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デザイナーと転職エージェントの上手な付き合いかた

じつは最近、転職をしました。

転職先でももちろんプロダクトデザイナーです。

自分の転職の経験談を少しずつnoteに書いていきたいと思います。

このシリーズは、これから転職しようと考えているデザイナーと、それを支える転職エージェントのみなさまに読んでほしい!という思いから執筆することにしました。


デザイナーの転職は独特のノウハウが必要

転職にはいくつかの方法があります。
知人からの紹介、企業のWEBサイトからの応募、転職サイトで検索や転職エージェントを活用するなどが一般的ではないでしょうか。

例えば、行きたい企業が具体的にあって、そこが残念ながら募集を出していないとします。普通ならその時点で諦めるところです。

しかしデザイナーの場合、ポートフォリオ(作品集)をその会社に送り、デザイン部門が「どうしても会いたい」と考えてくれれば、募集していなくても意外と面接までいけたりします。

このように、デザイナーの採用は結構特殊なのです。

ただ、他の職種でもそうであるように、私も基本的には転職エージェントを活用することをおすすめします。WEBには載っていない求人情報を持っているのがその最大の理由です。

しかしその活用には注意が必要です。
それは、彼らはデザイナーの転職のノウハウをそれほど持っていないからです。


デザイナーの転職支援を経験したエージェントは少ない

これは無理がない話です。

日本の労働人口は約6500万人でこの中で転職するのは年に約300万人です。
つまり年に4%の人が転職していることになります。

では、デザイナーはどれぐらい転職しているのでしょうか?

例えば、私はプロダクトデザイナーです。
以前どこかで聞いたのですが、日本のプロダクトデザイナーの総数は約2万人ほどだそうです。
上記の比率を考えると、転職するプロダクトデザイナーは年に数百人程度でしょう。

その中から、転職エージェントサービスを活用している人に絞ると、さらに減ります。また、同じ転職エージェントが何度もプロダクトデザイナーの採用を担当しているとは限りません

つまり、プロダクトデザイナーの転職を何度も経験している転職エージェントなんて、ほとんどいないというのが実情ではないでしょうか?


デザイナーの採用工程の特殊さ

これに加えて、デザイナーの採用工程や基準は特殊です。

他の職種で重視されることがされなかったり、些細なことが採用に影響したりします(このあたりについては別途記事を書きたいと考えています)。他の職種では一般的だとされているノウハウが通用しない部分が多々あります。

しかしこの一方で、転職エージェントにも自分たちには多くの転職者を相手にしてきた自負があります。これが悪い方向に働くと、意味のない就活に時間を割くことになってしまいます。

つまり、なにが言いたいかというと、「転職エージェントをアテにしすぎるとかなり危ない!」ということです。少なくとも2019年1月現在。


エージェントは「たくさん応募しろ」と言うけれど...

具体的に、転職エージェントのミスリードの例をあげます。

デザイナーを扱ったことのない転職エージェントは、最初の面談のときにルーティンで下記のことをあなたに言うでしょう。

「転職は一般的に、内定までに20社程度受けるのが普通です。
 少しでも気になったらすぐに応募してください!」

しかし、私の経験上、転職するプロダクトデザイナーが20社も応募することはまず無理です。

理由は2つ。

理由の1つ目は、 そもそもプロダクトデザイナーの求人数はそんなに無いことです。

例えば今、リクナビNEXTで「プロダクトデザイン」で検索してみました。

結果は9件でした。

しかも、

何故かフォークリフト作業者の求人も引っかかっていました。

フォークリフトを含めてもたった9件です。

プロダクトデザイナーは表に出てこない求人も多いので、この調べ方はちょっと意地悪かもしれません。

それでも「営業」で調べると6880件ですからね。

プロダクトデザイナーの募集人数の少なさがわかります。
エージェントに紹介されたとしても、日本全体でおそらく100件も募集はないでしょう。


理由の2つ目は、自分の方向性が絞り込めていたら、そんな数受けられないからです。

一口に「プロダクトデザイナー」といってもデザインする対象によって必要なスキルや適性が全く違います。

例えば、化粧品のデザインをしてきた人と電車のデザインをしてきた人とでは、これまで研ぎ澄まして取り組んできたものが違う、といえば伝わるでしょうか。

デザイナーの中にはアート寄りなものが得意な人もいれば、公共の役に立つ設計が得意な人もいます。

これまでの経験や感覚を踏まえて、「今までの路線を極めるためにステップアップするのか?」「違う分野にシフトチャレンジするのか?」を整理していなければ、そもそも内定を勝ち取るのは難しいでしょう。

転職は基本的に過去の自分のキャリアに基づく判断になるはずです。
そもそも募集数がないデザイナーで、そんな膨大な数を応募できるということは自分の適性が整理できていないということになります。

自分の感覚としては、おそらく受けたとしても10社以内になると考えます。

もちろん、ありとあらゆる「プロダクトデザイン」と名のつく募集に応募することは可能ですが、それを勧めるということは不幸な転職をつくる原因になると私は考えます。

難しいと思うのは、最近「デザイン」の言葉が示す範囲が増えたことです。それに伴ってデザイナーそれぞれが持つ守備範囲も多様になっています。

転職エージェントの方には、是非「どのようなデザインが得意で、どのような方向に進みたいと思っているのか」を十分にヒアリングしてほしいです。
最初はわからなくてもいいんです。逆に応募者に「それはこういうジャンルなんですか?」と確認するぐらいで良いと思います。

デザイナー同士でも、他のデザイン部門がどのようなことをしているのか知らないことも多々あります。例えばコンサルのデザイン部門とか。会ったこともない。

怖いのは、ミスマッチな求人に時間を消費することです。

私の場合、「人の役に立つ道具を作りたい!」という思いが強いタイプのデザイナーです。

なので、「この会社なら、かっこいいデザインができますよ!」といくら勧められても、全く響きませんでした。

転職活動中に自動車メーカーからスカウトが来たときも、「無理無理無理無理無理!」となってすぐに断りました。
カーデザインは一般的には憧れられる業界ではありますが、これまでの経験から自分が輝く職場はそこではないことを把握していました。もし私が自動車メーカーに入ったら、つらくなってすぐに辞めていたでしょう。


選り好みをしよう

こんなことを言うと、「選り好みしてたら駄目だよ!」と言いたくてムズムズしてしまう人たちがいます。

それも一理あるかもしれません。

しかし私たちデザイナーは専門職です。そして、対象の商材を好きか得意かでデザインをしている人が密集している職種です。

好きで得意な商材をデザインする人たちは夢中になって仕事に取り組んでいるわけです。彼らは当然高いパフォーマンスを発揮しています。

その中に、その商材を好きでも得意でもない人が働くことになってしまったらどうなるでしょうか?絶対にその組織の中で有用な人材にはなれませんし、その企業にとってはブランドを落とすことに繋がります。

むしろ、好きで得意な領域で戦わないと、デザイナーはすぐに排除されてしまう危険性のある職種です

中途採用で転職するデザイナーはこれまでの自分ときちんと向き合って、自分の専門性の方向をきちんと精査することをお勧めします。


まとめ

転職エージェントは最初、「うちはこんなに情報を持っていますよ!」という意味でバサッと情報を渡してきますが、上記の理由からあまり意味がありません。むしろ「この人、デザイナーの転職に詳しくないな」と信用を失う原因になります。

転職エージェント側は、まずは自分が全くわからないにしても求職者に対して十分なヒアリングと方向性の確認をするべきです。

転職するデザイナー側としては転職エージェントに対して、「自分のいま持っている専門性」「今後はどういう企業にいきたいか」を初期の段階でエージェントに伝えることがその後の時間の浪費を防ぐ策だと思います。


今後も、デザイナーの転職についての記事をアップしていきます。特に、ポートフォリオの扱いについては書きたい題材ですねぇ。

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