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【笑ってくれないあさひくん】 #4

 昨日の続き。

 あさひくんと合流して一緒に駅に向かっていると、思い出したかのように「あれ、俺の飲みもんは?」と聞いてきたから「勇太くんが飲んだ」と素っ気なく返したら「ふ~ん」と素っ気なく返された。
 そのあとはいつも通り、話したり話さなかったりしながら帰宅。
 借りてきた本を読みながら部屋でゴロゴロしてたら、「柚~、あさひ来た〜」とママに呼ばれる。
 あさひくん?ついさっきまで一緒にいたのに?と頭にハテナを浮かべながら玄関まで行くと、あさひくんが不愛想な顔で手に持っていたビニール袋を「ん、」と渡してくる。


「ん?どうしたの?」
「今日待っててくれたお礼です」
「お礼?お礼されるようなことしたっけ?」


 袋の中を見ると、買ったはいいものの結局飲めなかった(誰かさんたちに飲まれた)炭酸飲料、それに期間限定のお菓子。


「あ、ジュース。どうしたの?」
「帰るとき、なんとなく不機嫌な気ぃしたから、待ってんのいやだったかな~って。でも、いつも待っててくれるけどいやだったら帰ってるよな~とか色々考えて、そういや自分の飲みもん持ってなかったな、と思って、もしかしたら勇太に飲まれたんかな?って」
「え、すごい、あたり。そんなに分かりやすかった?」
「何年もいますから、じゃ」
「ありがと」


 はい~、そう言って帰って行ったあさひくん。

 わたし、そんな分かりやすいかな。
 たしかにちょっとモヤッとしてたけど、いつものことだし、そこまで気にすることじゃないか、って切り替えたつもりだったけど。ママにもひと通り話したら「あさひは昔から気の利く男だからね~」って笑ってた。
 部屋に戻りながら自分の気分が上がっているのに気づいて、やっぱり機嫌良くなかったのかな、なんて思ったり。貰ったジュースを飲んで途中まで読んでいた本を手にしようとしたとき、また下から「柚~」と呼ばれたので、ご飯できたのかな?とリビングに行くと、勇太くんがいた。
 「どうしたの?」と聞くと勇太くんが手に持っていたビニール袋を「ん、」と渡してくる。あれ、これはデジャブか?と思いながら袋を受け取り、中身を見ると。


「え、これ、」
「さっき俺が飲んじゃったやつ、あれ、柚のでしょ?ひと口くらいしか飲んでなかったのに飲み干しちゃったから、柚に悪いことしたな~って。どうせモヤってんだろ~な~って」


 勇太くんの言葉を聞いたママはお腹を抱えて「そうだ、勇太も気の利く男だった」って笑ってた。袋の中には、飲めなかった炭酸飲料と、期間限定のお菓子(あさひくんとは違うチョイスの)。
 わたしの家の愛犬、柴犬ハルを撫でながら「え、なに?」と状況が読めない勇太くん。

 わたし、そんなに分かりやすいかな。

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この小説は、小説家になろうで掲載している作品です。
創作大賞2024に応募するためnoteにも掲載していますが、企画が終わり次第、非公開にさせていただきます。

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