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小説

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#怖い本

『フラオ・ローゼンバウムの靴』 大濱普美子

『フラオ・ローゼンバウムの靴』 大濱普美子

さらっと読めてぞわっと怖い短編小説を、今回も一作紹介しようと思う。
大濱普美子のデビュー作品集『たけこのぞう』(『猫の木のある庭』に改題して文庫化されている)に収められている作品だ。

*****

主人公は、ドイツの大学に学んでいる日本人留学生の「私」。
彼女はある日、一足の靴を手に入れる。
アパートの隣の部屋に住んでいたローゼンバウム夫人が亡くなったのだが、その遺言によって、なぜかその靴が彼女

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『そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所』 松浦寿輝

『そこでゆっくりと死んでいきたい気持ちをそそる場所』 松浦寿輝

インパクト大な題名とおしゃれ怖い装丁のこの一冊。
12の短編を3作品ごとにまとめた4部構成になっているが、その各部には例えば次のようなタイトルがついている。

・黄昏の疲れた光の中では凶事が起こる…
・冷たい深夜の孤独は茴香の馥りがする…

これらを読んで惹かれるものを感じる方ならば、本書を読んできっと満足できるはずだ。
期待通りの不気味、暗澹を心ゆくまで堪能できること請け合いである。
(同時に、

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神様ゲーム

神様ゲーム

『神様ゲーム』 麻耶雄嵩

「神様なんかに関わらなきゃよかった。」。。。

物語は主人公の10歳の少年の目線で語られ、言葉も、文章の体裁も児童向け文学のそれである。

しかし。

父親や同級生との子供らしいやりとりに異物が混ざるように、所々で毒々しい描写が顔を出す。
猫を狙った凶悪事件の詳細や、マガジンで連載中の、主人公が「アリを潰すように女生徒を殺しまく」るという漫画。
そして、なんだか禍々しい

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