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「多様性」という言葉の重み~『正欲』の感想記録~
2022年本屋大賞ノミネート作品の「正欲」やっと読みおえた。
面白くて1日で読み終えてしまった今、忘れないうちに今の感情を残しておこうと思う。
読み終えた今、気持ちよくはない。世間の常識や現代の価値観の変化に対して少しでも疑問を持っている人であれば、共感できる部分もあると思うし、とても考えさせられるものがある。だから読んでほしいと思う。
『多様性』が叫ばれる昨今。自認する性別や目に見えない障がい、そして自分の弱い部分をオープンにすることへの障壁は低くなっているとリアルに感じる。
喜ばしいことだし、講義でダイバーシティを学ぶ私は、多様性のある社会づくりに関わっていきたいとも思っていた。
※以下ネタバレあり
しかし朝井リョウさんは冒頭で「多様性という言葉が生んだものの一つに、おめでたさ、がある。」と述べている。
私自身、マイノリティな部分、生きづらさを感じることはたくさんある。左利き、AB型、摂食障害に悩んだこと、すぐネガティブになること。
言語化できないけど『普通』ではない部分は、他にも持っていると思う。
でもこの本を読んではっと思わされたことが、
‟マイノリティの中にもマジョリティとマイノリティがあること”
前述したマイノリティっていわゆるマイノリティの中でもマジョリティに当てはまるものだろう。
私たちがまったく理解できない、大多数の人が生きている間に遭遇しないような価値観を持った人が現れたとき、受け入れることは出来るのか?そんな人と積極的に関わりたいと思えるのか?
”多様性を尊重する”と言うことは簡単である。
でも多くの人は多様性とはどういう状態であるのか、深く考えたことはないのではないだろうか。
物語の最後は、結局マイノリティの中のマイノリティである登場人物たちは、自身の価値観(特殊な性癖)を理解されることを諦めてしまう。
ここで思い出されるのは
多様性とは想像できる範囲内での他者を含み、想像を絶する他者は受け付けない、線引きをするような人が良く使う言葉という部分。
こんなところまで思考を巡らせたことがなかったから圧倒されてしまった。
この本を読んだ今、何か答えがでたのか?と言われれば、分からないままである。
しかし私たちが普段何気なく発する言葉では表現できない部分ってたくさんあるんだろうな、と。
普通、常識、当たり前
こんな言葉で表されるものに対して、もっと疑うことをするべきなんだろうと思う。
『正欲』という題名からも読者に対して問いが投げかけられている。
正しい欲求とは何かなのか?
正しくない欲求なんてあるのだろうか。
大多数が受け入れられないもの=正しくない?
ここに法律が絡んでくると、問いに対する答えを出すのは難しすぎるというのが私の答えである。笑
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