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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第49話:会社からの評価

4月1日午前9時17分
社内事務所


 
ボク「あ、そうだ、今日は定期の昇進・昇格の発令の日だったけ」

ボク「えーっと……」

ボク「そっか、やっぱり異動はムリだったか……」

ボク「お、同期が出世してる!」

ボク「こいつと、こいつと……、みんなすごいなぁ」

ボク「!」

ボク「ってことは、自分以外の同期が出世したのか……」

ボク「………………」

ボク(なんか、取り残されたなぁ

ボク「あ、でも定期の昇給はどうだろ?」

ボク「……はぁ」
 

 
長期間、会社を休む理由としては、いくつかあります。

出産や育児、介護はよく耳にします。ケガの場合だってあるでしょう。


ボクの場合は、うつ病。それで、長期間、会社を休みました。

仕事復帰してからは、一生懸命頑張りました。でも、どんなに頑張っても、休む前のように働けません。

復帰当初は、定刻になると疲れがドッと押し寄せて、急に具合が悪くなっていました。

そして、そのまま心療内科に直行していました。

再び休職するように、医師から勧められたこともありましたが、その度に拒んで、結果、飲む薬がどんどん増えてきました。それでも、仕事を続けていました。


そこまで頑張り続けたのは、自分の中では、

こんだけ頑張っているんだから、次の昇進・昇格は、評価されるだろう

という期待があったのだと思います。また、ずっと心配かけ続けている家族に、

出世して、妻や子どもに喜んでもらいたいな

といった想いもありました。


しかし、結果は無残でした。


ビジネスは結果が全てなので、うつ病で長期休み、周りに迷惑を掛けたことも自分が一番分かっています。

復帰後も、簡単な仕事ですら満足にこなせていないことも、理解しています。

なのですが、この現実をどうしても受入れることができませんでした。

 
その日の午後、昇進した同期と廊下で偶然会いました。

「おめでとう」

この時、ボクは腹の中で嫉妬していました。同期で一番の親友だったのに、素直にお祝いの一言も言えないなんて……。

「そういうの、やめろよな」

彼は、ボクの肩をグーでギュッと押して、すれ違って行きました。

 
発令後、一週間ぐらい経ってもあまり仕事に身が入っていないボクは、次長から呼ばれ、会議室に向かいました。

「実は、病気になるまで仕事に打ち込んだという点は評価されていたんだけど……」

そういった評価をされていたのかと少しだけ安心しました。

「で、いまから言うのは独り言だからな。“なんで障害者を出世させるんだ。真面目に働いている者が報われないなんてかわいそうだ”という意見もあってな。でもな、時間が掛かっても、絶対に見返してやろうな」


うつ病のボクがそれを聞いた時、どう感じたか分かりますか?


憤慨したでしょうか?

悲しんだでしょうか?


いずれも違います。

「やっぱ、そうだよな」

そう簡単に受入れることができました。


これについては、差別とかいろいろな意見があるかと思いますが、でも、それが現実なのです。

この経験から、評価は“会社”と“人”の二面性があり、“会社”の評価だけが全てではないということが分かりました。

ボクの場合は、数えるぐらいしかいないかも知れないけど“人”には評価されているんだなって感じました。(医師に転職を勧められましたが、思い止まった理由の一つはこのことでした。)


あの時、同期の彼がグーで伝えたかったのは、きっとそういうことだったと思います。












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