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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第43話:主治医との接し方

3月10日午後4時41分
××クリニック診察室


 
先生「では、連休明けで仕事に戻りましょう」

ボク「いろいろとありがとうございました」

先生「ただし、復職するその日に、通院してください」

ボク「はい」

先生「あと、今回の復職ですが、無理だと感じたら、治療に専念するようにしてください」

ボク「え、それはどういうことですか?」

先生「また、しばらく休んで治療に専念してください」

ボク「いや、それは……」

先生「そもそも、ここに来た日に、倒れて、命に危険が迫ったでしょ?

ボク「確かに、それはそうですが……」

先生「うつ病で再度休職する人は多いので、そんなのは普通のことですし、全く気にしなくてもいいんですよ」


 

結論から先に言うと、ボクは、復職に失敗します。
 
治療の初期から、「とにかく復職したい!」という気持ちが強くありました。

現実的な話、休職により収入が入らなくなってようやく気付いたのですが、生きていくことがかなり難しい経済状況に陥りました。

これは、本当に切実な問題でして、通院の回数を減らしたり、薬がまだあることにしたり、とにかく、自分のことが原因でかかる費用を極力削減知るしかなかったです。

パワハラ上司や、カスハラのヤツを本気で訴えて、賠償金を請求することも考えていたりしました。

ただ、弁護士に相談する費用すらなく、ネットで調べては挫けて、本当につらい日々でした。

それを一気に解消するには、復職しかなかったんです。


なので、診察の度に、“いつ”復職できるかを具体的に聞いていました。

しかし、先生は、“いずれ”とか“近いうちに”という感じで返してきます。

休職中のある日、

先生、どこか目標を、仮にでも決めてくれないと、治療に専念できないんです!

と詰め寄りました。

先生は、机の上にあった卓上カレンダーをめくり、

「では、とりあえず、この日で設定してみましょう。ただ、これは一般的にはかなり早い段階での職場復帰です。また治療の進行具合で、その日を変更しますので、あくまでも“仮”ということですよ」

この“仮”に設定した日程が、ボクの復職の日となりました。(産業医のアドバイス等を考慮して、実際には数日遅れましたが。)


予告されたその日になんとしても復職したかったので、その日以降、少々、具合が悪くても、ウソを押し通すことが何度かありました。


「今日は顔色が悪く、会話のやり取りも、あまり元気がないですね?」

「ちょっとカゼ引いているだけですので、そのせいだと思います」

「うーん、しかし……」

「カゼなんですから、顔色悪いですし、声も出しにくいんです!」


こんなウソを言っても、誰も得しないのに、それでも、予定通りに復職したいという希望にすがって生きていたので仕方ありません。

そして、不思議とこのあと、本当にカゼを引いてしまいます。自分でも、言っていることがウソかホントか分からなくなっていました。

でも、先生には、きっと見抜かれていたのだと思います。

 
そんな感じでムリに復職したこともあって、復職後、ボクの通院間隔は短くなり、回数も増えました。さらに、一回の診察時間も長くなりました。

「じゃあ、そろそろ時間なので……」

と先生から、毎回切り上げられます。どうしても、話し足りない気持ちもあ
って、

「カウンセリングとか、受けた方がいいのでしょうか?」

「うーん。その……カウンセリングで治癒できるかというと、ちょっと違うというか……」

診察では、中途半端な時間しか診てもらえず、カウンセリングを受けたいといったら拒まれ、怒りがピークに達しました。

「じゃあ、ドシタライデスカ!

怒りすぎて、カタコトな日本語になっても、慣れている先生、そこはスルーします。

「やはり、休養時間が短かったんだと思います」

「え……」

「今日は薬で少し調整しましょう。それで、もう少し様子を見ても無理だったら、休養して、治療に専念しましょう」

(そ、そんな……)


目の前が真っ暗になるとは、こういった状況なんだなと体感しました。

「もし良ければ、待合室で少し落ち着くまで休憩していってくださいね」

何も言えず、振り返ることもできず、診察室を出ました。

「あ、カバン忘れていますよ!」

「………………」


先生に待合室までカバンを持って来てもらって、イスに腰掛けます。体が重く、少しも動くことができませんでした。









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