マロンと駒

癒し求めて三千里。ラジオリスナー歴、約10年。思い出・記憶を引き出しながら、映画・読書…

マロンと駒

癒し求めて三千里。ラジオリスナー歴、約10年。思い出・記憶を引き出しながら、映画・読書・漫画の感想etc…エッセイ・日記・ときどき短編小説を書いています。『癒しの記事』を目標に、週1目安に更新中。毎日飲むのはカフェ・オレ。港町が好き。ネコ派。

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見逃された遅刻

お昼休みに書店で、阿川佐和子さんの著書『ないもの ねだるな』を手に取り、偶然開いたページを立ち読みしていたところ、ご自身の遅刻にまつわるエッセイが掲載されていた。 読んでいるうちに、中学時代のある同級生が遅刻した朝のことを思い出した。 彼女とは、中学3年間一緒のクラスだった。彼女は非常に優秀で、成績は常に上位3番以内にいた。中1での初めての定期試験で、彼女は国語と数学が100点だったのを、今でも憶えている。 難しい内容でも、せいぜい2回も聞けば理解する能力を持っていて、

    • 追い求めた先に

      焦燥感に駆られ、安心を求めて突き進む。 今の自分を変えたかっただけなのに、ちょっとした歯車の狂いから、いつの間にか見分けがつかなくなっていく善悪の区別。 金銭感覚が麻痺してゆき、いつしか大金を使いこむことが当たり前になっていく。 けれど、どんなに大金をはたいても、少し経てば消えていく高揚感。 やがて不安になり、その不安をかき消すために、目についたブランド品や高価な化粧品を再び購入することの繰り返し。 そして遂に、勤務先の銀行で巨額を横領するまでに至ってしまう… 角

      • 灼熱の中の紫陽花

        炎天下となった今年の七夕。 この日の午後、子供の頃から何度も通った川沿いの小道を私は歩いていた。 今も変わらず残る道。 最初、別の道を通ろうとしたのだが、猛暑に咲いている紫陽花に目が留まり、思わず足を向けたのだ。 毎年この場所には紫陽花が咲く。 今年はもう見られないと思っていたので何だか嬉しくなった。 この道は大好きなのだが、かつて初夏から秋の始めにかけて時々ヘビが出た。 そのため今でも、この時期にこの道を通るのは緊張する。 けれど恐怖より、紫陽花を近くで見たい気持

        • 夏の日のビスケット

          今でも時々見かけるブルボンのチョコ&コーヒービスケット。 私が通っていた幼稚園では、おやつの時間には定番だった懐かしのお菓子。 ある夏の日。 その日は猛暑で、水泳の時間があった。 今でも水泳はあまり好きではないが、珍しく自分から『今日は泳ぎたい!』と思ったほど、その日は暑かった。 皮肉なことに、そんな日に限って病み上がりでやむなく見学。 当時、幼稚園では水疱瘡が流行っていて、次々と交代で誰かが休んでいた。 私も数日欠席し、やっと復帰した日がたまたま猛暑だったのだ

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          蘇る『伝説』

          『ドラゴンクエスト』シリーズ第3作目『ドラゴンクエスト3 そして伝説へ…』のリメーク版が11月半ばに発売されるという記事を見つけた! 私が初めて出会ったのは第4作目『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』。 ストーリーを追いかけながら、時間をかけて進めていくゲームに夢中になった。 あまりの面白さに引き込まれ、気づくといつも2・3時間経っていた。 目が痛くなっても止められず、ゲーム機を取り上げられてしまったこともあった。 麻薬のような中毒性。 簡単に外せない手錠。

          蘇る『伝説』

          交換日記

          先日「日記つけてる?」と職場で聞かれた。 表紙の厚い重いノートが大量に見つかり、もし使うようなら…と声をかけてくれたのだ。 日記と言われて思い出したのが『交換日記』。 SNSが当たり前の今、『交換日記』が存在し続けているのか不明だが、私が小学生の頃は、女子の間では普通にあった。 複数人でまわす場合、途中で止まってしまい、現在誰が持っているのか不明…なんて日常茶飯事だった。 いつの間にかメンバーが増えていたり、逆に抜ける人もいたり…しばらくすると自然消滅のような形で終

          二百十日の風

          すっきりしない天気。 雨になりそうな気配を含んだ風。 一度干した洗濯物を取り込む。 雨が降りそうで降らない、いまいちはっきりしない天気に、何かが起こりそうな前触れを楽しむ休日の朝。 150種類以上あるという風の種類。 その日の朝の風は、雨の前兆とされる『いなさ』だったに違いない。 別名『辰巳の風』ともいうそうだ。 こんな風の吹く日には『風の又三郎』を思い出す。 2学期初日。 風の強い9月1日。 二百十日の風とともにやって来て、嵐の日に再び風に乗って去って行く不

          二百十日の風

          待ち合わせに彩りを

          『アジサイほど、雨の似合う花はない。』 嵐の日、激しい風に舞うアジサイを見ながら思った。 花言葉は『冷淡』『移り気』。(諸説あり) 先日、新聞に掲載されていた漫画に、アジサイにはかなりたくさんの種類があると書かれていた。 その漫画がコチラ↓ 興味が湧いたので、1つずつ調べてみた。 漫画の最後の1行通り、『他にもいろいろ』あるようだ。 あじさいといえば、映画『男はつらいよ』で、寅さんが鎌倉のあじさい寺(明月院)でデートの待ち合わせをするシーンがある。 この時のマド

          待ち合わせに彩りを

          一期一会の会話にて

          「私、山形からサ、出たことないです。」 数年前、山形県のとある温泉宿に泊まった際、夕食の給仕をしてくれた女性が言った。 『日本から出たことない』という人なら出会うことがあるが、山形から出たことがないという人には初めて出会った。 高校卒業後、そこの温泉宿でずっと働いていると仰っていた。 かつては生まれた土地で一生を終える人も大勢いた。 家業を手伝いながら、同じ土地の誰かと結ばれ、家庭を築き、やがてその土地で生涯を終える。 外の世界は夢見るだけ。 それが当たり前で、

          一期一会の会話にて

          美しき華麗なる演武

          華のある力強い演武。 はっきりとした気合。 凛とした空間。 今年も多くの有名なアスリートたちが次々と現役の舞台を去って行った。 その中で、私が一番忘れがたい選手が、空手界に大きな足跡を残した清水希容選手。 東京五輪で初めて採用された空手女子で披露した最難関と言われる形『チャタンヤラクーサンクー』。 ほんの2分半ほどの演武だったが、その裏には、十数年にわたって1日12時間以上重ね続けた稽古がある。 この時、初めて形をきちんと見た私は、切れのある華麗な演武に強く惹き

          美しき華麗なる演武

          都会のOASIS

          「ココに来ると、色々嫌なこととか発散できる。」 先日、ある習い事の教室で耳に挟んだこの言葉。 これを聞いて、以前読み、映画化もされた『深い河』(遠藤周作著)という小説を思い出した。 やって来る理由も、去って行く理由も人の数だけある。 そこは毎回毎回、縁あって集まった人たちの一期一会のOASIS。 ほんの一時、心の傷を癒し、浄化し、再生する場。 インドのガンジス川を舞台にした『深い河』と、習い事で通っている教室が一瞬重なって見えた。 下記は、大学時代の恋人を追って

          奇跡の『ラ・カンパネラ』

          『ラ・カンパネラ』とはイタリア語で『鐘』の意味だという。 10年近く前、ある大きなコンサートホールで、世界で最難曲と言われる『ラ・カンパネラ』のピアノ演奏をライブで聴いた。 複雑に織り成すこの曲を、一音一音丁寧に弾いていく。 ・若い頃の叶わなかった恋。 ・異国での極貧生活と差別。 ・ピアニストとしての生命を絶たれるほどの難聴との闘い。 ・ピアノの代わりに慰めだった絵を描く時間。 ・復帰後の大勢の観客からの絶え間ない拍手。 ・家族のように一緒に暮らしている猫たち 波乱万

          奇跡の『ラ・カンパネラ』

          人は人の心に従うもの

          かなり前に読んだのに、憶えている言葉があります。 これもそのうちの1つ。 人心を薬で操り、物事を自分の思い通りに進めようとする人物が、後宮内で引き起こした殺人事件。 裏で手を引く黒幕がハッとなったのが、カイル皇子の放ったこのセリフです。 かつて、カイル皇子の母親であるヒンティ皇妃が同じことを言っていたのを回想するこのシーン。 その皇妃のただ1人の忘れ形見のカイル皇子に、その思いが受け継がれていることを知り、ほんの一瞬、心を痛める場面が印象的です。 どんな人にも、き

          人は人の心に従うもの

          試される時

          人に裏切られた時は、きっと自分自身が試されている時ー 数年前、ミュージカルにもなった遠藤周作先生の名作『王妃 マリー・アントワネット』。 …………………………………………………… この作品に登場する娼婦マルグリットは、ある晩、石畳の上に倒れている。 まだ17才の若い娘だが、食べるために路に立っていて、酷い風邪をひいてしまったのだ。 近くの家に担ぎ込まれ、回復の後、司祭館に女中として雇われることになる。 そこで出会ったのが修道女のアニエス。 マルグリットと年も近く、

          試される時

          神さまの使わしめ

          問題を抱えた人のもとに現れる琥珀色の目をしたトラ猫。 まるで『大丈夫だよ』とでも言っているようなその目に惹かれていると、いつの間にか家に上がり込み、しばらくの間、一緒に暮らす。 これは唯川恵先生の著作『みちづれの猫』に収録されている短編小説『運河沿いの使わしめ』に登場する不思議なネコの物語。 ある時は、認知症の義母を抱え、介護に苦労する主婦のもとへ。 この家での名は『ニャン助』。 またある時は、3回の流産を経てやっとできた新たな生命にも関わらず、気持ちが不安定で、家庭

          神さまの使わしめ

          私のド真ん中

          雨に濡れた桜は、どこか憂いがあって好き。 ……… 以前勤めていた職場で、私はいつも受付に一番近い席にいた。 書類を提出に来る人がいると、何気なく目を向ける日々。 ある日のこと。 受付に人の気配がして、いつも通り顔を上げた瞬間、思わず一目惚れしてしまった。 正に私の理想像だったその人に、目を奪われる。 キチッとスーツを着て、眼鏡をかけ、髪型も決まっていたその人は、受付で必要事項の記入を終えると颯爽と去って行った。 すぐに私は受付の記入欄を覗き込み、その人の名前を

          私のド真ん中