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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第11話:予約ができない

12月15日 午前11時26分

オフィス街 某病院

 

ボク「す、すみません。初診なんですが……」

受付「え? あ、あの、ご予約されています?」

ボク「い、いや……」

受付「予約なしで、直接、いらっしゃったんですか?」

ボク「あ、はい」

受付「……申し訳ありません、初診の方は事前にご予約お願いしているんです」

ボク「あ、じゃあ、いま予約します。何時ごろ来ればいいですかね?」

受付「いま予約されても、かなり先……そうですね、三週間後の金曜日以降であれば……」

ボク「いくらでも待つのは構いません。だから、今日、診察してもらえないでしょうか?」

受付「申し訳ありません。他のご予約の方がいらっしゃいますので」

ボク「そうですか、じゃあ、結構です!」

 

 

んだよ、口コミと全然違うじゃねーかよ!!

病院を出て、心の中で叫びました。

「口コミのナンバー1だけあって、患者が殺到しているんだろうけど、調子に乗るなよ!

仕方ないので、口コミランキング・ナンバー2の病院へ。今度は電話で予約します。

「あ、もしもし、初診の予約したいのですが……」

「はい、こんにちは。それではご希望の時間帯ありますか?」

今度は、なかなか良い感じだ。

「今日は、時間がありますので、何時でも大丈夫です」

「申し訳ありません、初診の方の予約は当日受付していないんですね」

あれ、なんだ、この展開……。

「いくらでも待つのは構わないんですが……」

「申し訳ありません」

「はぁ、じゃあ、結構です。……んだよ、この病院!」

最後のセリフはワザと聞こえるようにして、電話を切りました。

うーん、仕方がありません、次は口コミランキング・ナンバー3の病院に電話です。

しかし、ナンバー3もダメだし、ナンバー4もダメ。ナンバー10を過ぎたあたりから、電話勧誘のお仕事をされている方の気持ちが少しずつ分かってきました。

口コミの評判がないところはおろか、口コミが悪いところですら、診察の予約ができません。仕方なく、一駅離れたところに範囲を拡大して、電話をしました。

結果は変わらず。さらに、二駅、三駅離れたところでも、ダメでした。

心療内科で新規の予約をするのがこんなにも大変だとは思っていませんでした。

ど、どうしよう……

右手にスマホを持って見つめているのですが、焦点が定まりません。

不安で体が震えそうです。いや、ホントに震え出しました。……が、よく見たら、スマホの振動でした。

「あ、もしもし?」

「あの、先ほどお電話いただいた××クリニックですが……」

「あ、どうも(なんだよ、いまさら!)」

「本日、初診予約でキャンセルがあり、15分後ですが、いらっしゃることできますか?」

「はははは、はい!」

病院の予約ができただけなのに、こんなにうれしいと感じるとは……。

電車では15分後に着きそうもなかったので、すぐにタクシーを捕まえ、その病院に向かうことにしました。

「どちらまで」

とにかく、すぐに発車して!

なんだかちょっと刑事気分です。

「えー、本日はご乗車ありがとうございました。本日の運転……」

うるさい!

その運転手は、その後、ボクへ話しかけなくなりましたが、

「右折しまーす」

「信号渉りまーす」

運転中の点呼はやめませんでした。

 

とても丁寧な運転手のせいで……コホン、いや、おかげで、時間ギリギリでの病院の到着となりました。

さっきまでは刑事気分でしたが、病院が近づくと、「ご主人、もうすぐ子どもが生まれそうです!」との連絡を受け、駆けつける父親の気分に変わっていきました。 










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