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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第16話:診断書を渡される

12月15日 午後5時57分
××クリニック 診察室


 
先生「一応、この内容で良いか、目を通してもらえますか?」

ボク「あの、うつ病以外にもいろいろ書かれてますけど……

先生「可能性のあるものは、記載していますよ」

ボク「え、こんなに可能性があるんですか?」

先生「診察であなたが話されていましたでしょ?」

ボク「あ……」

先生「これを会社に渡すことになりますから、あまり限定しても、ね」

ボク「………………」

先生「で、どうです? 大丈夫ですね?」

ボク「あ、はい、大丈夫です」

先生「………………」
 
 

ボクが一度、診察室を出ると、待合室は大混雑していました。

明らかに、初診で、しかも飛び込みのボクのせいで他の診察が遅れてしまっているようです。

視線を合わさずにらまれているような、そんな周りからの視線が心に刺さるようでとても痛く感じました。

病院としては、この大渋滞を流す必要性があったようですが、ボクの診断書を優先してくれているようで、さらに渋滞が広がってきています。

そして、この人だかりを見て、ようやく、多くの心療内科が急な初診での受け入れを断っていた理由が分かりました。
 

さて、診断書を患者本人に見せるという行為は、病院として正しかったのかどうかは分かりませんが、患者としては、現実を直視せざるを得ないタイミングとなり、かなりキツかったです。

言葉で“うつ病”と言い渡されるのと、文章で“うつ病”と書いたものを見るのとでは、受け取る重みが違います。(さらに、ボクの場合はそれ以外も書いていましたし。)

ただ、先生が言うように、ボクはこの後、これを会社に持って行って休職手続きをするので、前もって診断書に何が書いてあるかを知っていて良かったと思います。

もちろん、こちらとしては、知らない振りをして会社との交渉に挑むわけなのですが。


ちなみに、この診断書は、後に、復職する際に面談した産業医にも渡されることになります。

といっても、ボクの同意の元ではなく、人事の担当が勝手に渡していました。

人事担当は、本人は診断書の中身は見ていないだろうという先入観で、そのような行動をしていたのでしょうが、こちらは、事前に見ています。

診断書のサイズ、書式、文字(先生の手書きだったので)がなんとなくですが記憶に残っており、すぐ分かりました。

先生が事前に診断書を見せたのは、こういったこと予測してのことだったのかもしれません。
 

参考までに、診断書をもらう場合、内容や通っている病院によって異なると思いますが、ボクの場合は、5000円ぐらいのお金が掛かりました。(初診の診察料等を含めると合計で7000円ぐらいでした。)

病院でそんなにお金がかかるとは思ってはいませんでしたし、その当時、ボクは会社をサボって喫茶店とかに通っていたので、おこづかいがスッカラカン。

非常用のお金を持っていたのですが、それは、この病院にタクシーで来たときに使っていました。こんな時に限ってキャッシュカードもクレジットカードもサイフになく、

「ちょっと銀行、行ってきます」

と一度、銀行に行ってお金を下ろす“ふり”をして病院を出ました。

お金、どうしようか……

一階のエレベーターを降りたところで、立ち止まりました。

「この時間だったら、まだ会社に同期がいるかもしれない。にしても一度、会社に行かないといけないか……。ん? そ、そうだ!」

すぐに通勤定期券を解約して、病院に戻り、そのお金で支払いを済ませました。

「どうせ、会社をしばらく休むことになるんだから、これでいいや」

まだ手持ちのお金に余裕があるので、薬の支払いもできそうです。

そして、病院を出る時には、いろんなものを持たされました。ゲームのような感じでいうと、

  「うつ病のパンフレット」を手に入れた!
  「診断書」を手に入れた!
  「処方箋」を手に入れた!
  「領収書」を手に入れた!
  「通勤定期券」を失った!

こんな感じで、うつ病に関しての装備が整いました。

ただし、ゲームと違って、リセットはできませんでしたけど。









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