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山村留学で体験したこと④動物たちとの暮らし

約5年間の山村留学生活を振り返って記事を書いています。山村留学で体験した暮らしぶりの第4弾です。過去記事もご覧ください。

当初こちらに来た時には2か月間という短期の滞在を予定していたために動物と暮らすと言うことは全く考えていませんでした。それがここでの暮らしが楽しくて帰りたくなくて延長を決めて引き続き町営住宅に滞在しているときに娘の同級生のうちで子猫が生まれたのです。もう娘も私もメロメロに。次に猫が生まれたら絶対に飼いたい!!!という娘のためにペット禁止の町営住宅から空き家へと引っ越しして期待を胸にした春、また子猫が生まれたとの知らせを受けて兄妹猫2匹を迎え入れることが出来ました。私は子どもの時動物アレルギーで毛の生えた動物は飼えなかったので猫との生活はこれが初めて。すっかり猫の虜になってしまいました。

娘の親友
毎朝のニャルソック

昨今都会では室内飼いが主流になっていますが、田舎はまだまだ外飼いもできるので、猫たちは野山を勝手に出かけては狩り三昧。小鳥、へび、かえる、ねずみ、モグラ、イモリ、トカゲ、昆虫たち・・・たくさんの獲物を得意げに持ち帰っては放置するという飼い主にとっては悲鳴ものでしたが、彼らの狩りの能力、木登りの能力、山をぴょんぴょんと駆け上がる姿を見ると、野生の”生きる力”をまざまざと感じられてそのたびに私の胸は満たされました。そこには自分の持てる能力を最大限発揮している姿が見られました。卒業後の引っ越し先は街中なのでとても外へは出せない環境。こちらにいるうちにたくさん外を堪能してほしいと思っています。猫は私と娘の二人暮らしをにぎやかに暖かなものにしてくれました。本当に大切な家族の一員です。茨城に住む夫と息子とも仲良くなってほしいなぁ。

雪の日もお散歩に出かける
仲良くおさんぽ

さて、猫を迎えて一年後、また新たな家族を我が家で迎えることとなります。地域で養鶏を営んでいるお宅から廃鶏を2羽譲り受け新しい家族となりました。猫とうまくやっていけるか心配でしたが、猫も鶏もつかずはなれずいい距離を保って鶏さんは我が家に新鮮な卵をもたらしてくれました。

はじめて作った鶏小屋にて

娘と一緒に慣れない手つきで小さな鶏小屋をつくり昼は放し飼い、夜は小屋へしまって一緒におさんぽなんかもして鶏たちも家族になりました。そしてしばらくして私より一足先に家族で移住した一家が鶏を飼うというのでひよこを仕入れた際にうちにもおすそわけしてくれたのです。2羽のひよこをもらいましたが、最初2羽は我が家の猫にやられてあえなく天に。次はしっかり猫対策を十分に準備してまた2羽をわけてもらい、夜はひよこ電球であたためながら大事に大事に育てました。

娘はひよこのお母さん
大きくなっても甘えんぼ

ひよこたちとの生活で鶏という生き物はとても人懐っこくて賢いと言うことが分かりました。鶏は”三歩あるくと忘れるとりあたま”なんて言われてしまうけれど、飼い主のことはしっかりと覚えているし、放し飼いにしていても夕方になるとちゃんと小屋に戻ってくるし、エサの場所はしっかり把握しているし、車はよけるし、小屋に戻りたくないときはこっちがつかまえようとしても逃げ場を見つけて素早く逃げ込むし。なんだこのこたち頭いいじゃんと我が子ながら思ったものです。

いつも一緒の仲良しさん
鶏は寒さに強い

鶏というものは観察すると常に歩きまわって地面をつつき、休むときは砂をかいて穴を掘りそこに落ち着く。2mくらいの高さの枝に飛び乗り、屋根にものるくらいジャンプ力がある。とても身体能力が高いのです。彼女たちのそんな様子を見ていると、身動きのできないケージの中で一生を終える環境にいるのが、どんなに不自然であることが容易に分かります。家畜の福祉(アニマルウェルフェア)という考え方がようやく欧米で広まり始めていますが、日本ではまだまだ。このように生きものと身近に接する機会の消失が、動物の福祉という領域まで思いが至る機会をも消失させているのかもしれません。彼らとともに暮らし彼らを知ることでお互いに幸せに暮らせる道が見えてくる。ここで動物たちとともに暮らすことで、人間と動物がともに幸せに暮らせるにはということをより強く考えるようになりました。

そんな大切に育ててきた鶏ちゃんたち累計5羽。廃鶏ちゃんたちは病気と事故で、そしてひよこから育ててきた鶏ちゃんたちは、昨年の早春に小屋を獣に襲われて、天へと帰ってしまいました。とても悲しかったのですが、引っ越し先は町の賃貸アパート。生きていたとしても連れて行くわけにはいかないので自らの手で処分することも考えていました。それでも名前をつけてかわいがっていた子をしめることがとうていできたとは思えません。森の獣にその役を担ってもらったのかもしれません。生きものとの暮らしは別れがついてきます。猫たちとも病気や事故で別れを重ねてきました。楽しい暮らしと悲しい別れ。ここでの数年間の内に”いのち”とともに暮らしてきた時間は、かけがえのない濃いものでした。ここからは猫二匹を連れての引っ越しですが、町の暮らしを経たらまたいつか田舎で外を行き来する暮らしをさせてあげたい、そしてまた鶏も飼いたい、次は犬も飼ってみたいと夢は広がっています。

木の上がお気に入り

さて、我が家では猫、鶏と一緒に暮らしておりましたが、知人の紹介で2年前ほどから牧場で働く機会を得ることができました。馬のお世話なんてはじめてでとまどうことばかり。それでもお馬さんたちは優しくて、働きにいっているのに癒されてしまう、大自然のなかでたくさんの生き物たちと触れ合えるそんな幸せな時間をもらいました。牧場には馬のほかに鶏、アヒル、猫、ヤギ、牧場主さんの犬がいてそれはそれは賑やかでした。私の子どもも何度か牧場に遊びに行かせてもらい、お馬さんにのせてもらう貴重な機会もいただきました。私は乗馬はちっとも上達しませんでしたが(筋力不足です)子どもはすぐに乗りこなしてしまってお馬さんとも仲良くなってしまい羨ましいこと限り。この牧場はホースセラピーを行っていて、子どもたちとお馬さんたちがのびのびと幸せに暮らしていました。

牧場での乗馬体験

お隣の売木村にはヤギの牧場があります。子どもたちと一緒にヤギの赤ちゃんを観に行きました。ほんとうに可愛くて可愛くて。いつかヤギも飼いたいとまで思ってしまうほど。売木村ではヤギの牧場のミルクやチーズ、ソフトクリームが味わえます。

ヤギの赤ちゃんに会いに行く

和合の辺りは野生動物にも出会えます。鹿、カモシカ、猿、イノシシ、ハクビシン、たぬき、きつね、リス、野ウサギ・・・さすがに熊には遭遇したことはありませんが、私が住んでいる間に目撃情報が町内放送で流れることは何度もありました。うちの裏山には鹿の糞が沢山。かわいい鶏ちゃんたちは野生のテンかイタチにやられたと思われます。我が家の畑で丹念に育てていたトウモロコシは見事に猿に食べられてしまいました。動物たちを身近に感じながら夜歩くのはちょっと恐ろしかったり。朝は鳥声で目覚め、夜は闇に獣の気配を感じ、生きものの息遣いを近くで感じながら生活できるのがこの和合の地でした。野生動物が好きで山村留学に来た子もいます。動物との暮らしは、私たちも単なる”動物”であることを思い起こさせてくれます。私はここに来て、動物たちと触れることで、本来の動物としての”生きる”喜びをより感じるようになったと思います。

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