『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第8話:会社に行けなくなる
12月3日 午前8時7分
某公園 ベンチ
上司「もしもし、あ、今日はどうした?」
ボク「すみません、今日もちょっと体調が悪くて……」
上司「で? “体調悪くて”、なに?」
ボク「あ、はい……。なんとか午後から行ければいいと思ってまして……」
上司「おい、昨日も午後からだったよな?」
ボク「いや、病院はその、すごく混んでいるんですよ」
上司「本当かよ、今日は午後イチから内部レビューだからな!」
ボク「す、すみません。必ず午後には行きますので……」
上司「昨日みたいに、ギリギリじゃ、ダメだからな。病院が終わり次第、すぐに来いよ。あと、早く来てもタイムカードは押すなよ! 早出残業になるからな。迷惑かけてんだから、それぐらい分かるよな?」
ボク「はぁ……」
よくドラマでは見たことがありますが、まさか自分が会社をサボるなんて思っていませんでした。
その日は、朝から、なんとなくだるく感じていました。お酒を飲んでいるわけでもないのに、強い胸焼けがします。この日も胃薬を飲んで、胃がスーッとするのを待って、家を出ます。
玄関を出るところまではいつものままなのですが、そのまま駅に向かうことができません。駅に近づくとともに、足が急に重く感じます。
「?」
いつの間にか、いつもと違う方向に足が向かっています。
「ま、今日は少し歩くか」
余裕を持って家を出ているので、一駅ぐらいであれば、歩いても問題ありません。
そして、駅のホームに着き、驚きました。でも、電車に乗れないのです。
別れた彼女がその車両に乗っているような気まずさ。乗ろうとして、「ハッ」として足が止まって乗れないような感覚でした。
結局、午後の業務開始時間のギリギリ間に合う電車まで、乗ることができませんでした。
普段は、電車の遅延が発生しても遅刻しないよう十分余裕を持って会社に着いていました。それが日を追うごとに、到着が、10分前、5分前、ギリギリとなり、そして、とうとう遅刻するようになりました。
遅刻は連続ではなかったのですが、何度か続いた後、今度は突然、会社へ行くことができなくなります。
でも、家族を心配させたくないという思いがあるので、朝はいつも通りに出ます。
妻に作ってもらったお昼のお弁当と水筒を持って、いつも通りに。
しばらく歩いて、時間を見計らってから、会社に電話。
丸一日休むとも言い出せず、午前中だけ休みをもらいます。
その日、喫茶店で時間をつぶしていました。
ノートパソコンやタブレットで仕事をしているビジネスマンに混じって、ボクはいました。
居心地はとても良かったのですが、何度も喫茶店に通い続けていると、次第にお金がピンチになります。
自分のお小遣いでは喫茶店は厳しくなり、徐々にファーストフード店に行くことが多くなりました。
ファーストフード店は、喫茶店ほど設備が良くありません。
お店だって、何時間も居られては困るでしょう。わざとイスの座り心地を悪くし、エアコンを効かせすぎているのかもしれません。
午後になるまでの数時間、そこにずっといるのは、とても辛かったのですが、それでも、会社にいるよりはずっとマシでした。
そこですら、金銭的に厳しくなってきてしまい、最後は、お金のかからない公園で時間をつぶすようになります。
「はぁ、なにやっているんだろ……」
公園にいると、日によっては雨が降ってきたりします。
最初は、濡れないように、近くのコンビニに入ったりしていましたが、それすら面倒に感じる日もありました。
「こういう姿、子どもや妻に見せられないな」
いまの状態を誰にも見られたくないので、悲痛なその顔を、表情を雨で流すように、そのままベンチで座っていたりもしました。
雨でぬれて、そのまま体が冷えれば、風邪ひいて、それをこじらせれば、楽に……なれる……かな?
午後、一旦、会社に行くと、午前中に休んだ後ろめたさから、なかなか帰ることができません。
その為、翌日も睡眠不足となり、午前中は休み、午後に会社行っては帰れず……この繰り返し。
この時、ボクはもう引き返すことができないところまで来ていました。
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