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【アーカイブ2020】いま、ベンチを問う~滋賀大会・夏跡の便り⑤大津商業/河瀬

ベンチ入りが20人に満たないのに、スタンドには選手がいる。こんな奇妙な光景を2回も見た。

1回目は大津商業。19人の3年生全員をベンチに入れ、下級生を1人も入れなかった。監督と選手が対立し、何度もバラバラになったチーム。戦力を1人削ってでも“一体感”を重視し、初戦でシード校の伊香を破った。田中正春監督は「苦しい中で良くやってくれた」と、一度は自身に「不信任」を突きつけた3年生を笑顔でねぎらった。

2回目は河瀬。スタンドにいたのは部員登録を残しながら6月で引退した3年生だった。コロナで先が見えない中でチームを離れた2人。北村優監督は初戦を見に来るよう呼び掛け、試合後には「戻っていいよ」と声を掛けたという。そして次戦、ユニフォーム姿の2人はベンチにいた。滋賀学園に敗れたあと、飯塚舞矢主将は「3年生選手8人がそろった。勝った試合以上に楽しかった」と振り返った。

今大会、選手の入れ替えは試合ごとに認められている。多くの選手がベンチを経験でき好意的な声も多い。ただ、そもそも「ベンチ入り」の概念は必要なのだろうか。声出し要員や伝令、ランナーコーチにブルペンキャッチャー。試合に出なくとも必要な選手はいる。背番号のない選手がその役目を果たせないものか。「ベンチ」と「スタンド」の悲喜こもごもに触れるたび、そう思っている。

選手層の差が如実に出るため、登録選手に人数制限は必要だ。入れ替えを前提にするならば選手は16人ぐらいでよいと思う。一方ベンチにいるだけなら…。レギュレーションも違う特別な大会。様々なベンチを見たからこそ、もう一度あり方を考えたい。【2020年8月11日掲載】

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