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Teaching Kitchen Research Conference体験記(1)~Teaching Kitchenとは何か?~

キャンサースキャンで新規事業開発を担当している古谷と申します。

10/17-18の2日間、アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で開催されたTeaching Kitchen Research Conference(以下TK-RC)というイベントに参加してきました。

本イベントはアメリカで新たな生活習慣病の治療・予防方法のムーブメントとして注目を集めつつある”Teaching Kitchen”の普及・拡大を目指したもので、リアル・オンライン含めて約500名の参加者が世界から集う大規模なものでした。
一方、日本ではこの”Teaching Kitchen”という動きがほとんど知られておらず、日本語の情報もほとんどないため、「日本でもこの動きを紹介したい!」という思いに駆られ、noteでご紹介させてもらいたいと思います。


1.そもそもTeaching Kitchenとは何か?

1-1.ハーバード大学で誕生したプロジェクト

Teaching Kitchenとはハーバード公衆衛生大学院の料理栄養学ディレクターを務めるDavid Eisenberg准教授によって発案された新たな生活習慣病(糖尿病、高血圧など)の食事療法プロジェクトです。

出所:Harvard T.H,Chan School of Public Health, Fuculty & Research

1-2.”キッチンで料理を教える”というコンセプト

そもそも、生活習慣病の治療のためには根本的な食習慣の改善が欠かせません。そのため、アメリカでも日本でも、いわゆる”食事療法”という治療法があるのですが、多くのケースでは医師などが一般論的な食事・栄養のアドバイスをして終わり、ということが非常に多いのが実態です。
そこで、Eisenberg准教授が目を付けたのは、「実際に患者をキッチンに立たせて、健康的な食事の作り方を教えることで食生活を改善させる」というコンセプトなのです。

Teaching Kitchenの実際の模様
(出所:Food Management)

1-3.世界最大のシェフスクールCIAとのコラボレーション

”料理を教える”というコンセプトを実現するため、Teaching Kitchenでは世界最大のシェフスクール、CIA(Culinary Institute Of America)の協力関係を得ています。CIAは単なる料理学校ではなく、4年生の大学です。なんとニューヨークのトップ10レストランのうち、7軒のシェフはCIA出身だったというエピソードもあり、CIAには”外食業界のハーバード大学”という異名もあるくらいです。

CIAの授業風景
(出所:Culinary Institute of America)

こうした取り組みはメディアでの注目も集め、New York TimesやWall Street Jounalなどでも取り上げられるようになりました。

北米メディアでの紹介記事

1-4.病院や企業でのTeaching Kitchenの広がりとNPO化

アメリカの医療機関、例えばスタンフォード大学や、ボストンメディカルセンターなどでは、キッチンを新設してプログラムを患者に提供する動きが広まっています。また、Googleのような企業が”健康経営”的な文脈からオフィス内にキッチンを新設して、従業員にプログラムを提供する動きも起こっています。
そうした流れの中で、提唱者のDavid Eisenberg准教授をトップとして、2019年には”Teaching Kitchen CollaborativeというNPO法人が設立され、より一層Teaching Kitchenの普及・促進を図る体制が構築されました。

出所:Teaching Kitchen Collaborative

2.キャンサースキャンとTeaching Kitchenの関係

2-1.副社長 米倉のBoard of Directors就任

2014年、副社長の米倉は、ハーバードビジネススクールを卒業したという関係もありDavid Eisenberg准教授と出会い、Teacing Kitchenのコンセプトに深く共感します。その縁もあり、米倉は前述のNPO法人のBoard of Directorsに就任し、NPOの運営にもコミットしています。

Teaching Kitchen CollaborativeのBoard of Directors(出所:TKC)

2-2.日本でのTeaching Kitchen研究開発プロジェクトのスタート

前述の縁もあり、キャンサースキャンは米国で生まれたTeaching Kitchenを日本で初めて持ち込んで日本の食文化にフィットしたプログラム開発を進めるべく、研究開発プロジェクトをスタートさせました。

具体的には、大阪大学医学部と久原本家グループ(出汁等のブランド”茅乃舎”で有名)の3者で共同研究契約を締結し、それぞれの強みを生かしたプロジェクトがスタートしています。

具体的には、日本人向けのレシピなどのコンテンツを開発しながら、20名弱の参加者の方々へのFeasibility Studyなどを行っており、体重・血圧などで有意な減少効果を得ることに成功しました。

以上、Teaching Kitchen自体のご紹介をさせていただきました。
続く次回は、実際のカンファレンスの模様をご紹介します。


(1)Teaching Kitchenとは何か?
(2)カンファレンスの概要
(3)カンファレンスからの気づき・インサイト

ご参考)Teaching Kitchenの日本での取り組み概要はこちら


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