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ロボットの心~長編小説『クララとお日さま』より~

すでに多くの方が感想を書かれている書籍『クララとお日さま』。

書店でズラッと棚に並んでいるのを見て、何となくひかれるように手に取った1冊。

これは、クララという名のロボットの一生を描いた物語。他のロボットたちと一緒に店頭に並べられ、やがて買われ、連れて行かれた家の子どもが大学生になるところまでを見届け、最後は廃品置き場に捨てられている。

ラストシーンまで記憶があるから、クララは捨てられた後も、完全に壊れている訳ではないようだ。

読んでいるうちに、かつて読んだ、手塚治虫先生の漫画『火の鳥』(復活編)に登場する【ロビタ】を思い出した。

ロボットなのに、どこか人間らしくて、子どもに人気。子守り役、友人役、相談役を兼ね、やがて子どもが大きくなると用済みとなるあたりに共通点を見出しながら、読み進めていった。

ロビタ② (2)

長い間、役に立ってくれたのに、いらなくなった途端、捨てられてしまうロボットの運命。

個人的には、同じロボットでも、この作品にドラえもんのようなほのぼのさを感じられず、読後は切なさが残った。

それは、クララがどんなに子どもと親しくなり、自分のことを顧みずに子どもを救っても、家族とクララの間に、最後まで見えない壁があるように感じたからかも知れない。

ドラえもんは、きちんと家族として受け入れられている。その証拠に、のび太くんのお母さんは、ドラえもんの分も含め、いつも4人分のご飯を作ってくれる。(もっともクララは食事はしないが。)

勝手にドラえもんと比較してしまったが、主人公クララが、その家で過ごした期間を幸せだったと廃品置き場で回想しているのが救いだ。すべてを肯定的に受け入れる姿が何とも言えなかった。

読みながらずっと思っていたのは『ロボットに心はあるのか?』ということ。作中に『心』という単語が出てくるから、作中ではあるという前提になっているようだ。

人形には作った人の心が宿ると聞いたことがある。『毎年きちんと飾らないと、お雛様が泣く』なんて話もあった。

ロボットだって、人間が作る以上、心があるのでは?

ロボットでも人形でも、やっぱり大事にしてくれる人のもとに行きたいに違いない。

そんなことを思いながら、人間とロボットの理想的な共生を模索しつつ、最後まで作品を見届けた。


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