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立川談志ってだれだ?

立川談志の魅力を書こうとするも何を書いていいものやらさっぱりワカラナイ…
恥ずかしながら師匠の落語を生の高座で体験したことはありません。テレビ、CD、DVD、本、YouTubeで知った立川談志の世界は、談志の『やかん』の如くあちこちに嘘のない万物が潜んでいます。
立川談志とは落語の全てを内包し、更に落語の世界に留まらない圧倒的なスケールの持ち主。師匠だけで芸の全てが網羅できてしまう程の絶対的な存在感。そんな「全部のせラーメン」のような選ばれし天才、奇才、立川雲黒斎家元勝手居士は、手塚治虫、黒澤明、マイルス・デイヴィス、ビートルズ同様避けて通れない頂なのであります。

ファンを公言していた論客西部邁さんは落語家立川談志を哲学者と評していました。ナルホド…

なにしろ談志師匠の慧眼、洞察力、本質を見抜く眼に憧れる。
浅はかな考え方で呑気にいれば、師匠の何気ない言葉の深さに気が付けず、ただ浅はかに笑って時が過ぎていく。立川談志という偉大な芸人を理解し、その底知れぬ魅力を感じ取るためには、師匠が放つ言葉の一つ一つと真剣に向き合うことが要求される。そして浅はかな自分ではその場で解けない事柄にぶつかっても、いつか分かる日のためにと頭の隅の刻んでおくことが肝心であると経験しました。

談志師匠の言葉に意味のないものなど一つもない。放つ言葉もみな明快である。師匠の頭の構造がどうなっているのかわ分からないけれど、師匠のように明快な言葉を持つためには悩み考え続けることしかないのではないのか?
考えることに終わりはない。どんなに考えても答えは出ないかもしれないけど、考える前と後では視界を覆う霧に僅かな明るさが感じられるようになる気がチョットする。
当たり前だと信じて疑わないことにこそ疑問を持とう。まずは立川談志を疑うべし!

談志師匠の大好きなジョークを一つだけご紹介します。

レストラン行くと必ず食前酒というかパッショングラス二つもらってお酒を注いでもらって飲んでる。こうね。毎日毎日そういう。「あの、つかぬことを伺ってよろしゅうございますか」とウェイターが、「どうぞ」「差しさわりがあるならば…」「いや、どうぞ言ってください何でしょう」「あのお客様いつもこうやって二つおとりになって、こう、飲んでらっしゃいますが、あれは何か曰くがあるんでございましょうか、よろしかったら、いえあの…」「いやいや別になんでもないですよ。いいこと聞いてくれました。実はねえ僕の最大の友、心を許し、未来を誓い、そして毎日毎夜を楽しんだ酒好きの友でねぇ、う~ん、いろいろ人生のことを愚痴などしゃべったのね。それが遠いところにいってしまったの、いやいや天国という意味ではなくて遠い国ね。もう会えないのではないかと、きっと今頃僕を思い、きっと同じように、う~ん、酒を飲んでいるのではないかとこう思ってね、友達がいるということしているんです僕。うん、彼と一緒に飲んでると、こういうことなんですよ」「はぁ~ いい話ですね、どうもありがとうございます」「いやぁてれますねぇ」なんて、ずっとそう飲んでた。で、ある日いくと「あっ、今日は一つで結構なんですよ」次の日も「いや、一つで結構」ずっと一つになっちゃった。これも気になりますからねぇ。「お客様たしかいつも二つ、この、ショットグラスへ、あの、ウイスキーをお注ぎになってお飲みになってたその訳というのは、お友達が遠い他国へ行ってしまって、その友のことを思い、思われつということで毎晩飲んでたというお話を伺いました」「おぉ、憶えててくれたんですか、ありがとう、そういうことなんです」「で、ずっとここんとこ一つなんですね…お友達にその、何か事故があったとか、極端なこと、お亡くなりになったとかって、そういうことなんでございますか?」「あ~ん、ちがうちがう、俺が禁酒しただけなんだよね」

※立川談志プレミアム・ベスト 落語CD集「金玉医者」「白井権八」より

『金玉医者/白井権八』(きんたまいしゃ/しらいごんぱち):2008/09/24(‎日本コロムビア)

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