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ミライのキャリア#9オーケストラと刑務官と学校

キャリアパス


【えりな】
 今回はキャリアパスから見た刑務所と学校の話、ということですが、まず、「キャリアパス」って、なんでしたっけ?
【Caol】
 「キャリアパス」という言葉ですが、企業などの団体で働く人が、ある職位に就くまでに辿ることとなる経験や順序のこと。また個人の視点からは、将来自分が目指す職業を踏まえた上でどのような形で経験を積んでいくかという順序・計画を指します。
 企業があらかじめキャリアパスを用意する、ということは大企業だとありますよね?
【ホリデー】
 あ〜。なるほど。確かにありましたね。
 僕は厳密には管理職にはならずに退職してしまったのですが、上司からよく「ゆくゆくは部長になるのだから、こういう経験をしておいた方が良い」みたいなことは言われていました。
【Caol】
大企業だと、10年後、20年後の自分が同じオフィスにいる、モデルとなる先輩がいる、という話も聞きますが、これはどうでした?
【ホリデー】
 確かに。実はそうしたモデルが、働き方改革とコロナの影響でここ数年すっかり崩壊してしまった感はあるのですが、それまでは、実績をしっかり積んでちゃんと人の上に立って仕事を引っ張る先輩たちって沢山いたんですよね。そういう人たちの背中を見ながら、ああ自分はあっちの方向にいきたいなあ、とか考えることができたと思います。
【えりな】
 それはキャリアパスの実例がたくさんいたってことですよね。きっとその先輩たちにもモデルとなる先輩がいて…みたいな。

刑務官のキャリアパス


【Caol】
 で、今回は、キャリアパスという視点で見ると意外な職種が似ているという話です。
 以前お話しした刑務所というところには受刑者の監督指導にあたる刑務官という仕事があります。刑務官になると、まず助勤という休憩時の交代するポジションから始まります。受刑者は刑務官が絶えず監視していなくてはいけない、ということになっているので、3時間に1度の休憩の時には誰かが変わらないといけないのですね。
 で、助勤の期間が過ぎると次は夜勤、夜の間、受刑者を監視する仕事。このキャリアを重ねると工場や舎房の担当主任。刑務所は刑務作業をするところなので、工場があり、工場の30~40人を監督指導する責任者になります。人によっては管理職試験を受けて統括という刑務官何十人かのマネージャー役になり、定年まで工場主任として受刑者の指導にあたる、というキャリアパスもあります。これって何かに似ていません?
【ホリデー】
 話が特殊すぎて、頭に入ってきませんw
【Caol】
 いや、こんな特殊な世界に似たところにホリデーさんもえりなさんもいたことがあるのですよ。
【ホリデー】
 ああ、なるほどw学校、ですね。尾崎豊ですね。「この支配からの卒業〜」ですねw
【えりな】
 z世代がわかるかわからないか微妙なネタですよホリデーさん!学校ですね、似ているところがピンとこないけど、そっかあ…
【ホリデー】
 すみません。Z世代は盗んだバイクで走り出さないもんなあ。はい、で、学校の話ですねw

教員のキャリアパス

【Caol】
 そうです。学校の教員ですね。教科担当、副担任から学級担任になって、人によっては教頭校長という管理職もあり、定年まで学級担任や学年主任で現場にいる、というキャリアパスです。
 なんでこんなに似ているのか、30〜40人の集団を監督指導する仕事であることと、監督指導する相手は客、ユーザーやカスタマーではない、という共通点はあります。
 専門性にも共通点があります。人に働きかけて変化や学習を促す、という対人サービス業である、とも言えます。
 余談ですが、刑務所と学校が似ている、と言ったのはフランスの哲学者ミシェル・フーコー「パノプティコン」ですね。
【えりな】
 あ、そういうことか!大卒の新人先生が、偉くなると校長先生のおじいちゃんになる、あんなシステムですね。刑務所もそうなのか〜
【ホリデー】
 刑務所と学校が似ている、って言われるとやっぱり、盗んだバイクで走り出したくなるじゃないですかw
【Caol】
 そうですね。バイクを盗むともれなく刑務所にご招待になるシステムですね。【ホリデー】
 エコシステム!

教員と刑務官の”良い仕事”


【Caol】
 で、私、いろいろな職業の人に「いい仕事したよ」という気持ちになるのはどんな時?と聞いているのですが、教員の場合、「授業をして生徒が『分かった』という反応、表情になった時」だそうです。
【えりな】
 なるほど、それはわかる気がする。
【Caol】
 刑務官はというと、「担当している工場が1日無事故で終わった時」という管理の方の仕事と、「工場で担当している受刑者が仮釈放審査の対象になった時」と受刑者の変化の話もあります。補足すると、仮釈放というのは自己の罪を反省し、刑務所での行いが優秀じゃないと対象にならない。
【ホリデー】
 ああ〜。そういえば刑務官の方のやり甲斐なんて想像したこともなかったですけど、そういうポイントになるんだ。ほほ〜。
【Caol】
 で、どうも人に働きかけてポジティブな変化を促す、という点で共通点がありそうですね。
【ホリデー】
 なるほど。まとめるとそういうことですね。
【Caol】
 で、ベテラン刑務官と教員、両方に会った身とすると、生徒指導の怖い先生とベテラン刑務官は外見がとても似ている。
【えりな】
 見た目が!?脳内で想像すると確かに服装意外似た見た目をしている気がする、すごく強面のおじさん。ただのイメージですけどw
【Caol】
 専門スキルも似ていて、怖そうな外見を使って、言葉だけでいうことを聞かない人を動かします。で、ここまでは組織が似ていると全く違った職業でもキャリアパスが似てくる、という話でした。ここからは、専門とやりがいの話。

専門とやりがい、刑務官とオーケストラ団員の共通点

【ホリデー】
 仕事において、やりがい、ってほんと大事ですよね。
【Caol】
 で、今度は教員じゃない仕事と刑務官の、これも意外な共通点。オルフェウス管弦楽団という指揮者を置かないオーケストラがあって、そこのマネージャーがインタビューで、
「アメリカでの研究では、『刑務官とオーケストラ団員は職業満足度の低い仕事』というデータがある」
 という話をしていて、へえっと思った。確かに、刑務官とオーケストラでは絶対的なリーダーが一人だけいて、後のメンバーはリーダーの言うことに従う、というところは共通。
【ホリデー】
 オルフェウス管弦楽団の話は聞いたことあります!ティール組織、て最新の組織論を語るときによく例で出てきていました。それはそれとして、普通のオーケストラ団員の職業満足度が低い、ってのにびっくりです。クリエイティブな職業のイメージなのに、そうなんだあ。
<ティール組織:上司がマイクロマネジメントをしなくても、目的のために進化を続ける組織のこと。そのため指示系統がなく、メンバー一人一人が自分たちのルールや仕組みを理解して独自に工夫し、意思決定していくのが特徴>
【Caol】
 確かにキャリアアンカーの視点では、両者とも補償・安定はあるんですよね。刑務官は公務員として安定していますし、オーケストラ団員は、音楽家としては、例外的に月給か年棒制で安定している。でも、逆に刑務官とオーケストラ団員では、共に自立・独立、とか、起業家的創造性というのもない。
【えりな】
 そうなんだ〜。オーケストラも安定したシステムですね。でも芸術家だったら、ちょっと窮屈とも言える…?
【Caol】
 で、組織構造がライン型で、ボスの言うことは絶対、という組織だと、言われたことをやるだけ、と思われがちですが、命令以外は自由、という側面もあります。【えりな】
 そうとも言えるのか!
【Caol】
 また刑務官だととんでもない悪人にいうことを聞かせて、更生につなげる、オーケストラ団員だと楽器演奏という専門領域では観客に自分の表現を届ける、というボスの指示とある意味無縁な専門家としてのやりがいがあり、刑務官でもとてもクリエイティブ、と見ることもできます。
【ホリデー】
 なるほど、ライン型組織であっても、どこかしらに自分のクリエイティビティを発揮できるところはあるから、その人の考え方次第、ってことですかねえ。Caol先生は刑務官だった頃、どんなところにやりがいを感じてたんですか?
【Caol】
 私は心理調査専門官で、受刑者の監督をする刑務官とはだいぶ違う仕事だったのですが、所長のいうことは絶対で、権限が限られているのは共通。そこでのやりがいは、自分の持つ専門スキルを生かすこと。受刑者を調査して報告書にまとめる、というのは「表現」と言えなくはない。
【ホリデー】
 どんな環境でもクリエイティビティを失うな、ということですね!
【Caol】
 そうですね。自分の専門性を思い出し、できることを探す、と一般化できると思います。
【えりな】
 次回は、都会と地方、働く場所の違いの話です。
第2第4月曜日Podcast配信中

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