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ミライのキャリア 第5章 資格

この文章は、ミライのキャリア#25” 資格とは?”〜#28”資格は役に立つか”を加筆し再構成したものです。

(1)資格とは?

【Caol】前章の起業編、繰り返し「専門性」という言葉が出てきましたが、専門のもっともわかりやすい形が資格ですね。医師免許を持っていれば医師で、医療の専門家です。えりなさんは、資格についてどんなイメージを持っています?

【えりな】専門性を証明するもの、というイメージですね!

国家資格の種類


【Caol】あと、就職や転職でのキャリアアップ、独立起業につながるのが資格、というイメージもありますよね。で、例えば、国家資格ってありますよね。えりなさん、あれ、何種類くらいあるか知っています?

【えりな】え〜、どれくらいだろ。100種類くらい?

【ホリデー】そんなあるかな〜。

【Caol】なんとその数、313種類あります。

【ホリデー】そんなにあるんだ〜〜!

【Caol】世の中にはいろ〜んな仕事があって、いろ〜んな資格がある、ってことですね。じゃあ、そんな資格をどうとらえればいいのか。そのために今回は2つの物差しで資格を見ていきます。

独占資格↔︎スキルの証明 資格を見る2つの視点

【Caol】まず1つめの物差しは独占資格かスキルの証明か、というものです。
 独占資格というのは、資格取得=職業選択となる高度な専門家となる資格、もう一方はスキルや学習の証明になる資格。この物差しで見ると、資格はこの2種類に分類される、というわけではなく、この中間にあたるものもあります。

【ホリデー】ほ〜、なるほど。

【えりな】資格と言っても色々あるんですね。

【Caol】ではこの独占↔︎スキルの証明という物差しで、資格を分けてみますね。
 まず、独占資格にあたるのは、資格取得=職業選択となる高度な専門家となる資格、これは医師や弁護士ですね。法的には業務独占と名称独占があるもの。

【ホリデー】独占、って自分のやることを職業として独占できる、って意味ってことですかね?

【Caol】そうですね。資格を持っていない人がやってはいけない、やると法に基づき処罰されるというのが、業務独占です。医師免許を持っていない人が手術してはいけない、というもの。起業するときにお世話になる税理士さんは業務独占です。

【えりな】資格をもって初めて仕事の肩書きを名乗る…みんなが憧れるやつだー!

名称独占のみの資格・設置義務資格

【Caol】独占資格に近いのは、名称独占のみの資格または、設置義務資格。
 名称独占というものは資格を持っていないものが勝手にその名称を名乗れないというもの。保育士などです。業務独占ではないんだけれど、だいたいは、資格がないと採用がない、ほぼできないものがほとんど。
 設置義務資格というのは、特定の事業をおこなう際に、事務所や会社に必ず資格持ちがいなければならない、という資格で、宅建こと宅地建物取引士がそれ。

【ホリデー】あ、僕、「食品衛生責任者」の資格持っていますけど、これは設置義務資格、ってやつですかね?

【Caol】そうですね。

【えりな】ホリデーさん、なんでそんなの持っているんですかw

【ホリデー】うちの会社、なぜかキッチンカー事業やっている不思議なデザイン会社でwそれで取る必要がありましてw

【えりな】なにやっているのですかwお弁当売っているデザイン会社って、なかなかないですよね。

【ホリデー】ぜひ、食べに来てね〜!

スキルや学習の証明になる資格

【Caol】2つ目の、スキルや学習の証明になる資格。
 これは、法的には「技能検定」というもので、特定の仕事のスキルを検定し、証明として資格をだすものです。ファイナンシャルプランナーなどがこれ。唯一のデザイン系国家資格「ウェブデザイン技能士」もそうですね。

【ホリデー】そんなのあるんだ。全然知らなかったw

【Caol】正直、キャリアによっては、持っていた方がいい資格ですが、なくてもその業務ができます。つまり、キャリアアップや転職の際に有利にはなるが、なくても困らない資格。

【ホリデー】デザイン系の資格かぁ、考えた事もなかったな。確かになくても特に困らないですね。

【えりな】ホリデーさんほどの人が考えたこともなかったって、ほんとなくてもいいってことですもんね…ちなみに話し上手を証明する資格ってないんですよ…

【Caol】別の物差しは、独立、起業ができるものか、組織に必要なものか、ですね。設置義務資格の全ては組織に必要なもので、独立起業には向かないもの。

【ホリデー】ん?独立起業に向かないんですか?

【Caol】だって、ホリデーさん持っている「食品衛生責任者」あっても、それだけを根拠に独立します、って無理でしょ?その組織の誰かが持ってればいいわけだし。

【ホリデー】たしかに〜。

【Caol】この物差しで見ると、医療だと、理学療法士、作業療法士は組織に必要な資格で、やることはすごく似ているのですが、柔道整復師は独立起業ができるものになります。

【ホリデー】てか、柔道整復師なる資格があるんだ。柔道整体って、そんな市民権あるんですかね?

【えりな】聞いたことないです〜。

【Caol】いわゆる接骨院の先生ですね。医師がいなくてもけがの治療、リハビリができる、医師の業務独占である医療行為の一部ができる資格です。名前が似ていますが、整体師やマッサージの人とは違います。整体師と区別するために「整復師」という名前にして、名称独占しています。

やばい人を見つける資格

【Caol】非常に単純化した見方ですが、資格取得がたいへんな資格ほど、キャリアには役に立つ、といえます。とはいえ「なんでこんな簡単な資格試験があるんだろう」というものにも別の意義があったりします。

【えりな】ほほ〜。なんでしょう。

【Caol】例えば、危険物取扱責任者という資格は、義務教育を終わっていればだれでも受けられますし、実業高校では在学中に取得が奨励されています。高校生が1週間くらいまじめに講習会を受けて勉強すれば取得できるものです。
 で、なんで、これがあるかというと、これに落ちるやばい人をみつけるため、という説明を聞いて実に納得しました。そういう人は危険物を扱ってはいけない、ということですね。

【ホリデー】なるほど。マイナスを炙り出す、みたいな考え方なのか。えりなちゃん、大丈夫?受かる?

【えりな】ホリデーさんの私の印象ってどんなんですか!やめてくださいよwまあでも考えてみれば資格って難しければいいってわけじゃないですよね。そういう目的もあるのか〜

【Caol】今、私が持っている資格は「公認心理師」という独占資格にちかいもので、独立開業が可能なものです。

(2)士業の実際

【えりな】今回は士業の実際編ということで、公認心理師の資格を持つCaol先生に資格を持って働く人の実際のあれこれを聞いていこうと思います。
  この士業というのは、弁護士さんとか薬剤師さんみたいに資格とか職業に「~士」や「~師」がつくプロフェッショナルな仕事のことです。

公認心理師の仕事

【えりな】じゃあまず、Caol先生の持つ資格、公認心理師って、どういうお仕事ですか?

【Caol】公認心理師とは心理臨床という業務をおこなう資格です。国家資格で公認心理師法という法律では、
(1)心理に関する支援を要する者の心理状態を観察し、その結果を分析すること。
(2)心理に関する支援を要する者に対し、その心理に関する相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
(3)心理に関する支援を要する者の関係者に対し、その相談に応じ、助言、指導その他の援助を行うこと。
(4)心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと。 
 の4つの臨床心理業務を行うものとされています。この臨床心理という仕事、具体的には何?っていうと、いわゆるカウンセリングですね。これはお話をして心のケアをするという仕事。法律の文言だと(2)~(4)がそう。あと、性格検査や知能検査などの心理検査を行うこと。これはその人のメンタルケアをするためにアセスメント調査をしましょうという仕事、これは(1)がそうです。

【えりな】もうなんかわかった気がしますね。

【ホリデー】人の心を扱うって言う仕事にも国家資格があるんですね。

【Caol】そうなんですよ。

【えりな】心のプロフェッショナルみたいなイメージがありますね。

【ホリデー】そういうとむちゃむちゃかっこいい。

【Caol】心のケアのプロフェッショナルっていうふうにまとめることができますね。

【えりな】そこまで噛み砕いてくれると私も分かりました。
 じゃあこの心のプロフェッショナルの公認心理師になるにはつまり資格を取得するにはどんな試験とか勉強するんですか?

【Caol】これも弁護士さんやお医者さんに近い形態かなということになります。学部と大学院修士課程以上を修了する必要があるんですよ。高等教育6年間です。なので、医学部6年の医師、法学部と法科大学院の計6年間の弁護士、薬学部6年の薬剤師、の3つ士業のイメージ近いかなと思います。プラス大学院を修了しただけじゃダメで、国家試験があります。これも医師弁護士薬剤師と一緒。

【ホリデー】ハードルは高いですね。

【えりな】ステップ1大学院修了ですもんね。

【Caol】勉強としては学部や大学院にいる間から、コツコツ試験対策していくってことになります。もちろん学部や大学院の勉強は、公認心理師試験に合格するのに必要な心理学医学の知識を体系的に学ぶという勉強ですが、その上で弁護士さんやお医者さんと同様に、国家試験に合格するための試験勉強が必要になります。
 お医者さんだと合格は100%ではなくて医師免許落ちる人がいます。公認心理師も同様で、大学院修士課程終わりました、受験資格があります、といっても3割以上落ちます。2022年度の最新の数字では48.3%の合格率、結構狭い門です。

【えりな】そうなんですね。学生時代が結構勝負ですね。

経過措置

【Caol】私は業界の中では比較的年寄りなので、今はないんですけども、経過措置と言って、すでに心理臨床業務を行っているって言う人が、一定の研修を受けると所定の6年間の課程を経なくても受験資格がある、というもので試験を受けました。公認心理師試験自体は、まったく同じ試験を受けるんですけれども、なるまでのプロセスがちょっと違うもので資格取得しました。強調するけど、公認心理師試験自体は大学院卒の新人と全く同じものを受けています。また、学部プラス修士課程の6年間心理学専攻しています。

【えりな】すでになっている人の試験って言うと何が違うんですか?

【Caol】公認心理師というのは2018年にスタートしてようやく6年目を迎えたという資格で、その前に公的な資格として臨床心理士というのがあったんですよ。こっちのほうが名前として知名度があるかもしれないですね。

【えりな】聞いたことがあります。なにか違うのかなと思っていました。

【Caol】ややこしい話ですけども、臨床心理士は文部科学省というところが認めた公的な資格。ただ国家資格ではない。ただし歴史は古くて30年以上前からあって、臨床心理士という資格を持って、病院や学校などで心理臨床業務というものを行っていたっていう実績があるわけですよ。
 その後、公認心理師という国家資格ができたので、病院や学校ですでに活動している人であれば、公認心理師を取れるようにって事で、もうすでに稼働している人というのは、もう1回6年間学び直しなさいってことではなしに、研修を受けて公認心理師の受験資格ができるよっていう措置が取られました。この措置のことを経過措置といいます。

【えりな】新しい資格なんですね。

【Caol】医療系の資格で言うと、言語聴覚士というのも言語聴覚士さんの活動の方が先で、言語聴覚士という資格ができたのは後なので、すでに病院で言語聴覚士として活動している人が経過措置によって資格を得ることができる、って事がありました。弁護士さんやお医者さんのように資格が古くからある訳ではなく、後からできたってものには、こんなこともあります。
 最近だと、動物病院で働く看護師には国家資格がなかったのですが、「愛玩動物看護師」という国家資格ができて、やはり経過措置があり、動物病院で現役で稼働している人は研修(これが1週間で40時間以上受講しなければいけないので大変)を受けて試験を受ける、ということがありました。

公認心理師の業務形態

【えりな】次の質問です。公認心理師の資格を持った人は、どういう業務形態で仕事をしているんですか、とか、どんなケースが多いのかなっての教えてほしいです。例えば、その資格を持って会社員になるのかフリーランスでやっていくのかとかそういうことですね。

【Caol】公認心理師の仕事というのは、ほとんどの人は組織に属して仕事をしていることになるかなと思います。具体的な場所は5つあります。
 1つ目は、私がやっているスクールカウンセラー、学校ですね。これは、教育委員会、公立の学校、私立学校などに所属するもの。地方自治体の非常勤の公務員として任命されて仕事をするってことになります。
 2つ目は医療分野ですね。病院勤務。これはちゃんと病院に正社員として雇用されるケースと非常勤職員として雇用されるケースもあります。病院だから心理検査をすることが多いですね。ちなみに病院でアセスメントする公認心理師さんをテスターと呼びます。もちろんカウンセリングなどのセラピーの仕事もあります。非常勤の中にはケース数によってギャラが決まる、という契約もあります。
 3つ目は産業分野と言って、会社の中、企業の中にいてカウンセリングなどメンタルケアを行う仕事です。キャリアについての相談もやっていますよ。
 4つ目は、福祉分野で、児童相談所や福祉施設などで働いています。
 5つ目は司法分野と言って、家庭裁判所、少年院、少年鑑別所刑務所もなんですけども、こういう司法に関わる機関で働くというのもあります。私もかつてここにいました。
 ここまでは、すべて組織に属する公認心理師の話でしたが、フリーランスがいないかと言うと、実は個人で開業することも可能な資格なんですよ。なので、個人でお客さんクライアントから対価を取ってカウンセリングをするという私設相談所っていう形態で活動している人もいます。中には私設相談所を会社組織にして、複数の公認心理師がいて相談業務をやっているよーというところもあります。

【えりな】事務所だ。ホリデーさんの会社みたいですね。

【ホリデー】でもそんなにフリーランスのみの人は多くない?

【Caol】そうですね。個人であれ法人であれ、クライアントをゲットするのが、なかなか大変です。それは他の業種と一緒になるかなあ。なので、数はそんなに多くないですが、確実に47都道府県全てにあるという言い方もできるかな。

【えりな】どこかに勤めたのち、独立して仲間たちを集めて会社にするっていうのもなくはないですね。

【Caol】大体似た世界、と私が勝手に思っているのは、税理士さんの世界ですね。会社の中で雇用されている人も多いですし、税理士事務所として独立してやっている人もいる。個人ひとりでやっている人もいれば、複数の税理士さんがいる事務所でやっている、っていう形態と似ているところがあるかなと私は思っています。

独立開業している公認心理師

【ホリデー】なんか税理士事務所とか個人の税理士さんとかは、結構独立したり、その独立した組織だったりっていうのは、まあまあ多そうなイメージっていうのがあるんですけど、それぐらい結構公認心理師さんも独立したり、独立した組織とかでやっている方ってそこまで多いのですか?

【Caol】今、公認心理師は約4万人いるんですけれども、完全なフリーランスでやっている方っていう少なく、1%もいないかと思います。

【ホリデー】なるほどね。

【Caol】これは、本当に業務独占なのと、実態として業務独占という違いかなと思います。というのも、税務だと、確定申告しようとか、法人でちょっと税務の仕事をお任せしなきゃ、っていう機会は多く、クライアントは確実にいます。クライアントが勝手にやると税理士法違反になってしまう。このように税務の仕事が多いと思うので、個人でやっているのかなと思うんですけども、メンタルケアこころのケアの専門家といっても、まずは病院に行く。病院に行くほどじゃないなという場合であっても、学校の中でスクールカウンセラーがいるので、まずそっちに相談するってことになるので、個人でお金を払ってメンタルケアしてもらおうというチャンスは比較すると少ないのかなってところですね。

【えりな】公認心理師って士業の中では、どういう業界なのか、というのを聞いていきたいと思います。

【Caol】何か答えにくい質問もありそうですがよろしくお願いします。

【えりな】振りかな。これは答えにくい質問をしてよいと受け取っていいのでしょうか。

【ホリデー】押すなよ、絶対に押すなよ、というネタですね。

士業につきものの職能団体

【えりな】公認心理師の業界ってどういう構造なのですか。例えば、同じ資格を持った人の中でも階級があるとか、ランクがあるとか?

【Caol】まず階級という話をするために、公認心理師だけじゃなくて、士業にはほぼ全てある職能団体というものの話をさせて下さい。
 これは、同じ資格を持っていて、同じような仕事をしている人たちが集まって、お互いに助け合う団体を作ろうというのが職能団体です。日本で最も有名な職能団体は日本医師会ですね。
 職能団体とは、何かあった時のために、ちゃんと保険に入ってくれたり、あるいは研修の主催をしてくれたり、あるいは法律を変えてくださいみたいに、政府に要請をしたり、などなど同じ仕事同じ資格を持って働いている人の為に助け合ったり、あるいは、外へ働きかけを行ってくれる団体のことを言います。

【ホリデー】なんか政治団体のイメージが強かったですけど、組合的な感じですね。

【Caol】政治の話をすると、職能団体の会員が2万人いると圧力団体として機能します。日本医師会のように10万人を超えるような団体だと、自民党から推薦されて参議院議員が出たりするわけですね。医療の世界だと看護師さんも議員さんを出しているところになります。
 公認心理師の方は、残念ながらそんなに会員数がいない上に、この職能団体が今、二つに分裂していて政治的には弱いかな。

【ホリデー】あーなるほど。そこ分裂しちゃうと、確かにそこから政治的な意見と言うのも分裂しちゃったりするから、意見が通せなかったりするのだ。そこ仲良くできないですかね。

【Caol】ここらへん答えにくい話でして。バックグラウンドが違う人が集まっている。所属学会というのが心理臨床学会というところと、日本心理学会というところが二大勢力で、どっちがメインかで分かれちゃう。
 また、公認心理師の職場っていうのは複数の場所にまたがっている。医療系もあれば、私のように教育系、あと前に言った法務省のように司法に関わる分野。会社で働く人の支援をする産業と呼ばれる分野、子どもや高齢者の施設で働く福祉分野の大きく5つの分野に分かれていて、それぞれ働く場所も違えば、考え方も違ったりするので、ここでもちょっとなかなかまとまりづらいところがあります。
 病院で働く人と、学校で働く人って必ずしも利害が一致しないですよね。多分よその士業でもあるのじゃないかな、と想像しています。

公認心理師は階級制?

【Caol】やばくない業務の話をすると、階級と言うのは、お医者さんと一緒で、ベテランとかちゃんと勉強した人には、専門という資格、肩書きがつきます。
 公認心理師自体は、国家資格で、とってしまえば一生持ち続けることができるものなのですけれども、ベテランになって年数が経つ、あるいは研修とかを受けてより専門家になったよってことになると、専門資格というものがつきます。
 お医者さんでも、ただのお医者さんじゃなくて、皮膚専門医とか精神科専門医というのがありますよね。これは一定の経験年数や、学会で論文を出すとか、きちんと研修を受けて専門家になった、という風に、専門性が高まることによって得られる資格があるよね、ってことです。公認心理師の世界でも、それがあります。

【ホリデー】この専門というのは、自称とかじゃなくて、ちゃんと資格みたいな感じで取らなきゃいけないみたいな感じなのですか。

【Caol】そうなのですよ。公的な資格だから実は法律では罰せられないのだけども、調べたら嘘です、だとまずい。

【ホリデー】知らなかったです。

【えりな】あーなるほど、ということは階級などがあるかと言うとあるし、他の士業にもある。呪術回戦の何級呪術師みたいだ。ただこれは級ではなくって、専門何々とかの肩書がついてきたりしますよということで合っていますか?

【Caol】あっています。ビジネス系の資格だと英語で言うシニア、上級という風に名前がつくことが多いかなと思います。

臨床心理士の年収

【えりな】では次。気になっている人が多いのではないか、って言うこと聞いちゃおうかな。公認心理師ってどれくらいの収入が得られるのですか。

【Caol】公認心理師ではなくて臨床心理士、今もあるのですけども公的な資格の団体、心理職の人は、だいたい両方持っている人が多いのですけども、この臨床心理士会という職能団体が、所属する臨床心理士の年収はいくらかという調査をちゃんとやってくれています。その結果は、平均年収400万円です。

【ホリデー】そんなに高くない。

【えりな】倍くらいだと思っていました。

【Caol】この年収400万円という算術平均の数字は、医療系の技術者、理学療法士とか作業療法士、放射線技師などの平均年収とだいたい一緒ということになります。

【えりな】いろんな見方ができますね。

【ホリデー】こんなもんか。

【えりな】そうそう、こんなもんか、というものでもあるし、周りの資格業と比べてみると、周りもそんなもんなんか、とも思いつつ、でも他の職業に比べると安定した収入にも感じます。

【Caol】400万っていうのは算術平均であって、これは例えば0万円の人と800万円の人がいたら、平均400万円になるのですけど、本当に400万円の人っていないですよね。
 で、モード(最頻値)一番多い収入帯の人はどこか、と言うのはあてになるわけです。これだと320万円になっちゃうのですよね。

【ホリデー】モードだと下がっちゃう。

【Caol】理由として、比較的若い人が多い。あとキャリアに対して収入が上がっていかないという面もあるので、300万円ちょっとの人が多い、ということになります。

【ホリデー】ちょっと調べたら、2022年の年代別の平均年収だと20代が342万円、30代が435万円、40台で495万円みたいな感じなので、そう思うとかなり平均と一緒ぐらいか、少し少ないかなぐらいの感じのイメージですねそうですね。

【Caol】公認心理師、男女比はかなり偏っていて、8割が女性です。

【えりな】ちょっと意外。

【Caol】この公認心理師の多数派が、パートタイムでスクールカウンセラーをしている女性ってことになるわけですよ 。千葉県の例だと、週3回スクールカウンセラーとして稼働、フルタイムじゃないってことになりますよね。で、週当たり18時間の稼働で、300万円くらいの年収になる感じです。

【ホリデー】フルタイムじゃなくっていうとこで考えると確かに

【Caol】週三回18時間の稼働で年収300万円というのは、仕事として良い感じがしません?

【えりな】確かに、収入だけ見ると、なんか週5で元気に働いているイメージになっちゃっていましたけど、これ聞くとね、なるほどですね。

【Caol】こういう話をすると、Caol先生個人ではどうなのですか?と、学生から聞かれることがあるのですが、こういうときの言い方として、私は公認心理師の中ではかなり上の収入だと思います。ただ具体的な金額を言うわけにはいかないので、弁護士の平均より上で、勤務医、病院に勤めているお医者さんの平均のちょっと下の収入です、と言います。

【えりな】弁護士やお医者さんの収入平均って調べたらなんとなく予想が立てられちゃう。

【Caol】お医者さんも、病院に勤めている勤務医と自分で病院を持っている開業医では、相当に年収が違いますね。

【ホリデー】もらっていますね、飲みに連れてってもらおうよ。

【Caol】オーナー社長と起業家と公認心理師の飲み会、ゴージャスそうですが、ここで身の丈に合わない散財をすると酷い目に遭いそうなので、知っている居酒屋さんぐらいになりそうですね。

士業のメリットとデメリット

【えりな】収入の話でもちょっと出てきたのですけど、気になるのが士業のメリットとデメリット、あと大変なところと楽なところのバランスが気になるのですけど、どうですか?

【Caol】専門職でプロフェッショナルな仕事なので、割と自分がやる仕事に関しては権限が大きく、自分でやることは自分で決められる自立性、キャリアアンカーのことで言うと、仕事が自立的にできるって言うところは非常にある仕事だと思います。
 大変なところとしては、プロフェッショナルは基本一人です。職場に一人、何千人いる大組織の中であっても、自分が公認心理師でメンタルケアをするっていうことで言うと、一人しかいないポジションであることが多い。で、一人で決めるというところがなかなか大変なところになるかなと思います。

【えりな】なるほど、メリットにもなりうるしデメリットにもなりえるところなんでしょうけど、まぁメリットは自立性があるところで、デメリットになり得るところは、全部一人でやらなきゃいけないっていうことですね。

【Caol】その組織の中で、公認心理師は私だけってことになるので、先生どうすればいいんですか、と聞かれても、本当は私にも分からんのだけど、なんかちゃんとしたことを答えなければならない、ということが起きます。

士業を目指す人へのメッセージ

【えりな】かっこいいですけどね。私かっこいいと思っちゃうけどなあ。でもそれを聞くとどんな人が向いているのかもうなんかなんとなくイメージできますね。最後に士業を目指す人にメッセージを送っていただいてもいいでしょうか。

【Caol】士業は選んだ時点で、なるべき姿というのが明確です。覚悟が必要になるよ。あと、なるまでも大変だよ。そして、なってからもずっと勉強しなきゃいけないよっていうことになります。なので士業を目指す人、私向いてるんでしょうか、向いてないんでしょうか、っていう事の一つのポイントは、好奇心があるか、新しいことにずっと興味を持てるか、ってところです。

【えりな】ちょっと意外でもっと硬い印象はありませんでした?

【ホリデー】そうですね。今言った事って、正直、僕みたいに士業でもなんでもないデザインでも当てはまるんだけど、なんか士業って言うと、やることが決まってるから、なんか一回入っちゃえば勝ち組だね、というイメージで思っていたら、ちゃんとアップデートし続ける必要あるということですね。

【Caol】外からのイメージと違うところは、毎年アップデートしなきゃって言う必要に迫られる業界が多いです。たとえば税理士さんのことを考えれば、毎年税制が変わるんだから、去年の知識ではできないよってことになりますね。

【えりな】確かに。本当に自分の専門、一つの事をアップデートし続けて、極め続けることがプロフェッショナルっていうことですね。

(3)資格は役に立つか

【えりな】今回は資格に対する幻想の話とのことですがこれはどういうことですか。

【Caol】高校生と話をしていると、資格に夢見過ぎなのじゃないの、って事がママあるので、資格取得の現実的な話をしながら、資格取得の向き不向きの話をしたいなーと思います。よくあるのが「資格があれば食いっぱぐれない」と思う幻想です。

【えりな】資格を持っている人は食いっぱぐれないと思ってますけど違うんですね。

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