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“Uncommon Type” Tom Hanks
ハリウッド俳優のトム・ハンクスによる短編集。
「ハリウッドスターが書いた」という宣伝文句のいらない、というよりそれがむしろ邪魔になるくらいの、素晴らしい一冊だ。海外文学好きには大推薦したい。
今回私が読んだのはアメリカ版のペーパーバックだが、日本語訳はクレスト・ブックスで出ているので、こちらも良書であること間違いない。
特に気に入ったのは以下の3作品。
<Christmas eve 1953>
男は仕事を早めに終え、愛する妻と子供達が待つ家へと急ぐ。今日はクリスマスイブ。家族は和やかに食卓を囲み、平凡で幸せな夜を過ごす。
そして男は子供が寝た後で、ある電話を待つのだが。。。
市井の人々に残る戦争の傷跡を描き、胸に響く。
<A month on Green Street>
離婚し、3人の子供を連れて校外の住宅地に引っ越してきたヒロイン。隣に住むバツイチの大学教授の存在を警戒しながらも、興味はつのっていく。
シングルマザーの心の動きをリアルに描いて面白い。
<Who’s who?>
ブロードウェイでの成功を夢見てニューヨークに出てくるも、厳しい現実に挫けそうなヒロイン。踏んだり蹴ったりな一日に堪えきれず涙が溢れた時に、救い主が現れ。。。
まさに映画のような心地良い作品。浮かび上がる情景も鮮やかで、エンディング曲のストリングスが脳内で演奏されてしまうような読み心地だった。
その他の作品も面白かった。以下にいくつか紹介する。
・意識高い系パワフル女子に振り回される男子を描くドタバタ劇
(Three exhausting weeks)
・映画スターのプロモーション旅行。ハリウッドスターならではの作品
(A Junket in the city of light)
・父と息子のある朝を描く、ほろ苦いボーイズドラマ
(Welcome to Mars)
・タイムトラベリング・ラブストーリー(ラストがシニカル)
(The past is important to us)
・たくましい移民の物語。一番映画的な作品
(Go see Costas)
それぞれが違うテイストを持ち、どれもシンプルなストーリーテリングながら、しっかり読ませる。
その鮮やかな書き分けは、様々な監督の作品で演じてきた俳優ならではだろうか。
I think NYC comes off way better on TV and in the movies, when a taxi is just a whistle away and superheroes save the day. In the real world(ours) every day in Gotham is a little like the Macy’s Thanksgiving Day Parade and a lot like Baggage Claim after a long, crowded flight.
飾りのない語り口に、作者の人間性が表れている。
また、本書ではタイプライターがキーアイテムになっている。タイプライターが好きなのだろうか。
俳優の素顔を感じ、好感度が上がった。
Disappointing your parents is the first thing to do when you come to New York.
It’s a typewriter, child. Ribbon. Oil. Paper. Happy fingers. That’s all it needs.
さらりと書かれる言葉も良かった。
お笑い芸人が小説を書いたり歌手が絵を描いたり。世の中はそのギャップを取り沙汰してびっくりするが、才能というのはそういうものなのだろうと思う。
餅は餅屋と言うけれど、餅が旨い餅屋では、惣菜だって旨いのだ。