ストリートに適したカメラについて思いを巡らす 前編

ずいぶん前のことになるけれど、知り合いの若いフォトグラファーが「単焦点の50ミリがあればいい写真が撮れたのに」というようなことをとある撮影の後呟いていた。「おいおい、手持ちの機材で何とかするのも仕事のうちだろう」と内心思ったものだ。しかし、普段街や公園などを歩いていて「あのカメラがあれば」と思いながら、撮れなかったシーンを思い返すことも結構ある。そこでどんなカメラが自分にとって理想なのか考えてみた。書き始めたら長くなったので、今日は今まで使ったカメラをまとめた。


ライカM6

ストリートを一眼レフで撮ったこともあるにはあるが、やはり何か一眼レフを持ち出す必要があってそのついでに撮った感が強い。そこでそれ以外を思い出す限り書いてみたい。
 まず思い出すのはライカM6だ。これはまだ日本で会社員をしていた頃に買い、こちらに来てから本格的にデジタル化する時に売ってしまった。50ミリをつけっぱなしにしていたが、その頃はまだもう少しワイドな画角が欲しいと思っていた。35ミリあたりも手元に欲しかったが、会社員の時のようにボーナスが入るわけでもなく、断念した。いいカメラで今でも「手元に残していれば」と思うこともあるが、使いこなした感はあまりない。2003年にイラク戦争反対のデモが盛り上がっていた時期に使ったのがいい思い出だ。

リコーGRデジタル2

それからデジタル一眼の波に飲まれ、経済的な余裕もなくなるが、リコーGRデジタルが出た時に心を動かされ、マーク2が出た時に買った。当初はポケットに入る手軽さが嬉しくて文字通りどこにでも持ち歩き、ストリートを撮りまくっていたように思う。しかしセンサーの小ささやAFに満足できず、またレンズ周りのリングを紛失することが多くて、今思えば満足度はあまり高くなかった。小型のボディはいいのだがレンズが繰り出すためにそこに弱点がある。最終的には壊れてしまった。

シグマDP2X

仕事が難しい時期に入った時、何かカンフル剤になるようなものが欲しくて、でもお金もそんなにかけられないし、ということで買ったのがシグマDP2Xだ。センサーも大きい上に、フォヴィオンセンサーという高感度には弱いものの高画質のものが使われており、画質は素晴らしかった。しかしAFはかなり弱く、実際に使う上では止まっているものにしか使えない感じ。ストリートで使うにはちょっと苦しい。レンズは完全にボディには収まらず、常に張り出した状態で、ポケットにおさまりが悪かった。今思えば、構造的な「無理」が少ない分、壊れにくかったように思う。当初、赤の出方がおかしいと思っていたが、ある時試しにシグマが提供しているソフトでRAW現像したところ、鮮やかな赤が出てびっくりしたものだ。それを呟いたら知人のフォトグラファーが「キャプチャーワンでやってみるから送ってくれ」と言ってきたが、結果はやはりシグマが一番だった。逆に言えば市販のソフトはあまりきちんと対応していないのかも知れない。結局、手放したが故障もなく、今でも「残しておいても良かったかも」と思えるカメラだった。

コンタックスT2

その後、フィルムで撮影したくて京セラのコンタックスT2を中古で手に入れる。すでにフィルムの値上がりはしていたものの、今ほどではなく、コダックのポートラや富士フィルムのpro400hを使ったりしていた。結局、値上がりがひどくなり、スペリアx-tra400やコダックのpro image100とかに移行したが、それも安価では入手困難になっていった。節約のために全て自家現像し、自分のフィルムスキャナーでデジタル化していた。
 カメラ自体はピントの中抜けはあるものの、確か置きピンもできるので非常に気に入ってどこにも持ち歩いていた。小さいものの38ミリのツァイスのレンズは色ノリも良く、壊れて修理もできないとなった時、もう一台購入したものだ。

リコーGR1v

フィルムでのストリートに入れ込んでいた時にもう一台買ったのが、リコーのGR1vだ。もちろん中古で買った。T2よりも薄くて軽く、手にもおさまりが良かった。28ミリという画角も当時は気に入っていた。しかしデジタルでも弱点だと思ったレンズの繰り出し部分がこのフィルムカメラでもやはり弱く、あまり長くは持たなかった。

キヤノンEOS300V

冒頭で一眼レフ以外と書いたのに反するが、ここまで書いてフィルム一眼レフをストリート用に買ったのを思い出した。パンデミックで精神的に苦しかった時に原点に帰る意味もあったのか、フィルムで撮りたくなった。カメラに大金を使うわけにもいかず、キヤノンEOS300Vを数千円程度の価格で入手し、デジタルでも使っていたEF50ミリF1.8STMをつけた。自分のこだわりは捨てて、もう一度フィルムをという思いだったのだ。ポケットサイズというわけにはいかなかったが、非常に軽いカメラで、また一眼であるためにある程度はAFも信用でき、悪くなかった。気に入って使っていたが、やはり適当な価格のフィルムが入手できなくなって使わなくなった。ただこの一台はまだ持っている。売れないだろうというのもあるけれど。

まとめ(前編)

ストリートに使ってきたカメラを書いてきたが、デジタルにしろフィルムにしろポケットに入るような小さいカメラはやはり撮りたい時に撮れるのでいい。そういう意味ではリコーのGRシリーズは秀逸だ。一方でやはり減価償却を考えると少しでも丈夫なボディや後から見てもいい画質は気になるところ。そういう意味ではシグマのDP2Xは、画質といい頑丈な感じといいもっと使ってみれば良かったと思う機種だ。ライカM6は残念ながら経済的に再度入手することは困難。コンタックスT2ですら難しくなった。いずれにしろフィルムカメラはフィルムの安定的入手が難しいし、古いカメラは修理業者に恵まれないと長くは使えない。
 これらのことを踏まえて次回は自分にとってストリートに適したカメラを考えてみたい。

 







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