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【現代詩】『純潔』2020とくしま文学賞佳作

『純潔』赤黄緑紫

母が死んでしまうその前に
甘い苺を食べさせてあげたい
産んで育てて泣いてもくれた
母の最期に
汗と苦労を拭い去る
真っ赤にして純白の
ートライアングルー
苺を添えたい

母は笑う
私を忘れた遠い瞳に
遠慮もなく皺を寄せ
こんなにも嬉しそうにした事が、ねえ
他にもあったでしょうか
親戚や親しかった友人皆を
波打ち際に駆り立てて
問い詰めたくなる砕けた笑顔に
いくらあやせど見られなかった
あどけない表情で

ーー今、世界を
まるごと無視する
苺の美味しさだけを
「がぶり」噛み締めるーー
赤い飛沫を垂れ流し√
母が私と他人になった


あかきみどりむらさき
2020ねん

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