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Aldebaran・Daughter

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ファンタジー小説『Aldebaran・daughter(アルデバラン・ドーター』
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#シリアス

Aldebaran・Daughter【5】必然が招くは奇跡の終止符

Aldebaran・Daughter【5】必然が招くは奇跡の終止符

 キララの森を通って札が三つ並んだ分岐に戻り、真ん中の道を選んで島の中央へ向かう。足下は不安定な、でこぼこの砂利道。丈夫な靴底だから良いものの、踏んだら足の裏に堪えそうな小石がたまに落ちている。

 道幅は人が往来しやすい広さを確保すべく、生えている草を刈り取った跡が窺えた。
 道から外れた場所には、無造作に生い茂った草木。本土でポピュラーな部類に入る薬草と染料に使える花が、十分過ぎるほど植わって

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Aldebaran・Daughter【4】そして、彼女は置き去りにされた

Aldebaran・Daughter【4】そして、彼女は置き去りにされた

「お茶、淹れますね」

「有難う」

 部屋のドアが閉まり、ようやく一人になれた。
 オリキスは布を棒状に丸めて編んだ敷き物の上に座り、一文字も読み落としがないよう、解読を再開する。

 各国の内情。
 遺跡調査。
 風習。
 地形。
 解読がラクな文章はジャーナリストらしい記録と、明るい冒険家の平凡な日記。資料室に行けば手に入る、三流以下の情報だ。
 そう、表向きは。

(あなた方は騙せたつもり

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【Aldebaran・Daughter番外編】Human StainとScholar①

【Aldebaran・Daughter番外編】Human StainとScholar①

 十五歳に見られがちの幼い風貌の青年は新薬の調合に使う花を採取すべく、街の側にある深い森へと足を踏み入れた。濃くなる夕陽の色。感じる妖しい複数の視線。「夜間は堕落した妖精《カーラープェリー》が人を騙して生気を吸おうとやって来るから、遊び半分で森へ行っちゃ危険だよ」と教えてくれた術師の祖母が生きていたらこの状況を何と言ったか、十八歳のネウは面白おかしく思って余裕のある笑みを浮かべた。

 ーーお

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