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【アーカイブ2020】助っ人応援が生んだ絆~滋賀大会・夏跡の便り⑥綾羽

「ブラスバンドの人員が不足しています。連絡頂けないでしょうか」。掲載されたのは去年の10月18日。12年ぶりの近畿大会に臨む綾羽高校のtwitterだった。

奈良県の球場で履正社に大敗を喫した後、監督や選手は悔しさより感謝を口にした。滋賀だけではなく大阪や兵庫からも駆け付けた約20人のブラスバンドは、ナインに勇気と感動を与えていた。

と、ここまでは応援を受けた側の話。実は応援を送った側にもストーリーがある。

校長同士のつながりで中心を担った彦根総合の吹奏楽部は、これまで野球応援をしたことがなかった。手島佳梨顧問によると、綾羽の控え部員が彦根まで応援練習に来たという。「吹奏楽部員も本当に楽しそうだった。次は綾羽の決勝に行きたい」と手島教諭は話すが、宮崎裕也新監督のもとで自校の応援をする日も近そうだ。

一般の参加者にも綾羽と縁のなかった人がいる。ただただ甲子園の応援に憧れていた社会人の男性や、兵庫県に住む女子高校生の姿も。この女子高校生からはこの春、野球部宛てに大きな段ボールが届いた。中には選手全員分のお守りが。ナインの姿に感動し、勇気のお返しとばかりに1人で作ったそうだ。「こんなことがあるのか…」。千代純平監督も驚きと感謝を隠さなかった。

「夏の甲子園に20人を招待しよう」。綾羽ナインが掲げた目標は、大会の中止で叶えることができなかった。それでも綾羽の選手たちは、独自大会初戦のタイブレークで勢いをつかみ、敗れた準決勝まで必死に戦い続けた。

全ての学校に「大会に臨む理由」を聞き続けた特別な夏も残り1日。優勝校にも準優勝校にも、そして大会を支えた全ての人にも、素晴らしい思い出として残ることを期待している。【2020年8月14日掲載】

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