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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第13話:周りの目が突き刺さる

12月15日 午後3時44分
××クリニック 待合室


 
ボク(なーんか見られているような気がするんだよなぁ。気のせいかなぁ)

ボク(うわ、あの人、すっごくきれいだなぁ。でも、でも、ここに来ているってことは、そういう病気なんだよな、うーん)

ボク(あれ、あの人、サラリーマンだよな、きっと)

ボク(え、いま出て来た人、泣いてる? 診察して、泣くってどういうこと? バカか?

ボク(なんか、受付の人と、もめてるよ)

ボク(あのおじさん、さっきからこっち見てるよ

おじさん「あの……」

ボク「は、はい!」

おじさん「その本、読みたいんだけど」

ボク「どどど、どうぞ!」


 
 
心療内科に通院していて、最も気になって、すっごくイヤだと感じたのが、周りの視線です。そういう自分だって、周りの様子がジロジロと気にしているのですが。

通院して最初の頃、待合室で、ついつい、周りにどのような人が来ているのかを見てしまいます。

それを知ったところで、自分の病状は良くも悪くもならないのですが、それでも見てしまいます。

なぜ、そのような行動をしてしまうかというと、ボクの場合は、“自分よりも症状が悪い人を見つけて安心したいから”だったように思います。(通院し、症状が良くなっていくと、あまり周りの視線は気にならなくなりますし、自分自身も周りを気にならないようになっていくのですが。)

うつ病という病気は、治療してもなかなか良くなりません

なので、治療初期において、安心することは一切なく、不安ばかりが蓄積していきます。

カゼのように、薬を飲んだら、咳が少し止まってきて、鼻水が垂れなくなってきて、熱も下がる、そんな回復を感じることができればいいのですが、“心のカゼ”と言われるのに、カゼの回復とは全く異なるのです。
 
通院して分かったのですが、心療内科では、暗黙のルールみたいなのがありました。

 1)あまり他の患者を見てはいけない
 2)他の患者に話しかけてはいけない
 3)診察が終わったら、会計前のイスに座る

初日のボクはこの三つのうち、一つも守ることができませんでした。
 
この日、ボクは病院に入るなり、緊張でやらかしてしまったのですが、次第に落ち着いて来ました。その途端、周りの患者の視線がすごく自分に突き刺さっていることに気付きます。

それは、「相当病状の悪いヤツが来た。今度は何をしでかすか分からない」という警戒された視線だったように思います。(その証拠に、オシッコから戻ってきたら、ボクの周りに座っていた患者全員がいつの間にか離れた場所に移っていましたから。)

理由は明白。

スーツ姿で、明らかにさっきまで仕事してきた風情の男(ボクですが)が、徳永英明のモノマネで意味不明なことを言い出したかと思えば、やたら水を飲む。
ウォーターサーバを空っぽにするぐらい飲みまくる。
そしてトイレに行ったり来たり。
診察室の扉が開くたびに、その近辺を行き来しチラ見して、十何回のチラ見の果てに「何か白い物」(これは白衣姿の先生でした)を発見したら、ほくそ笑みながら、自分の席に戻りガッツポーズ

ボクだって、そういう人を病院で目の当たりにしたら、絶対に気になって仕方ないでしょうね。

一方的に見られているボクだって、周りの患者が気になります。ただ、通院初日ということもあり、他の患者のように“さりげなく”見ることはできませんでした。

その結果、露骨に周りを観察しているのがバレて、何人かの患者と目が合ってしまいます。気まずく、目の前にあった本棚から雑誌を取り出し、それを読んでいる振りをして、ページをめくるその瞬間、周りをチラ見していました。(言っちゃなんですが、これは相当高度なワザです。
 
そして、とうとう運命の瞬間、ボクの人生が終わる瞬間が唐突にやってきたのでした。

「では、次の方、診察室にどうぞ」

この扉の先に、どんな運命が待っているか、その時はほとんど気にしていませんでした。

あ、オシッコいっておけばよかったかな」

ってぐらいにしか頭で考えていませんでしたから。










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