魔し、お茶を一服いただいてきました。
茶のある暮らしを彩る、作家さんならではのこだわり抜いた空間をご紹介します。
お邪魔したのは、陶芸家三宅直子さんのご自宅
直子さんと私は、八王子市の山ひとつ挟んだお隣の美大の院と学部に通っているときに、裏千家のお教室で出会いました。
ほぼ同時期に入門した年の近い社中で、ちょっとしたことを聞いたり、楽しみを共有したりすることがしやすく、とても親しみを感じている同期です。
ちなみに茶道はじめ日本文化のお稽古ごとでは同門の仲間のことを社中と呼びます。
三宅さんのお茶空間(キッチン、リビングダイニング)
ご案内いただいたのは、ご自宅2階のリビングダイニングキッチン。
大きな窓から明るい光が差し込み、猫さんうとうとしている癒しの空間でした。
ハチワレ猫さんはヒマラヤちゃん。もう一匹、アルプスちゃんがいるのですが、この日は終ぞ姿を見れず。警戒心が強い猫さんもかわいいです。
ではさっそく、収納棚よりお道具を出すところから見せていただきます。
収納
よくある普及型のキッチンでは、天井の高さいっぱいまで戸棚になっていることが多いですが、直子さんのキッチン収納は目線の高さの一段のみの潔い設計。
踏み台などを使わなくても全ての道具に手が届き、なおかつ上開き扉で全面を開放できる作りのため、安全に出し入れすることができます。
見た目はスタイリッシュなのに、驚きの収納力です。
焼き物の茶碗、水指、建水はすべて直子さんの作品。
この棚には日々のお茶に使うものを入れており、器はたくさんの作品から翌日使うものなどを選んで加えているんだそう。
「しまい込んでいると使わなくなっちゃうし、お茶もしなくなってしまうから、すぐ使えるところに置いておくんです」
本日の茶碗や菓子器も、すでに選んでキッチンの上に控えてくださってました。
お仕度
三宅さんのキッチンは奥行が広くフラットなタイプ。
コンロとシンクの間に十分なスペースがあり、お道具を並べると素敵な点前座になりました!
カウンターキッチンなのでダイニングテーブルのお客様とお話をしながら点てられ、湯も冷めないし、合理的で美しい。真似したい。(毎日キッチンがきれいであることが大前提ですが…)
お仕度ができたところで、少し長くなりましたので前編はここまでに。
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最後に、お道具情報や三宅直子さんのアトリエ情報をご紹介いたします◎
お道具紹介
茶碗、銘々皿、建水、水指
焼き物はすべて直子さんの作品で、
黒にシルバーの幾何学模様が遊ぶシリーズの建水、水指、茶碗は、お茶の先生のご依頼で製作した皆具のプロトタイプなんだそう。
鉄のような黒、湖のような水色に、幾何学模様や身近で意外な素材の模様が遊ぶような作品が印象的です。
薄茶器
北海道の木地工房、円舘工芸舎で作られた槐(エンジュ)の薄茶器。
直子さんの遊び心ある作品に寄り添う無垢な表情です。
「道具屋さんにもお世話になってますが、作家さんや工房から直接購入するものが好き」と仰っていました。
鉄瓶
俵屋宗達の風神が持っている風袋を思わせる、持ち手のカーブが印象的な鉄瓶は南部鉄器の壱鋳堂。
'n studioオープンアトリエ
東京都町田市南成瀬の直子さんのアトリエ[「'n studio(エン スタジオ)」では、陶芸制作の場として毎月オープンアトリエを開催されています。
藤野ぐるっと陶器市 2022.5.21(土)-22(日)
神奈川県相模原市緑区「芸術の町 藤野 」で開催される「藤野ぐるっと陶器市」に、三宅直子さんも出品されます。
相模原と山梨の県境、緑陰が心地よい陶器市です。ぜひおでかけください。
文:わたぬき 絵:わだのぞみ