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【笑ってくれないあさひくん】 #15

 次の日、学校もバイトも休みだけど部活の試合がある凪のお弁当をつくるために早起き。  いつもつくっているママが不在だから、代わりに私がつくる、といってもおにぎりだけ。特大おにぎり二つ。昨日は足りなかったみたいだから、もう一つ追加するつもり。  いつものようにハルに朝の挨拶をして、ソファーで快適そうに寝ている人、ソファーの下で居心地悪く寝ている人、二人の顔を覗き込むと、小さい頃から寝顔が変わってないことに気づく。  普段寝顔をガッツリ見ることなんて中々ない。そうだ、写真撮ってち

    • 【笑ってくれないあさひくん】 #14

      「いらっしゃいませ。サブさん、こんにちは」 「柚ちゃんヤッホ〜。いつものくださいな」 「は~い。サブさん、昨日、家でパウンドケーキ作ってきたんだけど食べる?」 「食べる食べる~♪」  ほぼ毎日いるであろう常連のサブさん。  喫茶店の目の前にある古本屋の店主で、ここのオーナーのてるさん、八百屋のブタさんととっても仲良し。  初めて会ったとき、てるさんとブタさんはニコニコしながら話しかけてくれるけど、サブさんはずっと怖い顔をして黙ってコーヒーを飲んでいて、この人はとても怖い人な

      • 【笑ってくれないあさひくん】 #13

         学校が終わって久しぶりに四人揃って帰宅。  ちーちゃんが入っている調理部は月に数回しかないから一緒に帰ることが多い。  あさひくんと勇太くんは週に数回サッカー部の練習に参加してるけど、正式に入部しているわけじゃないらしい。入部すればいいじゃんと言ったら、中学で散々しごかれたからもうこりごり、だって。ただ、身体が鈍りそうだから、という理由で参加させてもらってるらしい。 「サッカー部もゆるいんだね」 「いや、顧問に会うたびに入部しろって脅されてる」  部員でもない一年生が好

        • 【笑ってくれないあさひくん】 #12

          「柚ちゃん、ごめん、今日お昼一緒に食べられないや」 「部活?」 「そう、集まってご飯食べるんだ。もし良かったら柚ちゃんも一緒に食べる?」  朝の登校中に駅のホームでちーちゃんからお誘いがあったけど、さすがにその勇気はないので「大丈夫、図書室で食べるよ」と言った。  実際、図書室での飲食は禁止だから違う場所で食べなきゃいけない。教室は騒がしいし、空き教室を探してササッと食べて図書室で時間を潰そう。  こういうとき、周りを気にせずに一人で食べる強さがあったらいいのに心底思う。ち

        【笑ってくれないあさひくん】 #15

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        • 笑ってくれないあさひくん
          15本
        • バケットリスト
          1本

        記事

          【笑ってくれないあさひくん】 #11

           ちーちゃんとカフェに行く約束だったけど、急遽バイトが入ったらしくて延期になった。  雨も降ってるし、することないし、ベッドの上でゴロゴロ。夕方まで降るのかなぁ、ハルの散歩のときには止んでほしいなぁ、お腹空いたけどさっきご飯食べたばっかだしなぁとか考えてると、遠くからサイレンの音が聞こえる。  あ、救急車だ、と思ったらすぐにラインの音。送り主を見なくても、内容を見なくても分かる。近所で事故があったりサイレンの音がすると、決まってわたしに連絡をしてくる、定型主と定型文。 【

          【笑ってくれないあさひくん】 #11

          【笑ってくれないあさひくん】 #10

          「ちづ、誕生日おめでとう」 「ちーちゃん、誕生日おめでとう」 「姉ちゃん、誕生日おめでとう」 「ありがと~!!」  ちーちゃんの誕生日会。  本当は来週が誕生日だけど、みんなが集まれる休日に前倒しをしてお祝い。いつもは誕生日が近い陸兄も一緒に祝っていたんだけど、どうしてもバイトが休めないみたいだから今回はちーちゃんオンリー。  今回の主役が韓国料理をお腹いっぱい食べたいというリクエストで、前日から、いや、一週間も前から、ママたちが張り切って準備していた。  チーズダッカル

          【笑ってくれないあさひくん】 #10

          【笑ってくれないあさひくん】 #9

           ホームルームが終わり、ちーちゃんがわたしの席に来て「柚ちゃん、今日バイトも委員会もないよね?」「みんなでファミレス行かない?」って。 「あれ、あさひくんたち部活じゃないっけ?」 「あいつらじゃなくて、クラスの子たちで。仲良くなったからみんなで話そ~って。駅の近くにあるとこ」 「え、わたしもいいの?」 「もちろん!でも無理しなくていいよ!」  といいつつ「柚ちゃんが来てくれたらいいなぁ」なんて、両方の人差し指を合わせてツンツンしながら言われても……  しかも、きっと一緒に

          【笑ってくれないあさひくん】 #9

          【笑ってくれないあさひくん】 #8

          「……ず……ゆず!柚!」 「……ん、なに」 「いつまで寝てんの、もう14時だけど」 「え、もうそんな時間……まだ寝れる……」 「買い物行くんじゃねーの?」  ん~、とまた寝始める柚を見てため息が出る。  とりあえずは生きてた。  柚は疲れが溜まると一日中寝て過ごすことがある。トイレにも起きず、ひたすら寝る。  昨日、柚と喫茶店から帰宅後、用事があって柚にラインしたけどいくら経っても既読がつかず、きっと疲れて寝てんだなと思っていたけど、結局朝になっても未読のまま。【まだ寝てん

          【笑ってくれないあさひくん】 #8

          なりたい自分

          約二年前、自分の好きなところについて書いた。 自分の内側を外に出すなんて恥ずかしい、と長く思っていたので、殻を破る意味合いでもあった。 そこから少しずつ『大丈夫かも』を積み重ね、今年に入り、小説、バケットリストを公開できた。 私より上手い人は沢山いるけど平気? 他人の目が気にならない? できなかったらどうする? 私は完璧主義だと思う。 ゴールまでの過程で自分の思い通りにいかないことが起こると、あぁもうだめだ、と諦めてしまう。全部無かったことにする。 本来の私はのんびりし

          なりたい自分

          【笑ってくれないあさひくん】 #7

           てるさんに「いつから出勤したらいい?」って聞いたら「柚ちゃんが来たいときに来たら」って。  ある程度決まりごとがないと不安になるわたしは、週何日働いたらいいのか、何時から何時まで働いた方がいいのか、と質問責めしたら「柚ちゃんが決めていいよ」と言われて、余計不安になった。  え……困る……という心の声が漏れたのか「お友だちはどういう風に働いているの?」と聞いてくれた。 「ちーちゃんは、学校ある日だと17時くらいから21時まで。休日だとお昼から夕方まで働くって言ってた。多分週

          【笑ってくれないあさひくん】 #7

          【笑ってくれないあさひくん】 #6

           あさひくんと登校中、「そういや昨日うちで飯食ってったよ、勇太」って。やっぱりお昼にメロンパン1個じゃ足りなかったんだ。  ご飯をがっついる姿を見たかなちゃん(あさひママ)が問いただした結果、雷が落ちたらしい。よく動いてよく食べる育ち盛りが菓子パン1個で済ますんじゃない、なんでわたしたちを頼らないのか、そのためにわたしたちがいるんでしょ、って。 「親から食費貰ってないの?」 「貰ってる」 「足りないの?」 「足りる」 「菓子パン1個じゃ腹の満たしにもなんないでしょ?朝も食べ

          【笑ってくれないあさひくん】 #6

          わたしのバケットリスト

          元々リストをつくることが好きで、つくっては消してを繰り返し、いまはNotionにバケットリストやウィッシュリスト、読みたい本リストなどコツコツとリストアップをしている。 アウトプットが苦手なこともあって、ひとりで楽しむ範囲でやっていたけど、今年に入ってから【小説をネットに公開する】【デザインしてみる】ことが自然と出来ているので、この流れに乗って。 プライベート感が強いものと、食べたいもの欲しいものは無限にあるので除いてます。 ⚪️ 数や期間に制限なく、自由に更新していきま

          わたしのバケットリスト

          【笑ってくれないあさひくん】 #5

           わたしたちは、毎朝一緒に登校している。  高校に入ってみんな初めての電車通学だったから、最初はわたしの家の前で集まってから一緒に駅に行くようにしてたけど、誰かさんがいっつもギリギリに来て、小走りで発車寸前の電車に乗るという忙しない朝の日々に耐えられなくて(その他三人が)、乗る電車の時間を決めて、それに間に合うように、各々好きな時間に家を出るスタイルにした。  そう決めてすぐ、何時に出ようかな~、集合時間の5分前には着いていたいな~と悩んでたら、あさひくんから【明日何時に出

          【笑ってくれないあさひくん】 #5

          【笑ってくれないあさひくん】 #4

           昨日の続き。  あさひくんと合流して一緒に駅に向かっていると、思い出したかのように「あれ、俺の飲みもんは?」と聞いてきたから「勇太くんが飲んだ」と素っ気なく返したら「ふ~ん」と素っ気なく返された。  そのあとはいつも通り、話したり話さなかったりしながら帰宅。  借りてきた本を読みながら部屋でゴロゴロしてたら、「柚~、あさひ来た〜」とママに呼ばれる。  あさひくん?ついさっきまで一緒にいたのに?と頭にハテナを浮かべながら玄関まで行くと、あさひくんが不愛想な顔で手に持っていた

          【笑ってくれないあさひくん】 #4

          【笑ってくれないあさひくん】 #3

          「柚ちゃん、部活決めたー?」 「んー、部活は入んないかな。ちーちゃんは調理部?」 「うん!」  入学式から数日経ち、ちーちゃんとあさひくんと一緒のクラスになった。  勇太くんだけ隣のクラスになったけど、「サッカー部だったやつらが集合してるからうるさい」って。たしかに隣のクラスは元気な子が多い。  わたしたちのクラスは比較的大人しい子が多いので、誰とでも仲良く話せるちーちゃんがクラスを引っ張ってくれてる。とてもありがたい。  ちなみに、あさひくんと同じクラスになるのは小学生

          【笑ってくれないあさひくん】 #3

          【笑ってくれないあさひくん】 #2

           中学のときから始めた五年日記も、もう四年目。  所々空白のところはあるけど、飽き性なわたしがひとつのことをこんなに続けるなんて……と感動する。  幼馴染のみんなにも勧めたけど、ちーちゃんは「ん~、インスタでいいや!」、勇太くんは「書くことない」、あさひくんは「俺の分まで書いて」と誰一人興味を示さなかった。まぁいいや。  今日は、高校の入学式。  入学式や卒業式といった行事の思い出を残したがる親のおかげで、幼馴染みんなが集まって写真撮影をするのが恒例になってる。楽しんで

          【笑ってくれないあさひくん】 #2