【読み切り】カットに捧げた道
突然の事故だった。一瞬で右手の親指が使い物にならなくなった。
子供の頃から『切る』ことが好きだった。広告や新聞、DM等、手当たり次第にハサミで切る。無心で切っている間は、学校での嫌な事や、クラスメートとの確執も忘れていられた。
いつしか美容師を目指していた。『切る』が高じて『役に立つ事に生かしたい』と思うようになっていた。高校卒業後、美容短大に進み、二十歳の春、晴れて私は美容師になった。
就職した美容室の多岐に亘る業務の中で、やはり私はカットが一番好きだった。黙々と自分