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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第15話:診断が下される
12月15日 午後4時27分
××クリニック 診察室
先生「いろいろと辛かったことを話してくれてありがとうございます」
ボク「はい……」
先生「では、診察の結果をお伝えします」
ボク「………………」
先生「うつ病です」
ボク「………………(うつ病? ウ、ウソだろ……?)」
先生「大丈夫、今日から治療をしていきましょう」
ボク「……はぁ」
先生「あと、速やかに仕事を休んで治療に専念してください」
ボク「え、会社に行ってはいけないんですか?」
先生「何言ってるんだ! 今日みたいなことがあったら、次は本当に命に関わりますよ!!」
先生からの宣告は、意外でした。しかし、診察を受けていた自分の様子を振り返ってみると、受入れやすいものでもありました。
インターネットなどで調べているうちに、なんとなく自分は“心の病”になっていて、それを世の中は、“心のカゼ”とも呼ばれる“うつ病”なんだろうなと心のどこかで気付いていたのだと思います。
だけど、それを認めてしまうと、心が折れるというか、自分がどこかに行ってしまう気がして、なかなかできなかったのです。
ボクは、診察中に、涙が止まらなくなり、診断として“うつ病”と言われても、まだ会社に行こうとしていました。
それは、やはり、その段階でもまだ認めたくない自分がいたのかもしれません。この病院の先生は、とても口調が穏やかでやさしく、声を荒げることはありませんでした。
その先生が怒ったのだから、ボクはよっぽど間違った行動しようと思っていたのでしょうね。
ボーッとしていたら、先生が声をかけてきました。
「これからすぐにやらなければいけないこと、分かりますか?」
「治療ですか?」
首を振って、先生はパンフレットを手渡しました。
「これから、自分でうつ病であることをご家族や会社に伝えないといけないんです」
「………………」
「そのパンフレットには、うつ病について基本的なことが全て書かれています」
先生にうつ病と言われても、実感があまりなかったのですが、このパンフレットを受け取って、はじめて自分がうつ病だと実感しました。
数ページのパンフレットでしたが、当時のボクにはとてもとても重く感じました。
「では、これから診断書を書きますので、待合室で一度待っていてもらえますか? 他の方の診察もあるので、一時間ぐらいで診断書を渡せると思います。その間、ご家族や職場に連絡をとるのであれば、受付に一言告げて外出してください」
待合室で、腰掛けると、もう立つことはできませんでした。気力、体力ともに尽きたようです。
「あの……落としましたよ」
見上げると、かけている赤いメガネとは対照的の、吸い込まれてしまいそうな黒い髪の女性がいました。
「これ、落としましたよ」
何かを黙って受け取りました。その時は、「ありがとう」の一言も伝える気力はありませんでした。
受け取ったのは、先ほど先生からもらったパンフレットでした。こんな大切なものを落として気付かないなんて。
結局、ボーッとそのパンフレットを見ているだけで、一時間が過ぎました。
「これは夢なんだろ? だったら、早く覚めてくれ!」
何度もそう思ったのですが、残念ながら、覚めることはありませんでした。
そして、そのまま現実を受け止めるしかない、その証である診断書をこの後、受け取ることになります。
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