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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第44話:リワークプログラムの参加を考える



3月11日午前10時57分
自宅リビング


 
ボク「もしもし、あの、そちらでリワークプログラムというのがありますよね?」

受付「はい」

ボク「申し込みたいのですが……」

受付「ありがとうございます。失礼ですが、ご家族ですか?人事ご担当者様の方ですか?」

ボク「え?いや、本人です」

受付「すみません、“ご本人”というのはどういう、その、アレなんでしょうか?

ボク「?」

受付「失礼しました。リワークプログラムに参加希望のご本人ということですよね?」

ボク「……はい」

受付「では、いま空いているのは、二ヶ月後の開催ですと若干名空きがあります」

ボク「え!そ、そんなに先なんですか?!
 


 
復職が近づくと、通常の社会人生活に戻ることができるかどうか、とても不安でした。

いきなりのブッツケ本番は、とても抵抗があったので、何か対策がないかと、インターネットで調査。すると、“リワークプログラム”というのがあることを発見しました。

リワーク(再び働く)のプログラムは、復職を間近に控えているボクにとって非常に魅力的で、それを受けなければ復職が失敗するように感じてしまいました。


インターネットで探して、さっそく電話したものの、どこも予約で満席状態。

数ヶ月先まで予約が一杯のところばかりです。

受けることができないと、余計受けたくなるものです。

しかし、復職する来週以降にリワークプログラムを受けても意味がないので、通院時に先生から紹介してもらうことにしました。

「リワークプログラムってありますよね?ボクも復職前に受けたいのですが……」

「復職に向けての状態が良いので、どうしても受けたいのですか?」

「どこか、紹介してくれないでしょうか?」

「これといって、提携しているところはないので、ご自身で探すか、役所に聞いてみては?」


なんとなく先生は積極的には勧めてくれませんでした。

仕方ないので、産業医の先生を頼って、聞いてみました。

「リワークプログラム、先生はどう思います?」

「会社によっては、推進しているところはあるかな」

え、会社が推進するのですか?

「そう、復職前に行ってきなさいってね」

「ボクは、特に会社から言われていませんけど……」

それを聞くと先生は笑い出しました。
「そりゃそうでしょ、ボク自身がお勧めしてないんだから。そもそも、なんで、会社が推進しているか、分かる?」

「え、いや、どうしてなんでしょうか?」


しばらく沈黙が続きます。

責任を取りたくないから

「え?“責任”、ですか?」

「復職しても、うつ病って、再発・再休職する可能性が高くてね。で、会社や人事は、その時の言い訳として、リワークプログラムを受けさせたのにダメだったって言うんだな」

(そっかぁ)

「別に、リワークプログラムが悪いということでもないんだけど、そういう使われ方を分かっていて運営しているところもあるだよね」

「いろんなところがあるんですね」

「ただし……」


先生から急に笑顔が消えました。

「ただし、あなたの場合は、上司がアレでしょ?」

「アレ?」

「まぁ、なんというか、個人的な見解で、こういう言い方は良くないかもしれませんけど、社会不適合な、残念な人というか……」

「え?」

こんな感じで、この先生、ちょっとうれしくなることたまにいうんです。

「まぁ、大人の言い方だと相性がすごく悪いでしょ?それがうつ病の原因だったし。復職後、その関係性が再開するだろうからね、そこをどうしていくかが、重要だね」

「た、確かにそうですね」

「そういう個人的なのは、リワークプログラムのカリキュラムにはないでしょ?また、リワークプログラムは、学校の授業のように一定の共有カリキュラムで構成されていてね。算数がすごくできる人と、そうでない人がクラスに入る場合、標準に合わせて授業するしかない。そりゃ、それぞれの症状に合わせたものをするのが一番だけど、そうすると、集まった人数分、対応する人も必要になるし、運営するのは大変なわけ」
 
主治医の先生がリワークプログラムに消極的だった理由もなんとなく分かりました。

結局、ボクはリワークプログラムを受けずに職場復帰することにしました。









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