夏の日のビスケット

今でも時々見かけるブルボンのチョコ&コーヒービスケット。

私が通っていた幼稚園では、おやつの時間には定番だった懐かしのお菓子。

ある夏の日。

その日は猛暑で、水泳の時間があった。

今でも水泳はあまり好きではないが、珍しく自分から『今日は泳ぎたい！』と思ったほど、その日は暑かった。

皮肉なことに、そんな日に限って病み上がりでやむなく見学。

当時、幼稚園では水疱瘡みずぼうそうが流行っていて、次々と交代で誰かが休んでいた。

私も数日欠席し、やっと復帰した日がたまたま猛暑だったのだ。

プールは屋上にあり、皆の歓声が教室にまで響き渡っていた。

その日の見学者は、男子２人と私を入れた３人。

見学者は、皆がプールから出て来る頃に合わせて、先生と一緒におやつの準備をすることになっていた。

その日は私がその役を担うことになり、先生と食器を並べたりしていた。

そのおやつでよく出されたのが、ブルボンのチョコ&コーヒービスケット。
毎回これはお皿に盛られていて、自宅でもよく口にしていた。

特に私が好きだったのがチョコ味。
サクッとした歯ごたえで、大きさも手頃。
そして柔らかく食べやすい。

夏以外の季節にも出されていたと思われるが、このビスケットを見ると、いつもあの猛暑の日のことが思い出される。

嫌なことがあった日にも、ビスケットはいつもと変わらぬ味で私を慰めてくれた。

色んな思い出が詰め込まれている懐かしいビスケット。

気のせいか、当時より小さくなったような…一方でビスケットをつまむ私の手は、当時よりずっと大きくなってしまったけれど、ビスケットの味だけは、昔のまま変わらない。

久しぶりに１口齧かじると、時空を超えて当時の自分と繋がった気がした。