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個人でソース類製造業の申請にトライしてみたらまさに無理ゲーだった件


↑↑↑↑↑前回のお話。まだ読んでいない方はこちらからどうぞ。
私がネットショップに活路を見いだした理由が書いてあります。


さてさて。

私は元々イタリアン出身でトマトソースをメインにしたお店作りをしていたこともあって、自慢のトマトソースをいつか製造販売したいと常々思っていました。

この販売に関して初めて保健所に相談に行ったのは1年以上前の事ですがその時は「現在営業している店舗では既に飲食店営業許可証を発行しているので他の製造許可証を取るためには、現在使っているキッチンとは別に完全に仕切られていて独立したキッチンがもう1つ必要です。もちろんダブルシンクや必要設備が全て揃った状態で。店内にもう1つキッチン作れますか?もしくは別住所で基準審査が通る設備を作るかです。」と言われてしまい当時は店内に別キッチンを作るスペースもないし、独立した場所に新設工事する予算もなかったので一旦保留にしてました。

それが今回2号店を売ったお金で倉庫を借り、そこで使っていた機材を移動させ、基準審査が通るように工事してセントラルキッチンを作ったので、意気揚々と保健所に乗り込んだわけです。

トマトソースの製造許可証を取るために。



甘かった。

全然甘かった。



まず何から話そう。

保健所で2時間みっちり説明を受けました。

そんな簡単に許可証は取れないよって。

個人レベルでは正直無理ゲーって。

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まずトマトソースの販売には「ソース類製造業」が必要です。
一見簡単に取れそうな響きですよね(笑)

ヾノ>ω<`)イヤイヤ

食品の製造って菌との戦いなんです。

ソースを作れればいいってもんじゃないんですよ。

菌の正しい知識を持ってないとダメで、まず菌によって違いますが大体の菌が繁殖しやすい温度帯は12℃~50℃と言われています。

一旦作ったソースは冷ましてから何かしらの「入れ物」に入れて販売しますよね。「入れ物」に関しては後述します。

冷ます時どうやって冷ますか。


作ったソースをそのまま放置→ゆっくりゆっくり温度が下がる→①

氷水にかまして冷やす→少し早く温度が下がる→②

ブラストチラー(急速冷却器)で冷やす→すぐ温度が下がる→③

ちなみにこれがブラストチラーです。

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90℃位の熱いままの食材を入れて一気に3℃位まで下げれる機械です。
もちろんそのまま冷凍も出来ます。

何が言いたいかって言うと、菌が繁殖しやすい温度帯(12℃~50℃)をいかに素早く通過させて冷ますかが安全の鍵になるという事です。

①は通過に時間がかかるのでもってのほかです。論外。

②はほとんどの飲食店がやってる方式ですが、これは店内飲食ならOK。ただネットショップで通販となると安全第一なのでこれでは甘いと言われてしまいます。
氷水冷却は外気温に影響されます。外気温40℃と外気温10℃では冷え方が変わる→商品の中心温度が条令通り冷えているという根拠が示せますか?という事です。

つまり確実に冷えてますという根拠が示せる③が正解となるわけです。
ブラストチラーは大体100~250万円位です。

まぁ200万なら出せるレベルですね。
これはクリア出来るとしましょう。

さて次です。

入れる容器。

缶詰にするのか瓶詰めにするのか。はたまたレトルトパックなのか真空パックなのか。

まず、缶詰や瓶詰めの場合は「缶詰又は瓶詰食品製造業」の許可証が「ソース類製造業」とは別に必要です。

そうなんです。許可証って1個取れればOKじゃないんです。
飲食関係の製造業許可証は全部で34種類あって販売品目によって複数の許可証が必要になることがあるんです。

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つまり「ソース類製造業」で必要な機材と「缶詰又は瓶詰食品製造業」で必要な機材が違えばそれら全てを揃えないと許可がおりないという事になります。

ちょっと話がズレますが、上記の業種の中にレトルトパックという言葉も真空パックという言葉もありません。
この二つの包装形態は食品衛生法の中ではあくまで「規格基準」であって
業種にはあたらないんです。
以下にレトルト食品の定義を張り付けておきます。

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上記の定義を捕捉します。
文中に「加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)」と書いてありますがこの言葉は非常に重要なので後でまた出てきます。
「透明な袋の製品もあります」→真空パックのことです。

では話を戻します。

先程「ソース類製造業」の取得にはブラストチラーが必要(条件によっては絶対じゃないけどね)と書きましたが、では「缶詰又は瓶詰食品製造業」の取得にはどんな機材が必要なのでしょう。


それを知るために先に菌の話に移ります。

ソースってグツグツ煮込んでるから菌が死滅してるように思っちゃうじゃないですか。

ヾノㅇㅁㅇ;;)イヤイヤ

100℃で煮込んでも死なない菌がいるって知ってました?

芽胞菌(がほうきん)という菌があります。
代表的なのはボツリヌス菌・セレウス菌・ウエルシュ菌
ボツリヌス菌は120℃で4分、セレウス菌は100℃で30分、ウエルシュ菌は100℃で4時間生き延びます!

!?工エエェ(゚〇゚ ;)ェエエ工!?

知らなかったですよね。

だから「加熱すれば安心」じゃないんです。

例えば、トマトソースをグツグツ煮込んで完成したソースをブラストチラーで冷まして、缶もしくは瓶に移して蓋をしました。ソースの煮込み時間は100℃で20分です。

芽胞菌(がほうきん)の混入率はゼロですか?

ボツリヌス菌は120℃で4分、セレウス菌は100℃で30分、ウエルシュ菌は100℃で4時間生き延びます。

ゼロとは言えないですよね?

だったらどうしなければいけないか。そう、殺菌です。

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「缶詰又は瓶詰食品製造業」の取得には【高温高圧殺菌装置】(レトルト殺菌装置)を使って商品の中心温度が120℃で4~20分の殺菌処理が義務付けられています。

つまりセントラルキッチンの中に殺菌装置を導入してくださいよと。
しかも殺菌装置は物凄く高温になって部屋が熱くなります。部屋が熱くなると他の食材に影響を及ぼしてしまうので独立した部屋「殺菌室」を作ってくださいよと。

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こんなのおけるスペース無いし。そもそも買えないし(๑ ー̀εー́ ๑)ムー

あっ!じゃあじゃあ!!

「缶詰又は瓶詰食品製造業」の取得は諦めて、真空パックならよくない?
製造業の業種にはなってないし、真空パックならお店で作れるし、殺菌もスチームコンベクションオーブンの120℃で4~20分やればいいんでしょ?
出来るじゃん!!

って思った方。

はいダメ~~~!!

真空パックもレトルト食品なので定義をもう一度よく見てみましょう。
「加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)を行った」と書いてありますね?
レトルト食品を作るためにはレトルト殺菌をしなければならないのですが、重要なのは【加熱】よりも【加圧】なんです。
なぜかと言いますと、芽胞菌は食品の内部に潜んでいます。
で、その芽胞菌を殺すためには120℃で4~20分加熱する必要があるんですが
この120℃というのは食品の中心温度が120℃になってないと芽胞菌が死なないってことですよね。
スチームコンベクションオーブンの設定温度が120℃ってことではないです。スチームコンベクションオーブンというのは蒸気を発生させて加熱するので真空パックが焼けて溶けることはないんですが、その分中心温度が低くなるってことは想像できますね。

参考になるかわかりませんが上記に保健所で教えていただいた資料を張っておきます。
何が書いてあるかというと、日本調理科学会の論文で21℃のハンバーグのタネを230℃のガスオーブンに入れたところ中心温度が84℃になるのに18分かかった・・・みたいなことです。

これからわかることが、蒸気を出さない230℃のガスオーブンですら中心温度84℃にするのに18分かかるのに、蒸気の出るスチームコンベクションオーブンで120℃で4~20分加熱したところで中心温度が120℃になるはずないやんってこと。つまり全然芽胞菌が死ぬレベルで殺菌できていないってことです。

じゃあ中心温度を120℃以上にするには?

お分かりですよね。

そう。【加圧】です!

だから《加圧加熱殺菌》なんです!!

圧力をかけることで中心温度を120℃以上に上げることができ芽胞菌を確実に殺せる。つまり加圧することで「芽胞菌を確実に殺せた証明ができる」ということです。この証明ができないと製造業の許可は下りないですからね。


さぁ、いいですか。ちょっとマトメます。

パッキングするということの目的は長期保存です。
なので缶詰だろうが瓶詰だろうがレトルトパックだろうが真空パックだろうが全て一緒です。
芽胞菌を殺すために特殊なレトルト殺菌装置を導入しなければなりません。
長期保存するのに中で菌が増殖してたら大変なことになるもんね。
賞味期限1年の商品を作ろうと思ったら、1年後もパックの中の菌数は限りなくゼロに近くないといけません。安全第一ですから。
個人レベルでその安全性を担保するなんて言うのは本当に難しいです。
そして万が一食中毒を出したら...全責任を自社で負うことになります。

製造業の許可が簡単に取れない理由分かってきましたよね。

ブラストチラーと殺菌装置と殺菌室を作るお金。
それだけ投資してどうやって回収するの?
商品を何個売れば回収できるの?


余談ですが、今書いているこの文章はあくまで愛知県春日井市の春日井保健所で聞いた話でここに書かれていることが全国共通ではありません。
食品衛生法は法律なので全国共通です。
ただし、製造業の許可証申請は各地方自治体の条例に則って審査されます。
この各地方自治体の条例(基準)がほんとバラバラで、愛知県はどちらかというと厳しめで特に春日井市は厳しいらしいです。小牧市の方が少しユルいらしい。
岐阜はもっとユルいとか、大きな声では言えませんが〇〇はもっとユルいとか...


【〇〇で製造業の許可を取った事業所の話】
真空パックしてスチームコンベクションオーブン120℃ 4~20分の加熱殺菌、氷水で冷やして冷蔵庫保存。賞味期限は短いけどチルドで全国配送する事業所。私の感覚では絶対許可おりないって思ってたのに
「製造業の許可おりた!」って聞いた時にはビックリ仰天((( ;゚Д゚))エッ!?
「そんな殺菌方法で芽胞菌死ぬわけないじゃん!なんで許可おりたん?」って春日井保健所の担当者に聞いたけど「〇〇の条例知らないので分かりませんけど...普通に考えて危ないです。春日井市では有り得ないけど条例が違うのでなんとも言いがたい。」って。
つまり各地方自治体によって安全基準が全然違うので危ない商品が出回っている可能性があることを消費者が知ってないと怖いって結論に至りました。
そんなん分かるわけないやん!!!
どこどこの県は安全で、どこどこの県は危ないなんてどうやって知るの?
「法で縛って全国統一しようよ!」って春日井保健所の職員さんに熱弁をふるったら「僕には無理です(`-´)ゞビシッ!」っと秒で断られました。

ユッケが食べられなくなった事件のように、全国どこかで食中毒(死亡事故)が起きて飲食店のテイクアウトやデリバリーやネット販売が出来なくならないように祈るしかありません。




さてさて、気を取り直してもう1項目。(∑(°∀° )えっまだ続くの?)

今度は目線を変えて冷凍食品のお話をしましょう。

先に言っておきますが、冷凍食品でもレトルト殺菌装置は必要です。
製造→冷却→梱包→殺菌→冷却→冷凍の順番ですからね。

冷凍食品を作るには「食品の冷凍又は冷蔵業」の許可が必要です。

で、私も最近まで知らなかったんですが冷凍食品と言うには4つの定義を満たしていないといけないんですって。

①冷凍前に下処理がされている
②急速冷凍している → ブラストチラー+ショックフリーザーが必要
③適正な包装がされている
④ー18℃以下で保管されている

①~③は分かるんですが問題は④。

私の考えでは普通の家庭用冷凍庫でもー20℃の設定なのでどんな冷凍庫でもいいじゃんって思ってたんですけど、保健所の方曰く。
「基本扉を開け閉めする時に冷気が逃げるじゃないですか。冷凍庫の設定温度はー20℃にしていてもそれはあくまで設定温度なだけであって、庫内の商品の中心温度はー18℃までしか落ちません。しかもそれが保てるのは扉を開け閉めしていない状態でです。では扉を開け閉めして作業していると庫内の商品の中心温度は何度ぐらいになると思いますか?大体ー15℃位まで上がります。こうなると冷凍食品の定義から外れますよね。つまり、扉を開け閉めして作業しても庫内の商品の中心温度がー18℃以下に保たれていないと冷凍食品と言えないので、設定温度をー30℃以上まで落とせる設備が必要になってくるんですよぉ。家庭用では無理( ̄▽ ̄)ニヤリッ」
って。

簡単に言うとー30℃以上に設定できるブラストチラー+ショックフリーザーと
ー30℃以上に設定できる冷凍ストッカーがさらに必要という事です。

もっと簡単に言うと「さらに金かかるよ!」って事┐(´д`)┌ヤレヤレ

ブラストチラー+ショックフリーザーと高性能冷凍ストッカーと殺菌装置と殺菌室を作るお金。

どんだけ金かかんねん。(←なぜ関西弁?)

もう無理です。

心折れました。

「ソース類製造業」も「缶詰又は瓶詰食品製造業」も「食品の冷凍又は冷蔵業」も取れませんでした。



そんな落ち込んでいる私に保健所の職員さんが( ´,_ゝ`)フッ...

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と言ったとか言わないとか...(言うわけねーだろΣ\(゚Д゚;))

そこからは滅茶苦茶優しい職員のお兄さんに色々アドバイスを頂きました。


まず初めにOEMの話から。OEMとは。

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直訳すると「自社の製品を製造する会社」となり、日本語では「相手先ブランド製造」などと訳されますが、わかりやすくいうと "製造メーカーが他社ブランドの製品を製造する" ということを指します。
つまりカフェパルランテというブランドのトマトソースを大きな製造工場に委託して作ってもらい、出来上がった商品を買うということです。
その買い取った商品にカフェパルランテのシールを貼って自社ブランドとして売り出すって訳です。

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要するに、ブラストチラーやショックフリーザーや高性能冷凍ストッカーやレトルト殺菌装置を元々持ってる大きな製造工場さんに生産(製造)を協力してもらうという事です。

これのメリットは、まず設備投資がかからないし機材を置くスペースもいらないって事ですね。それから生産のための人材確保が必要ないこと、生産に対する時間的拘束がないこと、需要に対し生産量を柔軟に変えることができ生産能力不足をカバーできること、安全性が担保できること。最悪食中毒が起きても責任を分散できることなど多数のメリットがあります。

ただしもちろんデメリットもあります。

自社生産より委託商品を買いとる分原価が上がってしまい薄利になること。
簡単に説明すると。

自社生産原価100円 → 市場販売価格500円 → 利益400円

委託商品買取価格380円 → 市場販売価格500円 → 利益120円

となるわけですね。

さらに最低発注ロットが大きいこと。
例えば最低発注ロットが100個なら全然いいですが、普通はもっと大量に発注しないと単価が下がりません。
先程の商品だと100個の発注では単価480円、1000個なら380円、10000個なら280円と言った具合に発注数が多ければ単価が下がるのが自然の摂理です。
じゃあ賞味期限が1年の商品を半年、もしくは最悪9ヶ月で売りきらなければならないとなった時。私の力で売れる数は100個なのか1000個なのか10000個なのか。
それによって利益にだいぶ差が出ることはもちろん、その在庫をどこでどう管理するのか。
単価を下げたいからといって10000個発注したら...
倉庫も自宅もパンパンで奥さんにDDTからの投げっぱなしジャーマンからのムーンライトスープレックで殺されますよ!

もちろん会社の規模にもよりますが、ウチみたいな極小零細企業で10000個の在庫を抱えるなんて滅茶苦茶B’zです。いや、リスキーです。

ってことで結局OEMやるの?やらないの?


在庫のリスクを抱えて薄利でも自社ブランドを世に広めたい。

いや、そもそも【お客様に喜んでもらいたい】からやるんだよ。

だって美味しいもので幸せになって欲しいから。

それが飲食業でしょ!

ってことで現在OEM絶賛勉強中です(๑•̀ㅂ•́)و✧



そして職員さんからの提案もう1つ。

「この設備内容なら製菓製造業の許可は取れますよ。製菓製造業を取ればお菓子類全般の販売に加え、パンの販売も可能になるのでネットショップに新しい商品を投入することが出来ます。高温で焼くお菓子やパンは菌が死滅しやすいのでソースや惣菜に比べて許可が取りやすいんです。」って。

職員さん。愛してる(´。>ω( ̄ω ̄;)ギュッ♡

ってことで、現在「製菓製造業」の申請と「OEM」の勉強をしながら
虎視眈々とアフターコロナに備えております(ΦωΦ)フッフッフッ

いやぁー毎日楽しすぎる(*´艸`*)うふ♡


カフェパルランテ  三井隆義
〒487-0026 愛知県春日井市不二町2-6-7 0568-53-2477
月曜定休 + 不定休あり(Facebookで告知します)
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西野亮廣エンタメ研究所 サロンメンバー
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