子育てが上手くなるたった1つのコツ
「言いにくいんだけどね。夫人がイチバン苦手なことを今,させられているからだよ」
1週間前の体とは全く違う,形相をしているわたしの体を診て,パーソナルトレーニングの先生は,わたしに言った。
認めたくないが,わたしは,《わが子》の子育てが苦手。
いや,違う。
子育てなんて,自分の思い通りにいかなくて当たり前。
子育てが苦手なんじゃなくて,「自分の予定通りにいかない,思い通りにならないことがストレッサー(ストレス因)になることが苦手」なのだ。
傍から観たら,わたしの子育ては一見,成功しているように見えるだろう。
だって,わたしは子育て心理学もテリトリーの発達心理学の研究者で,子育て支援もしているから。
でも,待って。
子育て支援なんて,目の前にいる子ども,親をたった1時間の面接時間の時だけ,サポートする存在。
家に帰って,24時間体制で《子育て》する,養育者とは,責任の質が違う。
子育ては,重圧だ。
母親になってよくわかった。
妊娠が分かった時点から,つわり(わたしはなかったけど)に苦しみ,子宮の中で胎児が育ってくるにつれて,胃の位置があがって,常に胃酸が逆流してくる逆流性食道炎になる。
膀胱も押されて頻尿になるし,ホルモンのバランスが崩れて,メンタルはジェットコースターだし,9か月の《人間保育器》の妊娠は拷問だった。
頭のネジが緩んで,物が深く考えられなくなって,仕事もはかどらなくなったが,これも生存戦略の1つだ。
かといって,ツラいばかりではなくて,産まれてくるわが子を24時間,9か月,胎内に宿す経験は,たまらなく面白かった。
だから,3回も妊娠と出産を繰り返した。
そのおかげで,「自分なんて生まれてこなかったらよかった」なんて,スクールカウンセラーだったわたしにカウンセリングに来た子どもたちが言おうものなら,
「お腹の中に赤ちゃんを9か月も宿すのはかなり大変なんだよ。命をかけてお母さんはあなたを生み出してくれたんだよ。それは,あなたへの愛がなければできないことだよ。生まれてくることをあなたは選んだんだよ。生まれてくることを選択しない赤ちゃんもいるんだよ。産んでくれたことだけでもすごいことなんだよ」
わたしは,必ず,そう伝えてきた。
それは紛れもない,母の子どもへの《無償の愛》だから。
でも,《無償の愛》は,《自己犠牲》と表裏一体だ。
特に日本のお母さんは,自己犠牲が強いけれど,これは,世界共通だ。
はっきりいって,今の日本で,子育てをすることは,《子育て罰》だ。
現行の社会支援なんて,焼け石に水。
「わたしたちの頃はなかったわよ」
そういうお母さんもいるかもしれない。
けれど,日本政府の子育て支援費は,経済国の中でも低い。
特に腹が立つのは,1年前の1月,児童手当とは別に,政府から子ども1人につき10万円が給付された「子育て給付金」なんて,年収が960万円を超える養育者が1人でもいれば,もらえない。
不思議なことに養育者の収入を合算する世帯年収ではないので,養育者2人(多くの場合父親母親)が959万円の収入があれば,ひとり親家庭で年収が960万円の家庭よりも収入があるのにもらえ,ひとり親家庭はもらえない,二重課税(累進課税)のパラドックスが起きてしまう。
これは児童手当も同じで,障害を持つ子どもの支援費も,養育者の収入の多寡で打ち切られてしまう。
世界の中でも,親の収入の多寡で子育て支援費が決まるのは,日本ぐらいで,脆弱な子育て支援システムである。
だから,カシコイ日本の女性は産まない。もしくは,産むのを先送りする。
結婚しない,子どもを産まない理由の1つが「収入」であることは,数々のデータで明らかだ。
お金がなければ,結婚も子育てもできない。
そんなことはない。
お金がなければ,「自分たちが満足のいく」結婚も子育てもできないからだ。
経済発展と並行して知能が高くなればなるほど,ヒトは子どもを産まなくなる。
人の発達は,遺伝子と環境の相乗(心理学の専門用語で「輻輳説」)だけど,遺伝子よりも環境子育てコストの方がかかってしまうからだ。
繰り返して言うが,子育ては思い通りにいかないものだ。教育も同じだ。
「東大に入れたママ」「ラクする子育て」なんて,キャッチーな言葉につい踊らされちゃうけど,そんなもん嘘だ。
思い通りにいかなくて当たり前。
そう思っておけば,上手く行ったことがいつも以上に嬉しいし,余計なことに悩まなくなる。
育児のストレスは,意識次第で減らせるのだ。
子育てが上手くいくコツは,たった1つ。
「子育ては思い通りにいかない」ことが当たり前,と思っておく。
これだけだ。
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論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。