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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第2話:うっかりが続く

9月9日 午前10時30分
社内 事務所


 
上司「おい、なんだコレ! ほら、日付が違うだろ。先週の日付じゃ提示できないだろ!」

ボク「す、すいません」

上司「一回全部、この提案書、見直しとけよ、まったくよぉ!」

ボク「すいません、分かりました」

……………… ………………

上司「いやいや、だーかーらー、間違ってるんだって!」

ボク「す、すいません」

上司「今度は、見積り。この金額のところ!」

ボク「え、えーっと、あ! すいません」

上司「あのさ、オレとか会社に不満でもあるの?

ボク「いやいや、そんなことは……すいません」


 

 

提案書作成といった事務作業はそれほど苦手ではありませんでした。

むしろ、人見知りの性格なので、人と接する仕事よりも、一人で黙々とやる事務作業の方が大の得意でした。

……でしたが、この頃のボクはミスを頻発しています。もちろん、わざとではありません。

上司に間違いを指摘されると、他にもないかどうか、修正前と修正後の印刷された資料を左右に置き、蛍光ペンを使ってチェック。

一回目は青色の蛍光ペンでチェックし、念のための二回目は赤色の蛍光ペンでチェック。

そうして塗り重なった紫色部分を、最後に黄色の蛍光ペンでチェック。そこまでしても、間違えが減ることはありませんでした。


いままでフツーに一回で出来ていたことを、何度も確認していたので、当然、仕事効率は落ちます。何回も何回もチェックしているうちに、残業も増えました。

周りには

なんで、仕事の成果が全く出ていないのに残業しているのだろう?

と思われている気がして、やがては、家に仕事を持って帰るようになります。

その甲斐は全くなく、うっかりミスは減るどころか、ますます増えていきました。

比較的短期で対応しなければいけないメールの返信は誤字脱字だらけで、特にひどい状態でした。例えば、当時、こんなメールをお客様に出しています。

 

  1) ○×株式会社 山田
  2) 
  3) いつもお世話になります。
  4) 先日の製品について、山田さまはどうでしょうか?
  5) 山田さ、ぜひご希望を和菓子に教えてください。
  6) 
  7) ら異種運なったところでお電話させていただきマス。
  8) それでは引き続きよろしくお願いします。
  9) z

 
一行目は、お客様の敬称をいきなり省いてしまっています。

“オードリー 春日”

みたいな感じになっていますね。でも、春日だって、こんなメールをもらったら、たぶん怒るんじゃないでしょうか。

五行目では、もうお客様と友達になっています。「おまえさ」みたいな感覚で。
さらに、“和菓子”は“私”の誤変換。

七行目は“来週”が“ら異種運”と誤変換されています。文末もなぜかカタカナですし。

最終行では意味不明の“z”がポツンと。水木一郎でもこんなことしないでしょう。
 

思い返すと、当時のウィークディは次のような感じで“うっかり”が炸裂でした。

  朝: うっかり寝過ごす
  通勤:うっかり電車で乗り過ごす
  午前:うっかりチェック漏れをする
  午後:うっかり仕事中に居眠りをする
  夜: うっかり終電を逃す

この“うっかり”の多さは、とても正常ではありません。

当初、うっかりの原因は“忙しさ”だと思っていました。

いつか“忙しさ”のピークは過ぎるだろうと期待していたものの、さすがはIT業界。

一向に減少しません。

そして、目の前の仕事をミスなくこなすことが精一杯となり、何も考える余裕は全くなくなりました。
 
あの時、“うっかり”を正すのではなく、その原因を探り続けていれば。一人でムリなら誰かと一緒に追求し続けていれば……と、いまはとても後悔しています。







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