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Googleが支援する次世代ショッピングサービス『Checkmate』

こんにちは!Z Venture Capital株式会社の内丸です。

みなさんはオンラインでショッピングする際に、必死にお得な情報をインターネット上で探し回ったことはないでしょうか?
私はインターネットで何かを買うときには可能な限り安くなるように、色々な比較サイトを見て時間を溶かしてしまうことがよくあります。
ポイ活にハマる人が続出しているように、セレブじゃない私のような一般人は安くモノを買いたいという気持ちが強いのです。

そのような消費者の気持ちに寄り添ったショッピングサービス「Checkmate」が2022年末にアメリカでリリースされ、徐々に人気を集めています。
Checkmateはメールボックスに眠っているクーポンコードも探って、消費者に最もお得なショッピング体験を提供するサービスです。

2022年9月にFuel Capitalがリードしたシードラウンドにて$5Mを調達し、
続く2023年5月にはGV(Google Ventures)がリードしたシリーズAラウンドで$15Mを更に調達します。
※シリーズAラウンドではParis HiltonやThe Chainsmokers等の著名人も出資しています。

不景気をものともせず矢継ぎ早に資金調達を達成した「Checkmate」とはどのような会社なのでしょうか?
今回の注目のスタートアップ「Checkmate」について、深掘りしていこうと思います!


安く買いたいという消費者心理

ECが登場してから長らく消費者はお得に買い物をできる方法を追求してきました。
2000年代には一気に増え始めたECサイトの情報を横比較するためのメタサーチサービス(e.g. トリバゴ)が台頭しました。

2010年代には、より高度な技術を用いたキャッシュバック系のサービスが登場します。「Honey」はネット上でクーポンを探し、「Paribus」にいたってはオンラインで購入したものの価格を追跡し価格が下がった場合には返金交渉まで行ってくれます。
これらのスタートアップは大手企業に買収されていきます。HoneyはPayPalが$4Bで、ParibusはCapital Oneにより買収されました。
楽天も2014年にEbatesを$1Bかけて買収し、以降大きく成長しています
楽天は2019年にシンガポールのキャッシュバックサービス ShopBackに出資するなど、更にこの領域を強化しようとしています。

2010年代後半から2020年代前半にかけては、Pinduoduo等の共同購買サービスによって安くショッピングを行うことが中国で流行します。
また、2022年には買い物のレシートを読み込むことで特典を得られるFetch Rewardsがビジョンファンドから$240Mの大型調達を行い、話題を呼んだのは記憶に新しいと思います。

とにかく色々なキャッシュバックの仕組みが登場し、もうこれ以上お得に買い物をする方法が見当たらないと感じてしまいます。


本ブログを読んでいる方であれば言うまでもないことですが、ブランド・小売業者のマーケティング活動は大きくマスからパーソナライズへとシフトしていっています。
それにより、多くの広告予算がパーソナライズされたクーポンに投下されています。

「しばらく来店がない」「カートをチェックアウトせずに放棄した」「メーリングリストに登録した」「誕生日」等々
様々なイベント・アクション毎に個人宛にクーポンコードが多数送信されています。
これらの多くは受信フォルダの中に埋もれる、もしくは迷惑メールに振り分けられるため、使用されずに放置されています。
実は、私たちは目の前に横たわる宝の山を見落としているのです。


創業ストーリー

Checkmateはオーストラリア出身のHarry Dixon(CEO)、Rory Garton-Smith(CTO)、およびElliot Rampono(CEO:Chief Engineering Officer !??)の3名によって2021年後半に設立されました。

創業者のHarry Dixon(CEO)、Rory Garton-Smith(CTO)、およびElliot Rampono(CEO)

COVID-19の時期に、創業者の3人がそれぞれオンラインショッピングの変化を目撃したことがきっかでCheckmateを創業することになります。

Dixon(CEO)はオンライン配送会社のEasyPostで働いており、ブランドや小売店がよりパーソナライズされた顧客接点を模索していることを目撃します。

また、Garton-Smith(CTO)はAppleで働いており、AppleがiOS 15の変更により、EC各社が広告による顧客獲得が困難になっていたことを目の当たりにしました。

同時期にGmailはマーケティングメールを別の「プロモーション」タブに移動させたことにより、ブランド・小売店は新規顧客にリーチすることが困難になっていました。

オンラインマーケティングの急速な変化を見て、創業者の3人は革新的なサービスを立ち上げるチャンスがあると感じたのです。
そして、その際に注目したのが、前述したメールボックスに放置されているクーポンコードです。

サービス概要

Checkmateは、オンライン上で公開されているクーポンのみならず、メールボックスで眠っているクーポンも呼び覚ますことで、お得なショッピングをワンストップで実現できるサービスを目指しています。

Checkmateのスマホアプリのイメージ


Checkmateが他のキャッシュバックサービスと一線を画すのは、まさに「メールボックスで使われていない個人向けのクーポン」探して、ワンストップで利用できる点です。

個人用クーポンの集約

メールボックス内のデータを勝手に覗かれることに嫌悪感を抱く方も多いかもしれませんが、Checkmateは「Ghost Box」と呼ばれるアイディアでこの問題を回避しています。

Checkmateは、バックエンドでユーザー毎に新しいEメールアドレスを作成し、その新規アドレスでブランド・小売業者のメーリングリストへと登録していきます。
その結果、ブランド・小売業者のクーポン情報は別管理している受信トレイ「Ghost Box」へと振り分けられるため、個人宛に大量のスパムメールを送信されることなく、消費者はお得な情報を受け取ることができるのです。

Ghost Boxのイメージ


「Ghost Box」を用いた個人宛のクーポンだけでなく、Checkmateユーザー限定の独自クーポンも配布しているようです。
購買意欲の高いユーザー層を囲っているので、ブランド側の広告宣伝のROIも高いと想像できます。ユーザー側としても独自のクーポンがあるとますますCheckmateを使いたくなる要因にもなります。

また、Honey等も同様のサービスを提供していますが、Checkmateはオンライン上で公開されているクーポンも検索・集約する機能も提供しています。

Checkmateが集約している公開クーポン

これらのクーポンを組み合わせることで、Checkmateは従来のキャッシュバックサービス以上にお得にショッピングできることを可能にしております。これを証明するためにCheckmateは競合とのパフォーマンス比較を行っています。
第三者機関が実施した検証ではないので鵜吞みにはできないですが、Checkmateが行った検証では

  • Checkmateの平均割引率:27.4%

  • Honey/ 楽天等の平均割引率:16.3%

Checkmateは競合の約2倍の割引率を示したとのことです。

Checkmateと競合の平均割引率の比較


Checkmateはクーポンを集めて配布するだけではありますん。
Checkmateは、商品閲覧⇒購入⇒配送に至るまで、全てのステップで消費者は支援するワンストップのショッピング体験を実現したいと考えています。
そのための最初のステップとして、Checkmateのクーポンを通して注文された全ての商品を一元管理する機能を提供しています。
この機能によって、複数のECサイトで行ったり来たりすることなく、Checkmate上で全てのショッピング体験を完結させることができます。

注文の管理・追跡画面


トラクション

Checkmateのトラクションはあまり開示されていないですが、その一部を紹介したいと思います。

Checkmateは、ミレニアル世代とZ世代をメインターゲットとしており、彼らが活動するTikTokや他SNSを通じてエンゲージメントを獲得しようとしています。
その結果、リリース数カ月後の2022年末にはTemu等の強力なアプリをおさえてApp Storeで1位を獲得します。

2022年末のApp Storeのランキング

2023年10月時点では

  • 累計ユーザー数:約50万人

  • DAU:約6万人(※2023年5月時点の数値)

  • SNSのフォロー:約100万人

  • 累計注文数:約300万件

の実績を出しており、バイラルを中心に成長してきたとのことです。

同時期にリリースされたTemuがスーパーボウルでCMを流し1,000万人超のユーザーを一気に獲得していったことと比較すると、さすがに見劣りしますが、バイラルで伸ばしてきたことを考えると悪くない初速だと思います。

ビジネスモデル

次にビジネスモデルも見ていきましょう。
消費者がクーポンを使って商品を購入すると一定の収益割合をCheckmateが受け取るアフィリエイトの仕組みになっています。この割合は業者や商品によって異なり、1%から7%の範囲で変動しているようです。
Ebatesのテイクレートが10%であることを考慮するとまだまだ低い水準です。

今は収益性の低いアフィリエイトを採用していますが、今後はより収益性が高いビジネスモデルに転換していくと思っています。
前述の通り、Checkmateは既にユーザー限定のクーポンを配信しており、将来的にはブランド・小売業者がマーケティングキャンペーンを実施する際のマーケティングプラットフォームのような立ち位置を目指しているのではないかと想像します。

おわりに

以上、Checkmateについて深堀りしてきました。

先人達(Honey等)に学んでサービスはどんどん進化しているもののビジネスモデルは昔ながらのアフィリエイトである点は個人的に気になるポイントでした。
2Cのサービスは特に流行り廃りが激しいので、Checkmateはどのように進化していくのか?生き残っていけるのか?は今後も注目していこうと思います。Googleは近年ショッピング領域を強化している動きもあるので、PayPayやCapital Oneのように将来的に買収することもあり得るかもしれません。

アメリカと日本の市場環境は異なる点も大きいですが、Checkmateのサービスが誕生するきっかけとなった
・オンラインでお得にショッピングしたい消費者心理
・ブランド・小売業者が消費者にリーチし難くなってきたという市場変化
という背景は日本も同様だと思いますので、日本からも新しい野心的なサービスが誕生することを期待しております!

事業についてディスカッションしたい方から起業のネタを探している方まで皆様とお話させて頂きたいので、是非ともご気軽にご連絡頂ける嬉しいです。

また、コマース領域のマニアックな事例研究を行っておりますので、Twitter/ noteのフォローをお願いします!


参考


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