山村留学で体験したこと①田畑を耕す
先日は長野県山村留学合同説明会で発表させていただきました。オンライン、現地とご参加ありがとうございました。オンラインでのプレゼンテーションをしたのですが、五分間という短い時間と、画面に向かって話すことで緊張してしまい、上手く魅力を伝えきることが出来ませんでした。やっぱり私は文章で伝えるのが得意なので、こちらで和合での山村留学の体験の総まとめをしていきたいと思います。なお、長野県合同説明会でのプレゼン資料は下記のページから見ることができますので、山村留学に興味のある方はぜひチェックしてみてください!
さて、私がここに来て今年で5年になります。この5年間、学校で体験したことはだいたい記事にしてきたつもりですが、親の私が体験してきたことはまだあまり書ききってなかったと思います。親子山村留学は子どもはもちろん親も沢山の体験が得られる場でした。いくつかのテーマに沿って思い出しながら綴っていきたいと思います。
畑を開墾
私自身は東京の街中に生まれ育ち、畑も田んぼも無縁の子ども時代を過ごしました。ですが大学は農学部に進み農業のバイトや勉強会に参加して、少しずつ経験を増やしていきました。茨城にいた頃も小さいお庭の家庭菜園とお友達の田んぼでの稲作体験をしていたので、長野に来たらやっぱり畑と田んぼをやりたいと思っていました。ちょうど地元の方にそんな話をする機会があり、小さい畑と田んぼを借りたいと言ったら、ちょうどよい大きさ(それでも私にとっては十分な広さ!)の畑と田んぼを無償で借りることができ、私のにわかファーマーズライフが始まりました。
畑は初心者の見様見真似でホームセンターから苗を購入したり、先輩移住者さんから分けていただいたりしながら、時には自分で種をまいて、隙間時間に出来る範囲に出来るだけをと楽しんできました。今までに育てた野菜は、じゃがいも、里芋、さつまいも、かぼちゃ、なす、ピーマン、トマト、きゅうり、うり、トウモロコシ、だいこん、枝豆、いんげん、たまねぎ、ニンニク、レタス、バジル、オクラ、しそ、ズッキーニ、空心菜、ほうれんそう、落花生・・・思い出せるものでもこれくらい?けっこう幅広く作れました。親子2人分なのでそんなに量もいらないし、無農薬無肥料でもなんとか美味しい野菜をいただくことができました。
それからなんと畑には無尽蔵に生えてくる山菜たちが!つくし(スギナ)に蕨、よもぎに畑の隣にはタケノコ!!!毎春は食卓がにぎやかに。タケノコは自分でも掘るのですが、ご近所さんからのおすそ分けもたんまりで、娘はもうタケノコはもうもらってこないで!という始末。それでも自前のタケノコで作った春巻きは絶品で、たけのこご飯にチンジャオロースに舌鼓を打ちました。
小学校でも畑の授業があるのですが、そこでもたんまり収穫できるので、野菜には困らず。集落の人たちはみな何かしら野菜を自給しているのでおすそ分けをもらうことも多く、食卓がとても賑やかなものになりました。新鮮な旬の野菜を調理に困るほどいただける贅沢な環境!漬物などの保存食にも挑戦しました。なにより雄大な自然の中での土いじりは都会育ちの私にとってまさに憧れの至福の時間でした。
田んぼに挑戦
和合小学校では年間を通じて全学年の田んぼの授業があります。元保護者であり先輩移住者の農家さんから直接ご指導いただき、小さな田んぼを世話するのですが、実は子どもだけではなく親の私自身が勉強になった一年でした。和合小では児童が少ないため保護者が学校の授業に参加する機会が多くいつでも学校に行くと歓迎されます。その機会を利用してちゃっかり私も田んぼの勉強を実践しながら学ぶことができました。
そして山村留学2年目。ちょうど空き家に引っ越すタイミングで地元の方に小さな田んぼを借りれないかと聞いてみたところ、ちょうどよい手ごろな大きさの田んぼをなんと無償で借りることが出来ました。しかも機械で耕してくれたり水の管理を手伝ってくれたりと至れり尽くせり。田んぼ一年生の私でも親子二人で約一年間食べていけるだけどお米を収穫することが出来ました。
そして今年は3回目の収穫を終えて、今ははざにかけたお米を乾燥中です。昨年からは不耕起の自然農のやり方に転向して、試行錯誤でやってきました。隣村で自然農をやっている先輩農家さんとのご縁があり、今年は苗床づくりから挑戦しました。
田んぼの季節は稲の成長が暮らしの関心の多くを占めて台風やら長雨やらにはハラハラしましたが、今年も無事に稲を収穫することができてほっとしています。田んぼの姿は毎年異なって、先輩農家さんが「何十年やっても田んぼは分からん」と言っているのが身に沁みました。もっともっと追求したいところですが、残念なことに娘の卒業というタイムリミットが来てしまいました。ほんの短い間でしたが、一から田んぼを挑戦で来たこと3年は私にとってはかけがえのない経験になりました。自分の食べるものを自分で創りだすことが出来るという自信は、出来はどうだったかにせよ、生きる自信を培ってくれたように思います。どんな災害があったとしても、種を撒けば収穫できるという安心感。都会にはない本当の豊かさは、野菜やコメを育てる土壌にあるんだと実感しました。
山村留学生の畑と田んぼ
こうして私は個人的に畑や田んぼを楽しんできましたが、山村留学生が増えた今は山村留学に来ている親子の畑と田んぼがあり、みんなで協力して田畑を耕しています。畑や田んぼ仕事なんてしたことがないお母さんがほとんどですが、それぞれにそれぞれの楽しみ方をしていますし、畑や田んぼのことに詳しい先輩移住者や地元の方がいつでも親切に教えてくれる環境があります。一家で移住した家族は、お父さんを中心に畑や田んぼを拡げて自給自足を実現している方もいます。畑や田んぼをやってみたいという親御さんにとっては和合は格好の場所!子どもたちが学校に行っている間、好きなだけ土いじりが出来る環境にあります。
子どもは山村留学で学校へ、親は田畑を耕す耕作留学へ!
和合は若い人がどんどん外へ出て行ってしまい、お年寄りの人口が多い集落です。耕作放棄地の増加が課題でもあります。地元のお年寄りの方と話すと、「あっちもこっちも田んぼだったのに、どこもやめてしまった。いちど田んぼをやめてしまうとすぐに荒れ地になってしまうで誰かに田んぼをやってほしい」と切実な願いを聞くことが少なくありません。学校の存続も課題ではありますが、広大な農地の存続という点でも、移住者に期待せざるを得ません。子どもためにと山村留学を選ぶことが一番だとは思いますが、もし田んぼや畑をやってみたいという親御さんがいらっしゃいましたが、その親の口実で子どもを連れて来ても楽しんじゃないかと思っています。実際のところ、山村留学は当初子どもの希望ではなく、親である私の「田舎暮らしがしたい!」というわがままで連れてきたと言うのが本音です。結果、子どもがこの環境を気に入って「この学校に通いたい!」と留学期間を延長に延長して、今に至っています。ここでは子どもを学校へ通わせながら親も田畑について学べる環境が整っています!そんな動機でも山村留学の仲間が来てくれても面白いなと思うのです。
とにかく私は田舎に来て土いじりがしたい!という夢を叶えることが出来て大満足です。夢を叶えてくれるきっかけをくれた娘に感謝です。畑も田んぼも6年生になった今では即戦力となって働いてくれますし、生きる力をしっかりとつけてくれたと実感しています。