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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第21話:家族にうつのことを言い出せない

12月15日 午後8時30分
自宅 リビング


 
妻「?」

ボク「………………」

妻「え、なになに? 何かサプライズのプレゼント?」

ボク「い、いやそうじゃなくて……」

妻「変なの」

ボク「………………

妻「じゃあ、ご飯食べよ」

ボク「う、うん……」

妻「遅かったから、子どもは先に食べたよ」

ボク「そう」
 

 
 
帰って、やはり言い出せませんでした。

当初計画していた、帰宅直後の

「うつ病になっちゃっただいま!」

「あー、疲れたぁ。だって、今日はうつ病になっちゃったんだもん」

のいずれも言い出さないまま、いま、ボクはリビングのイスに座っています。

言えずにモジモジしていたら、“サプライズのプレゼント”(確かに、“サプライズ”までは合っているのですが。)と誤解され、さらに言えない雰囲気になっていきました。

結局、いつまで経っても、ボクの食事が終わらず、なぜか水分だけは飲んでも飲んでも足りず、ひたすらお茶のおかわりをしていました。

「ごはん、おいしくなかった?」

少しずつ妻との間の空気が悪くなってきました。

当時、妻は、ボクがうつ病になっているなんて思っていなかったでしょうから、仕方ありません。

たとえ、うつ病になっていると予感していたとして、

「ねえ、元気ないよ。もしかしてぇー、うつ病なんじゃない!?」
「お、よく分かったなぁ」
「なーんだ、そうだったのかぁ!」
「うん、そうなんだ、アハハ」

っていう展開は通常あり得ないでしょう。(そうだったら、とても楽なんですが。
 

この時、ボクがうつ病のことを、家族に言えなかったのは、二つ理由があります。

一つは、家族を不安にさせてしまうから。

もう一つは、後悔というか後ろめたさというか、自分の不安がさらに増大してしまう気がしてならなかったから、この二つでした。

帰ってきたら、妻も子どももとても幸せそうでした。

それを目の当たりにしてしまい、ここで壊すようなことを言ってもいいのかと、まず躊躇しまいました。

さらに、うつ病と告げた後、家族から、次の質問をされたらどうしようという不安もありました。

「うつ病ってどういう病気なの?」

「うつ病って、いつ治るの?」

「どうして、うつ病になったの?」

「会社は、どうするの?」

「昨日、子ども用のシュークリーム、勝手に黙って食べたでしょ? それはうつ病だから?」

いずれも、自分の中でも不安に感じていることで、まだ回答が出ていない質問でした。(最後の質問は違いますけど。)

逆に言うと、それをきっちりと明確に回答できない病気がうつ病なんだと思います。
 
ボクは、この日の夜から薬を飲まないといけません。

そうすると、どんどん告げなければいけない制限時間は残り少なくなってきます。

「子どもがお風呂に入って、妻と二人っきりになってからがチャンスだ!」

と思っていたら、この日に限って、なかなか子どもがお風呂に入ってくれません。
 
子どもに “お風呂にさっさと入れよ”視線を送っても、全く感じず、逆に、目が合った子どもはボクに笑顔を返してくるので、余計切なくなります。

どうにもこうにも言いたいことが言えない状況でとうとうボクがイライラしはじめてきたころ、うつ病を告げるタイミングが、意外な形で、しかも急に訪れてしまいます。











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