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彼らのプロ野球チップス 〜嗚呼、職人の絶望日記〜

北海道に、野球友達の(と思っている)青年がいる。
彼はとある宿の息子で、3人兄弟の長男である。
その宿にはじめて行ったのは4年前で、当時彼は小学4年生だった。

ちなみに当時の僕は25歳。
旅人という名のプータロー(今も半分プータローみたいなものだが、、、)だった僕は宿に長期滞在していた。
夕方になって彼が学校から帰ってくると、毎日いっしょに日が暮れるまで野球をしていたのは青春の思い出である。

去年の秋、北海道で例の宿におとずれた時、彼は中学1年生になっていた。

部活などで上下関係をたたきこまれて、
「どうも、お久しぶりです、、、」
なんて敬語を自分にまで使われたらショックだなぁ、なんて思っていたが、以前と変わらずの対応で一安心。

その彼と二人で出かけた帰りに、僕はATMでお金をおろすためにコンビニに寄った。

僕がATMを操作している間に、彼はプロ野球チップスを二袋買っていた。

一袋を僕にくれるのかと思ったら、二袋とも自分用だったというのは置いておいて、その懐かしさや変わらなさにホッとした。

癒やされた。かわいい兄ちゃんだ。

というエピソードが好きで、ちょくちょく人に話す。

それで、話は飛ぶこと一昨日。
高校時代の同級生であるM君から夜中にLINEがきた。
「じゃ〜ん」という一言とともに送られてきた写真は、プロ野球チップスのカードホルダー当たり券だった。

中1の彼のそれはかわいいと思った。
だが今年で30歳になる同級生が、プロ野球チップスのカードが封入されているグレーのビニール袋を破っている姿は、どう想像しても苦しさしかない。

まだエロ雑誌の袋とじを破っているほうがかわいげがある。

ちなみに、僕はM君に北海道の彼のプロ野球チップスにまつわるエピソードを話したことは無い。

にもかかわらず、プロ野球チップスネタを放り込んでくるM君はさすがだと思った。

みなさまのご支援で伝統の技が未来に、いや、僕の生活に希望が生まれます。