#笑ってくれないあさひくん
【笑ってくれないあさひくん】 #1
あらすじプロローグ
家が隣同士。
親が仲良し。
幼稚園からずっと一緒にいるから、好きなものや嫌いなもの、機嫌がいいときと悪いときの空気、考え事をしているときの癖、自分のことよりも相手のことの方が分かる気がする。
そんなことをあさひくんに言ったら鼻で笑われた。
んー、いまのは笑うに入らないか、なんて横目であさひくんを見る。
あさひくんはいつも無表情だ。
たとえ面白いことがあっても、さ
【笑ってくれないあさひくん】 #2
中学のときから始めた五年日記も、もう四年目。
所々空白のところはあるけど、飽き性なわたしがひとつのことをこんなに続けるなんて……と感動する。
幼馴染のみんなにも勧めたけど、ちーちゃんは「ん~、インスタでいいや!」、勇太くんは「書くことない」、あさひくんは「俺の分まで書いて」と誰一人興味を示さなかった。まぁいいや。
今日は、高校の入学式。
入学式や卒業式といった行事の思い出を残したが
【笑ってくれないあさひくん】 #3
「柚ちゃん、部活決めたー?」
「んー、部活は入んないかな。ちーちゃんは調理部?」
「うん!」
入学式から数日経ち、ちーちゃんとあさひくんと一緒のクラスになった。
勇太くんだけ隣のクラスになったけど、「サッカー部だったやつらが集合してるからうるさい」って。たしかに隣のクラスは元気な子が多い。
わたしたちのクラスは比較的大人しい子が多いので、誰とでも仲良く話せるちーちゃんがクラスを引っ張ってく
【笑ってくれないあさひくん】 #4
昨日の続き。
あさひくんと合流して一緒に駅に向かっていると、思い出したかのように「あれ、俺の飲みもんは?」と聞いてきたから「勇太くんが飲んだ」と素っ気なく返したら「ふ~ん」と素っ気なく返された。
そのあとはいつも通り、話したり話さなかったりしながら帰宅。
借りてきた本を読みながら部屋でゴロゴロしてたら、「柚~、あさひ来た〜」とママに呼ばれる。
あさひくん?ついさっきまで一緒にいたのに?
【笑ってくれないあさひくん】 #5
わたしたちは、毎朝一緒に登校している。
高校に入ってみんな初めての電車通学だったから、最初はわたしの家の前で集まってから一緒に駅に行くようにしてたけど、誰かさんがいっつもギリギリに来て、小走りで発車寸前の電車に乗るという忙しない朝の日々に耐えられなくて(その他三人が)、乗る電車の時間を決めて、それに間に合うように、各々好きな時間に家を出るスタイルにした。
そう決めてすぐ、何時に出ようかな~
【笑ってくれないあさひくん】 #6
あさひくんと登校中、「そういや昨日うちで飯食ってったよ、勇太」って。やっぱりお昼にメロンパン1個じゃ足りなかったんだ。
ご飯をがっついる姿を見たかなちゃん(あさひママ)が問いただした結果、雷が落ちたらしい。よく動いてよく食べる育ち盛りが菓子パン1個で済ますんじゃない、なんでわたしたちを頼らないのか、そのためにわたしたちがいるんでしょ、って。
「親から食費貰ってないの?」
「貰ってる」
「足り
【笑ってくれないあさひくん】 #7
てるさんに「いつから出勤したらいい?」って聞いたら「柚ちゃんが来たいときに来たら」って。
ある程度決まりごとがないと不安になるわたしは、週何日働いたらいいのか、何時から何時まで働いた方がいいのか、と質問責めしたら「柚ちゃんが決めていいよ」と言われて、余計不安になった。
え……困る……という心の声が漏れたのか「お友だちはどういう風に働いているの?」と聞いてくれた。
「ちーちゃんは、学校ある日
【笑ってくれないあさひくん】 #8
「……ず……ゆず!柚!」
「……ん、なに」
「いつまで寝てんの、もう14時だけど」
「え、もうそんな時間……まだ寝れる……」
「買い物行くんじゃねーの?」
ん~、とまた寝始める柚を見てため息が出る。
とりあえずは生きてた。
柚は疲れが溜まると一日中寝て過ごすことがある。トイレにも起きず、ひたすら寝る。
昨日、柚と喫茶店から帰宅後、用事があって柚にラインしたけどいくら経っても既読がつかず、
【笑ってくれないあさひくん】 #9
ホームルームが終わり、ちーちゃんがわたしの席に来て「柚ちゃん、今日バイトも委員会もないよね?」「みんなでファミレス行かない?」って。
「あれ、あさひくんたち部活じゃないっけ?」
「あいつらじゃなくて、クラスの子たちで。仲良くなったからみんなで話そ~って。駅の近くにあるとこ」
「え、わたしもいいの?」
「もちろん!でも無理しなくていいよ!」
といいつつ「柚ちゃんが来てくれたらいいなぁ」なんて
【笑ってくれないあさひくん】 #10
「ちづ、誕生日おめでとう」
「ちーちゃん、誕生日おめでとう」
「姉ちゃん、誕生日おめでとう」
「ありがと~!!」
ちーちゃんの誕生日会。
本当は来週が誕生日だけど、みんなが集まれる休日に前倒しをしてお祝い。いつもは誕生日が近い陸兄も一緒に祝っていたんだけど、どうしてもバイトが休めないみたいだから今回はちーちゃんオンリー。
今回の主役が韓国料理をお腹いっぱい食べたいというリクエストで、前日
【笑ってくれないあさひくん】 #11
ちーちゃんとカフェに行く約束だったけど、急遽バイトが入ったらしくて延期になった。
雨も降ってるし、することないし、ベッドの上でゴロゴロ。夕方まで降るのかなぁ、ハルの散歩のときには止んでほしいなぁ、お腹空いたけどさっきご飯食べたばっかだしなぁとか考えてると、遠くからサイレンの音が聞こえる。
あ、救急車だ、と思ったらすぐにラインの音。送り主を見なくても、内容を見なくても分かる。近所で事故があっ
【笑ってくれないあさひくん】 #12
「柚ちゃん、ごめん、今日お昼一緒に食べられないや」
「部活?」
「そう、集まってご飯食べるんだ。もし良かったら柚ちゃんも一緒に食べる?」
朝の登校中に駅のホームでちーちゃんからお誘いがあったけど、さすがにその勇気はないので「大丈夫、図書室で食べるよ」と言った。
実際、図書室での飲食は禁止だから違う場所で食べなきゃいけない。教室は騒がしいし、空き教室を探してササッと食べて図書室で時間を潰そう。
【笑ってくれないあさひくん】 #13
学校が終わって久しぶりに四人揃って帰宅。
ちーちゃんが入っている調理部は月に数回しかないから一緒に帰ることが多い。
あさひくんと勇太くんは週に数回サッカー部の練習に参加してるけど、正式に入部しているわけじゃないらしい。入部すればいいじゃんと言ったら、中学で散々しごかれたからもうこりごり、だって。ただ、身体が鈍りそうだから、という理由で参加させてもらってるらしい。
「サッカー部もゆるいんだね
【笑ってくれないあさひくん】 #14
「いらっしゃいませ。サブさん、こんにちは」
「柚ちゃんヤッホ〜。いつものくださいな」
「は~い。サブさん、昨日、家でパウンドケーキ作ってきたんだけど食べる?」
「食べる食べる~♪」
ほぼ毎日いるであろう常連のサブさん。
喫茶店の目の前にある古本屋の店主で、ここのオーナーのてるさん、八百屋のブタさんととっても仲良し。
初めて会ったとき、てるさんとブタさんはニコニコしながら話しかけてくれるけど